ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん77…日本橋・高島屋 『レストランローズ』の、お子様ランチにカツカレー

2007年01月14日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 冬休みの最終日、娘とともに出かけた日本橋七福神めぐりも、人形町の甘酒横丁で休憩してから後半戦に出発。ビルの谷間にある毘沙門天の末廣神社、ちょっとした境内を持つ寿老人の笠間稲荷神社と巡り、椙森神社で記念品をもらう証明のスタンプを押してもらう。ここは恵比須様、つまり商売繁盛の繁盛で、境内には富くじ(江戸期の宝くじ)発行の記念碑も見かけた。七福神めぐりの主催は三越だから、商売繁盛の社がチェックポイントになっているのだろうか。最後の寶田恵比須神社を参拝して無事終了、起点の日本橋三越本店の屋上で記念の干支手ぬぐいをもらって、ようやく遅めのお昼ご飯である。

 それにしてもこの日本橋三越、かなり重厚な建物に圧倒される。七福神めぐりのパンフレットによると、「明治41年創業の日本で最初の百貨店。洋風ルネッサンス3階建てで、以後日本建築界の最高技術による増改築が行われ、昭和10年に国会議事堂と丸ビルに並ぶ大建築として完成」。見た感じはまるでヨーロッパの王国の宮殿のよう、というと少々オーバーだろうか。うちの姫様もご空腹の様子で、宮殿の食事処で昼食とするのも悪くないか。オーダーはお子様ランチとお決まりだろうから、とりあえずレストラン街へと足を向けてみることにしよう。

 百貨店やデパートで食事といえば、懐かしの「大食堂」が思い浮かぶ。店頭の大きなショーケースには和洋中華に喫茶、もちろんお子様ランチと、多種多彩なサンプルがずらりと並び、入口で食券を買って、足がパイプのちょっとチープなテーブルセットへと通されて…。 宮殿で食事を、といいながらだんだん話が庶民的になってきたか? とはいえ値段は手ごろ、ない料理はない、買い物客御用達のこの食堂、子供の頃に親のお買い物に付き合ったあとのお楽しみだったことを思い出す。フロアガイドを見てみると、7階に「特別食堂日本橋」というのを発見。これだ、と案内を読み進めたら、「素材や味にこだわり、食通の方をうならせる料理の数々」の文字にビックリ。品書きも会席膳に江戸前握り、さらには京都で名高い料亭・瓢亭の永田町店の京料理など、これは本当に宮殿の大食堂といった感じである。

 普通のレストランが集まる新館の高層階へと足を伸ばしてみたら、こちらも和食の「なだ万」、中華の「筑紫楼」など、軒を連ねる食事処はいずれも名だたる高級店ばかり。さすが日本橋、買い物客の客層も違うんだなあと妙に感心してしまう。別のフロアには麻布にある洋食の「グリル満天星」も出店していて、やや値段が手ごろか、と向かおうとすると、こちらは1時間待ちの長蛇の列が出来ている。初売り目当てに押し寄せた買い物客で、この日は特に混雑しているらしく、結局「宮殿」でのお食事は断念することに。三越の周辺でどこか適当なところへ入ろうと歩いてみたところ、まだ正月休みの店がほとんどで、喫茶店とか立ち食いそば屋ぐらいしか店を開いていないよう。「お昼は何でもいいよ」と、娘は気遣ってくれるけれど、開いてるからここにしよう、とやっている数少ない店に引っ張られていくと、焼き鳥の老舗「伊勢廣」とか、フレンチの「精養軒」とか、ウナギの「宮川」とか、任せたらかえって高くつきそうな危険がある。

 そこで改めて初志貫徹することに決め、百貨店の大食堂を目指すことにした。といっても三越本店に戻るのではなく、同じく日本橋にある百貨店・島屋へと足を伸ばしてみることに。入口受付近くでフロアガイドをもらい、レストラン街の欄を眺めるとこちらもすごい。ウナギの「野田岩」、銀座にある洋食の「資生堂パーラー」と天ぷらの「天一」、さらには世界的に知られる寿司の名店「すきやばし次郎」に、何と帝国ホテルのフレンチレストランまである。そんな中、ガイドの右下の一番目立たない欄にあった! 「ファミリーレストランローズ」の文字を見つけてまずはひと安心、娘にも「お子様ランチがあるよ」と伝えると、さっきまで空腹で歩き回り元気がなかったのが、とたんに復活した様子である。

 デパートの大食堂といえば、かつては催事場と同じ階など、上層階と相場が決まっていた。日本橋島屋では、先に羅列した名店はそこにある一方、「ローズ」は地下2階の奥まったところに位置していた。店頭ではざっと20人ほどがイスに座って順番待ちしていて、隣接する「北極星」が空いているのでこっちにしよう、と娘がねだるが、オムライスで数千円するのを見て迷わず「ローズ」の行列へとつく。整理のおじさんの手際がいいので、あっという間に列は進み、すぐに例の巨大なサンプルケースの前まで進んだ。娘はお決まりのお子様ランチ、そういえば自分は何を食べるか決めていないことに気づく。ここは子供の頃に戻って、ご飯を型にはめて出すチキンライスとか、油ギトギトケチャップたっぷりのナポリタンとかもいいな、と迷っているうちにどうぞ、と自分たちの順番がやってきてしまった。

 店内はさほど込んでおらず、客層も店名の通り家族連れが多い。ふたりがけのテーブル席に付いて、娘はお子様ランチ、自分はちょっと考えた上、カツカレーを頼むことにした。このところ正月料理が続いていたので、こういうストレートな洋食が無性に食べたくなる。そして散策お疲れ様、ということでビールも1本。「銘柄はいかがしましょうか」と聞かれるところが、お好み食堂ながらさすが、日本橋か。娘にビールを注いでもらい、お子様ランチのジュースとお疲れ様の乾杯だ。カレーは見た感じ、ルーに具が溶けてサラサラで、洋食屋風というか、カレースタンド風というか、見るからにシンプルである。ルーは甘め、カツは薄めに仕上げてあり、衣にルーが染みてホクホク、肉は柔らかで旨味がじっとり。メニューによると「日本のやまと豚のカツカレー」とあり、活性水で飼育しているため肉質が柔らかくきめ細か、脂肪に甘みがあるとのことで、これがなかなかビールと合う。あまりペースが上がるとおかわり、となってしまう危険があるので、娘が食べるペースと合わせ付け合せの福神漬けやラッキョウもつまみながら、ゆるゆるとビールを飲む。

 デパートのお子様ランチといえば、エビフライにハンバーグ、そしてこれまた型ではめたご飯に小旗がトレードマークだろう。娘のはミッフィーの絵皿にエビフライ、ハンバーグ、ナポリタンにポテトサラダと、おかずはベーシックかつトラディショナルな感じである。お子様ランチのおかずは、ビールの肴にもってこいのものが多く、ハンバーグを切り分けてあげる代わりにひとつもらうと、手作り風でなかなかうまい。残念なのはライスはチキンライスでなく、かわりにバターロールがのっていて、旗がないこと。デザートが豪華で、市販のプリンやゼリーが別添えなのではなく、何と杏仁豆腐にガトーショコラと、これもさすが日本橋か。

 旅行から戻った翌日に、寒い中延々歩き回ったおかげで、お腹いっぱいになりビールもほど良く回ると、ガクンと眠くなってきた。帰りの電車の中では、娘と並んで熟睡することにして、地下鉄の日本橋駅へと歩く。年末年始の休みも今日でおしまい、翌日にはまた、ここ日本橋駅のすぐ近くまで戻ってきて、仕事仕事の日々。家内安全・商売繁盛を祈りながら歩いた七福神めぐりの、ご利益ある1年になることを願い、がんばるとしよう。(2007年1月4日食記)


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