以前、盛岡で冷麺を味わった際、店の人に「盛岡の冷麺は本場から変化した独自のスタイル」と聞いたことがある。透明な太麺にあっさり牛骨スープ、キムチをのせていただくという、日本人が一般的に持つ冷麺の印象は、この盛岡冷麺によるものだ。
もちろん、盛岡冷麺も原型は朝鮮から伝播したもので、渡来した人が伝えた咸興(ハムフン)の冷麺が変化した「平壌冷麺」が起源である。これは牛肉と鶏肉からとり水キムチを加えたスープ、そば粉入りの茶色っぽい縮れ麺で、今もソウルなど韓国の食堂では普通に供されている、まさに本場のスタイル。味も見た目も現在の盛岡冷麺とは異なるけれど、盛岡冷麺はここから地元の常食へと定着する過程で、当地に合った形に変化していったのだろう。
冷麺といえばやや前は、焼肉屋で肉を食べた締めのサイドオーダー的に捉えられていたが、韓流ブームで韓国の食文化が日本に広まったおかげで、いち韓国料理のポジションを築いている。ひとかどの韓国料理屋では、この本場流そば粉冷麺も見かけるようになり、今日訪れたみなとみらい・コレットマーレの韓国料理店「土古里」でも、冷麺をオーダーする際にはそば粉とサツマイモの細麺か、盛岡流の小麦粉と片栗粉の太麺を選べる仕組みになっていた。
品書きから強烈な辛さが売りの「辛冷麺」を注文、麺は腰のある方が好きなので盛岡冷麺の太麺を選んだ。添えてある辛味噌をのせ、ざっと混ぜて麺をズッとすすると、酸味の効いたスープが太麺にしっかりからみ、後から味噌ダレの激烈な辛みがビリリ。麺の弾力はかなりしっかりしていて、グングンかみしめてやっとかみきれるほど。かみしめると出てくる小麦粉麺らしい荒っぽい穀物甘さが、うどんやラーメンと違った北国の麺らしいワイルドさか。
盛岡冷麺の麺は、うどんやそばのように生地をのばして切って作るのではなく、パスタのように生地を穴からギュッと押し出して作る。押されることで生地が詰み、強烈な腰が生まれるという。具がキュウリとワカメ、キムチだけのシンプルな冷麺なため、麺の味というか歯ごたえをよりいっそう楽しめる。
ちなみにこの店、山形牛の焼肉も売りのひとつで、麺メニューにも山形名物の氷がゴロゴロ入った冷やしラーメンや、地鶏がのった肉そばがちゃんと載っていた。この山形独自のローカル冷やし麺は、よそでは類例を見ないスタイルで、本場冷麺と盛岡冷麺をともに扱っている以上に貴重なメニューかも。
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