餃子といえば、中華というより宇都宮の味、とばかり、今や全国に知られるようになった宇都宮の餃子。最近はスーパーで売っていたり、有名店が東京に出店したりと、有名になった分現地でなくても食べられる機会は多くなったようだ。しかしひとたび宇都宮を訪れてみると、そこは1世帯あたりの餃子の消費量が日本一という餃子の街。歩いているとあちこちに餃子屋を見かけるほど軒数は多く、定番メニューのみの店もあれば豊富な種類を揃える店、また大きさや変わりメニューで注目を呼ぶ店など、店や餃子の種類も多種多彩だ。冷凍餃子を家庭で手軽に頂くのもいいが、本場の「餃子熱」に触れるなら、やはり現地で食べるのが一番である。
東照宮など日光の二社一寺を巡る仕事で日光を訪れた際、順調に進み予定より早く取材が終わってしまった。そこで東武電車の特急で浅草へまっすぐ帰るところを、JRを利用してちょっと遠回り。途中の宇都宮で餃子食べ歩きの途中下車を楽しむことにした。駅に到着したらまず、市内にある餃子に関連する店や業者80軒あまりが加盟する「宇都宮餃子会」が発行する餃子マップを入手。これを手に店選びである。見たところJR宇都宮駅から東武宇都宮駅にかけての繁華街に餃子店が多く、宇都宮の駅ビル「パセオ」内にも数軒が出店しているよう。東照宮から二荒山神社、輪王寺と日光を1日歩き回って少々疲れ気味の身にはありがたく、改札を出たらさっそく1階の食品街のエキサイティングモールへと向かった。
フロアの案内図に従い、食品店やファーストフード、コーヒーショップが並ぶ中を奥へ進んで行くと、2軒の餃子店が隣り合って並んでいるのが見えてきた。うち1軒は結構繁盛しており、食事時ではないのに店頭には数人の行列ができている。2軒両方を食べ比べてみることにして、先にこの「みんみん」のに行列へと加わった。行列は食券の券売機ほか、テイクアウトの方にも延びており、餃子だから長居する客は少ないからか、比較的すぐに順番は回ってきたのでひと安心。
みんみんの創業は昭和33年と古く、北京の家庭料理がルーツとされる正統派の餃子店である。メニューは焼き餃子、水餃子、揚げ餃子の3品のみ。シンプルながら飽きのこない味が評価され、現在ではもっとも新しいこのパセオ店ほか、宇都宮を中心に県内に10軒を構える市街屈指の人気店だ。一番の人気はやはり焼き餃子で、ひと皿購入してカウンター中心の店内に落ち着いて待つことしばし。運ばれてきた皿には、こんがり焼き色がついた小ぶりの餃子が6個並んでいる。これで220円、普段中華料理屋で頼む餃子に比べてかなり安いのは、日常食として浸透しているからか、競争相手が多い結果だろうか。
醤油とラー油をつけて、さっそくひとつ頂いてみる。見た目は薄い膜でつながったいわゆる「羽付き餃子」で、皮や羽が厚めでサクサク、パリッとクッキーのような食感。その後にたっぷり中に残った肉汁が、かじるとジュッとしみでてくるのが何ともうれしい。肉を細かく挽いてあるため味が濃厚、しかも白菜との相性が絶妙だから、これはとまらなくなる味だ。しっかりしたつくりの皮と、肉の味をシンプルに生かした餡の味を素直に楽しめる、スタンダードな餃子といった感じである。ひと皿ぐらいあっという間で、これで足りるのかなと見回すと、多くの人がご飯つきにしている。中には2皿頼む人や、何とご飯に焼き餃子、さらに水餃子を組み合わせる強者も。これが地元流らしく真似したくなるところだが、隣の店が控えているのでここはぐっと我慢である。
今や宇都宮の「市民食」といえる餃子だが、ルーツをたどるとやはり中国にたどり着く。一般的には、宇都宮にあった旧陸軍第14師団が第2次大戦で中国東北部へ出征した際に、当地から持ち帰った食文化という説が有力だ。宇都宮で広まったのは戦後になってからで、皮の材料となる小麦、餡に使う豚肉やニラ、白菜も特産と、素材となる食材に恵まれていたことが大きな要因といわれる。さらに宇都宮は内陸に位置し夏は猛暑、冬は厳寒と寒暖の差が激しいため、体力を維持するスタミナ食としてしっかり定着していった。中華料理屋やラーメン屋、食堂など餃子「も」出す店だけでなく、みんみんのように餃子専門の店が30軒ほどと多いのが宇都宮の特徴で、メニューは餃子一本のみ、店によってはライスやビールすらないところもあるとか。そんな庶民の味ゆえに値段が手頃なのも大きな魅力で、どこもひと皿300~400円程度と、食べ歩きに手頃なのもありがたい。
名残惜しくみんみんを後にしたら、すぐに隣の「青源みそしる亭」へとはしご酒ならぬ「はしご餃子」。人気店に隣接するため、比べると客はやや少ないようで、テーブル席に落ち着いてゆっくりとメニューを眺める。すると表面に青ネギがびっしりのった、インパクト満点の餃子が。しかも「土地の味噌が隠し味・青源味噌」と書かれているように、メインの味付けは味噌である。この店、江戸期創業の老舗味噌店「青源味噌」がやっている餃子屋で、自家製味噌を使った味噌ダレが味の決め手の「ネギ味噌焼き餃子」が看板の一品だ。シンプルなみんみんの餃子とは対照に、手が込んだ独創的な餃子が興味深くこれを注文、6個で300円也。
しばらくして運ばれてくると、味噌の甘ったるい香りがふわりと漂ってきた。餃子の上を覆い隠すように万能ネギがどっさり、さらに味噌ダレと荒挽きで真っ赤なレッドペッパーがたっぷりで、見るからにかなり刺激的な餃子である。店の人によると何もかけずそのまま食べるとのことで、ひと口かじると味噌タレの甘い香りにニンニクがツンとした風味、さらにビシッとした辛味がじわり。これが束になってまとめてくるから、舌や胃がガンガン燃えるよう。ちょっと変化球だが爽やかでインパクトのある味わいに、これはご飯かビールが欲しくなってしまう。
少々ひりひりする舌を水で冷やしながら、何とか平らげると刺激のおかげで頭はスッキリ、辛さのせいで体が温まってきたようだ。マップを見ると、宇都宮駅の駅前周辺にも結構な軒数の餃子屋があり、2皿食べてスタミナがついたところでもう1、2軒は行けそう。駅の東口には「餃子のビーナス像」なるモニュメントが建っているそうなので、餃子の街に敬意を表してちょっとご挨拶していこうか。(2003年4月6日食記)
東照宮など日光の二社一寺を巡る仕事で日光を訪れた際、順調に進み予定より早く取材が終わってしまった。そこで東武電車の特急で浅草へまっすぐ帰るところを、JRを利用してちょっと遠回り。途中の宇都宮で餃子食べ歩きの途中下車を楽しむことにした。駅に到着したらまず、市内にある餃子に関連する店や業者80軒あまりが加盟する「宇都宮餃子会」が発行する餃子マップを入手。これを手に店選びである。見たところJR宇都宮駅から東武宇都宮駅にかけての繁華街に餃子店が多く、宇都宮の駅ビル「パセオ」内にも数軒が出店しているよう。東照宮から二荒山神社、輪王寺と日光を1日歩き回って少々疲れ気味の身にはありがたく、改札を出たらさっそく1階の食品街のエキサイティングモールへと向かった。
フロアの案内図に従い、食品店やファーストフード、コーヒーショップが並ぶ中を奥へ進んで行くと、2軒の餃子店が隣り合って並んでいるのが見えてきた。うち1軒は結構繁盛しており、食事時ではないのに店頭には数人の行列ができている。2軒両方を食べ比べてみることにして、先にこの「みんみん」のに行列へと加わった。行列は食券の券売機ほか、テイクアウトの方にも延びており、餃子だから長居する客は少ないからか、比較的すぐに順番は回ってきたのでひと安心。
みんみんの創業は昭和33年と古く、北京の家庭料理がルーツとされる正統派の餃子店である。メニューは焼き餃子、水餃子、揚げ餃子の3品のみ。シンプルながら飽きのこない味が評価され、現在ではもっとも新しいこのパセオ店ほか、宇都宮を中心に県内に10軒を構える市街屈指の人気店だ。一番の人気はやはり焼き餃子で、ひと皿購入してカウンター中心の店内に落ち着いて待つことしばし。運ばれてきた皿には、こんがり焼き色がついた小ぶりの餃子が6個並んでいる。これで220円、普段中華料理屋で頼む餃子に比べてかなり安いのは、日常食として浸透しているからか、競争相手が多い結果だろうか。
醤油とラー油をつけて、さっそくひとつ頂いてみる。見た目は薄い膜でつながったいわゆる「羽付き餃子」で、皮や羽が厚めでサクサク、パリッとクッキーのような食感。その後にたっぷり中に残った肉汁が、かじるとジュッとしみでてくるのが何ともうれしい。肉を細かく挽いてあるため味が濃厚、しかも白菜との相性が絶妙だから、これはとまらなくなる味だ。しっかりしたつくりの皮と、肉の味をシンプルに生かした餡の味を素直に楽しめる、スタンダードな餃子といった感じである。ひと皿ぐらいあっという間で、これで足りるのかなと見回すと、多くの人がご飯つきにしている。中には2皿頼む人や、何とご飯に焼き餃子、さらに水餃子を組み合わせる強者も。これが地元流らしく真似したくなるところだが、隣の店が控えているのでここはぐっと我慢である。
今や宇都宮の「市民食」といえる餃子だが、ルーツをたどるとやはり中国にたどり着く。一般的には、宇都宮にあった旧陸軍第14師団が第2次大戦で中国東北部へ出征した際に、当地から持ち帰った食文化という説が有力だ。宇都宮で広まったのは戦後になってからで、皮の材料となる小麦、餡に使う豚肉やニラ、白菜も特産と、素材となる食材に恵まれていたことが大きな要因といわれる。さらに宇都宮は内陸に位置し夏は猛暑、冬は厳寒と寒暖の差が激しいため、体力を維持するスタミナ食としてしっかり定着していった。中華料理屋やラーメン屋、食堂など餃子「も」出す店だけでなく、みんみんのように餃子専門の店が30軒ほどと多いのが宇都宮の特徴で、メニューは餃子一本のみ、店によってはライスやビールすらないところもあるとか。そんな庶民の味ゆえに値段が手頃なのも大きな魅力で、どこもひと皿300~400円程度と、食べ歩きに手頃なのもありがたい。
名残惜しくみんみんを後にしたら、すぐに隣の「青源みそしる亭」へとはしご酒ならぬ「はしご餃子」。人気店に隣接するため、比べると客はやや少ないようで、テーブル席に落ち着いてゆっくりとメニューを眺める。すると表面に青ネギがびっしりのった、インパクト満点の餃子が。しかも「土地の味噌が隠し味・青源味噌」と書かれているように、メインの味付けは味噌である。この店、江戸期創業の老舗味噌店「青源味噌」がやっている餃子屋で、自家製味噌を使った味噌ダレが味の決め手の「ネギ味噌焼き餃子」が看板の一品だ。シンプルなみんみんの餃子とは対照に、手が込んだ独創的な餃子が興味深くこれを注文、6個で300円也。
しばらくして運ばれてくると、味噌の甘ったるい香りがふわりと漂ってきた。餃子の上を覆い隠すように万能ネギがどっさり、さらに味噌ダレと荒挽きで真っ赤なレッドペッパーがたっぷりで、見るからにかなり刺激的な餃子である。店の人によると何もかけずそのまま食べるとのことで、ひと口かじると味噌タレの甘い香りにニンニクがツンとした風味、さらにビシッとした辛味がじわり。これが束になってまとめてくるから、舌や胃がガンガン燃えるよう。ちょっと変化球だが爽やかでインパクトのある味わいに、これはご飯かビールが欲しくなってしまう。
少々ひりひりする舌を水で冷やしながら、何とか平らげると刺激のおかげで頭はスッキリ、辛さのせいで体が温まってきたようだ。マップを見ると、宇都宮駅の駅前周辺にも結構な軒数の餃子屋があり、2皿食べてスタミナがついたところでもう1、2軒は行けそう。駅の東口には「餃子のビーナス像」なるモニュメントが建っているそうなので、餃子の街に敬意を表してちょっとご挨拶していこうか。(2003年4月6日食記)
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