ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん…埼玉・杉戸町 『割烹 和泉屋』の、たまふわと鰻のかき揚げ丼

2017年04月17日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
埼玉県の杉戸町、と聞いてどこだかピンとこなくても、東武動物公園駅が最寄りといえば、およその位置が分かるのではなかろうか。テーマパークの玄関口として整備された西口と対象に、東口を出ると狭い駅前広場から、こぢんまりとした繁華街が続いている。かつて町名が駅名だった頃が似合うような、旧市街たるひなびたたたずまいである。

繁華街を抜け大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)を渡り、やや歩いたところの「本陣跡地前」信号で県道と交差する。これがかつての日光街道で、界隈には46軒の旅籠からなる杉戸宿が形成されていた。江戸から数えて5番目の宿場にあたり、歩いてみると門構えが残る本陣長瀬家跡をはじめ、人馬の引継や助郷の手配所だった問屋場の跡、触書きを掲げた高札場跡などの史跡が点在している。出桁造りの町屋や昭和期の建物を用いた店舗も見られ、旧街道風情とレトロな商店街が入り混じった、独特の時代背景の街並みが広がっている。

杉戸宿は、日光街道の起点である千住宿に比較的近かったのに加え、大落古利根川の水運の要衝でもあったことから、往来する旅人や物流の拠点として賑わったという。米穀問屋の小島貞右衛門邸は、袖蔵付きの堂々たる母屋の建物が目をひく。説明書きによれば、米の運搬には大落古利根川を利用していたとあり、枡形の奥に斜めに鎮座する様は、まるで宿場町を見通しているかのようだ。ここから復元された高札場まで歩くと宿場の外れとなり、小一時間で散策は終了。川と並行した宿場だけに、散策の道中でいくつか川魚料理の料亭を見かけた。川に面して店を構えるところもあり、早めのお昼は水辺のランチが、当地らしくて良さそうだ。

そこで高札場から河岸に出たところ、創業天保4年の老舗「割烹和泉屋」の暖簾を、開店と同時にくぐることに。窓の向こうには川面越しに、対岸の土手を埋める菜の花が臨め、実に春らしい眺めである。品書きを開くと、コイの洗いやナマズの天ぷらなどに並び、ウナギの料理が豊富に揃っている。壁にはお日さまに向かってウナギが昇る、コイの滝登りならぬウナギ昇りの掛け軸が掛かり、ウナギ推しを助長しているようだ。誘われるように品書きを目で追ったところ、ピッタリな逸品を発見。「杉戸宿開宿400年記念商品」と称した、限定メニューのたまふわと鰻のかき揚げ丼だ。ウナギをかき揚げにするとは聞いたことがなく、宿場の散歩つながりもあり、これに決定である。

運ばれてきた盆には、丸い櫃に盛ったかき揚げ丼に、小さな土鍋が添えられていた。ふたを開けるとオムレツのような茶碗蒸しのような、ふっくらした卵料理が現れた。レンゲでグシッとすくい、汁とともに口に運ぶと、舌にのった途端に泡のごとくサッと消失。ほんのりとしたカツオと昆布だしが、泡の甘さを引き出している。雲をつかむような食感のこの食べ物、正しくは「たまごふわふわ」と称し、江戸期に供された本陣料理を再現したものという。当時、卵は栄養価が高く貴重なため、殿様しか食せない高級料理だったとも。滋養がある上にスッと入るから、長旅の疲れで食欲がないときにもってこいかも知れない。

たまふわの優しい食感で食欲がわき、ボリュームありげなウナギのかき揚げにいざ、箸をのばす。白焼きをうざくやひつまぶしより大きめに刻んであり、玉ねぎに水菜とともにタネにして揚げてある。脂ののった白焼きに玉ネギがしゃっきり甘く被さり、衣がさっくりのあとウナギがほっこりとくる、ウナギ料理としては未知なる新食感だ。甘めのタレと厚めの衣がウナギの土の香りを封じ、蒲焼にない白身のうまさを引き出しているよう。野菜もたっぷりとれるのも、バランスが取れてありがたい。

油で舌が重くなったらたまふわをすすり、さっぱりしたらかき揚げに再突撃。ウナギと卵のコラボのおかげで、午後もまだまだ歩けるパワーがついたような。

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