ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん…北海道・大沼公園 『源五郎』の、大沼の湖魚料理

2015年06月26日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
北海道新幹線の延伸により、函館エリアは今後、観光面で注目を浴びることが必至である。最寄りの新函館北斗駅からわずか十数分の大沼公園も、手軽に北海道の自然に触れることができるだけに、人気が高まりそうだ。駅を降りてすぐのところから、島巡りコースの遊歩道が始まり、行き交うボート越しに点在する浮島群が望める眺めは変化に富む。

沿道には時折、小規模な網が仕掛けられているのが見られ、ところどころに設けられた船溜りには小型のボートが係留されている。道内有数の大きさの湖沼だけに、湖魚漁が盛んな様子。触発されたように、散策後の昼食は湖魚料理の店に足が向いてしまう。駅前の「源五郎」ののれんをくぐり、品書きから魚料理を次々にオーダー。鯉の洗いとワカサギの筏焼き、喉を潤すはクラフトビールの大沼ビールから、ケルシュをセレクトしてみる。

早速運ばれてきた鯉の洗いは、ザクザクグシグシと歯ごたえ軽快。後から脂甘さが心地よく広がり、これは箸が進む。淡水魚特有の土の香りがなく、ハマチやアジなど海の赤身魚を食べているよう。酢味噌もいいがワサビ醤油で試したくなるほど味が澄んでいて、ビールと洗いのひんやり瑞々しいコンビに、初夏らしい爽やかさを感じる。

お通しの川エビの塩蒸しもなかなかで、殻やヒゲが触らず全体がしんなり優しい口当たり。軽めの塩味がエビの甘さを膨らましており、身が小さいながら有頭エビの存在感が強い。このあたりのアテはビッと苦味が立ったケルシュとの相性がよく、淡水魚特有のクセがなく実に食べやすい。

散策中に岸寄りにヌッと顔を出した鯉君を思い出し、店のおばちゃんに大沼の鯉は旨い、と褒めたら、「鯉はいるけど天然のは骨が固いので、料理には使えないの。これは岩手から取り寄せた、食用に養殖したものなの」。でも川エビとワカサギは大沼の、れっきとした天然ものとお墨付きを頂戴した。先ほど見た小舟でとるのかと思ったら、あれはじゅんさい漁用で、旬のこの時期に北側の蓴菜沼までとりにいっているそうである。

川エビも味が上々だったので、ならばとワカサギの筏焼きを追加。空になったケルシュのおかわりには、地物の魚に敬意を表し北海道を代表する地酒の「千歳鶴」をお願いした。筏焼きはワカサギを手作業で串に刺し、みりんと砂糖、醤油で味付けして焼き上げたもの。10匹ほど仲良く並び、目線が気になるのをサクッといけば、みりん甘さと香ばしさが口の中に充満。淡水に生息するため骨が柔らかく、辛口の千歳鶴と絡み合っては身が心地よくほどけていく。

ワカサギ、川エビ、じゅんさいとも、大沼漁協の主要漁獲である。ワカサギの漁期はおばちゃんによると、10月から「氷が張るまで」の12月までと短く、回遊しているのを定置網の建網で漁獲した後に加工して、大沼周辺で通年販売している。筏焼きと佃煮はおみやげとしても人気で、店によって味付けが異なるそう。ここの筏焼きは小ぶりのを使いあっさり味で酒の肴向き、佃煮はやや大き目のを使い味が濃いめでご飯のおかず向けと、味付けが対処的に仕上がっている。

と聞いて佃煮を頼みたくなると、おばちゃんが「サービス」と小皿によそって出してくれた。メチャ甘辛の濃厚味、へなっとしおらしい歯ごたえの中、大きめだからか身の味もがなかなかの主張。辛口の千歳鶴だからがっちり対応し得る濃い肴だが、やはり白飯かっ込みたくなるごはんのおともだ。

漁の小舟を見た縁で、締めはじゅんさいの味噌汁で。ヌメヌメプルプルのが分厚く、シャクシャクトロリと不思議な食感が、口内を撫で回すごとくくすぐる。カツオだしのよく効いた味噌汁に負けないインパクトで、味噌汁を肴に残る千歳鶴も空けてしまえるほど。新日本三景の湖沼巡りのあとにさっぱり軽快なローカル魚、これが新幹線での北海道への旅の定番になると楽しそうである。

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