ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん22…ラーメン&焼き鳥のコラボ 杉田「卯月」のラーメンは強烈魚ダシが決め手

2005年12月28日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 記録的大雪の北陸や東北地方ほどではないにせよ、今年は関東地方も寒波に襲われ厳しい寒さの日々が続く。そのせいかこのところ外食する時はどうしても、うどんとかそばとかラーメンとか温かいものに偏りがちだ。この日もまるで雪が降りそうなどんよりした空、そしてきつい底冷えにたまらず、仕事で出かける前に最寄りの京急杉田駅でラーメンをすすっていくことに。いつもの「満州軒」(←町で見つけたオモシロごはん11を参照)で、激辛ドラゴンラーメンをいつもより辛目で行くか、などと思いながら駅ビルの2階へ足を運んだところ、食事時なのになぜかシャッターが閉まっている。

 この店、気まぐれなのか仕込み中なのか、たまに日中に店が閉まっていることがあるのは気付いていたが、さてどうしたものか。新杉田の駅近くには、横浜の家系ラーメンの総本山・吉村家の前身として有名な「杉田家」があるが、この寒い中を10分少々歩くのも億劫だ。そういえば先日見たタウン情報誌に、秋口に杉田駅近くに開店したラーメン屋の評判がいい、という記事があったのを思い出し、線路に沿って2、3分引き返してみると確かにあった。今まで何度もここの前は通っていたのに気がつかなかったのは、もとは焼鳥屋だった店の外観がほとんど変わっていなかったから。何にせよありがたく扉をくぐり、こぢんまりした店の奥へと落ち着くことに。

 店の外観は黒板が特徴の木造の小屋風で、店内もどことなく焼鳥屋の面影が残っている。すぐ裏は線路だから、荒っぽい運転の京急電車が通るたびにガタガタガタ… と結構な音、店も何だか揺れているようだ。テーブルの隅にはミカンが盛られた籠が置かれ、「ご自由にどうぞ」とあるのがユニーク。ミカンもいいが、とにかく寒いのでまずはラーメンで暖をとろうと品書きを見ると、醤油と塩の2種類のメニューが中心のあっさり系のようだが少々腹も減っているので、ややこってりの「背脂醤油ラーメン」を選んだ。店のお兄さんに頼むついでに煮玉子ものせてもらおうとすると「こちらのセットがお得ですよ」。見ると品書きの上にマルトクセットとあり、プラス200円で味玉にチャーシューとのり各3枚がつく。さらにチャーシュー飯も加えて、ちょっぴり豪華なラーメンセットとなった。

 「麺酒房 卯月」と店名にあるように、ここは昼はラーメン、夜はそれに加えて居酒屋もやっている店である。ずっとラーメン屋をやりたかったというご主人が一念発起して、焼鳥屋から今年の9月にラーメン屋になったという。「だから本格ラーメンと本格焼酎、本格焼鳥の店です」と笑っているが、備長炭を使って焼き上げた10種類ほどの焼鳥もご自慢の様子。また店名からか満月の日はサービスデーで、塩ラーメンと醤油ラーメンが500円というのも太っ腹だ。こんど来るときは満月の日を調べていこうと思ったら、ご親切に「12月の満月は16日です」との貼り紙がされているのが何だか面白い。

 運ばれてきたラーメンは脂がたっぷり浮き、表面がギラギラと輝いている。ちょっと前に流行った背脂こってり風でちょっとくどそうだが、ひと口飲むと印象は一変。魚のダシが強烈に立ち上がり、煮干しのような香りがプンプン突き上げてくる。これは日本人が大好きな、グルタミン酸のあふれる味だ。背脂のくどさを羽交い締めにして押さえ込むような? 剛腕な勢いの味わいに、スープをすする手がとまらなくなってしまう。品書きの上に「和風魚介だしダブルスープ」とあり、2種のスープを別々に煮出してからかけ合わせることで、深みのある風味を出しているようである。これがやや縮れた麺にばっちり絡むから、麺もどんどん進むこと。チャーシューはよく煮たトロトロのタイプだが、背脂入りスープよりむしろこっちの方が味が濃く濃厚で、食べ進めていくと脂の部分が少々きついか。味の染みたチャーシューの縁を刻みご飯に混ぜ込んだ「チャーシュー飯」の方が、大盛りとネギと薬味の味噌のおかげでさっぱりと食べやすい。
 
 ひと通り平らげたら、サービスのミカンをデザート替わりにひとつ頂く。店主によるとこの店、夜中の1時までやっているとのことで、今度は仕事帰りにちょっと一杯、締めはラーメン、なんてのもいいかも知れない。すっかり暖まりミカンを食べているとどうにも腰が重くなってしまうので、この辺で店を出ることに。すると厚い雲の切れ間から薄日が差し込む中、何と小雪がちらちらと舞い始めた。(2005年12月13日食記)


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