ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん131…横浜・みなとみらい 『日本料理四季亭』の、略式茶懐石

2009年02月18日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 去年の秋に、娘の七五三のお祝いを行った。娘の「三」、息子の「五」のときと比べて、娘も七とくればさすがに楽だ。着付けはおとなしくスムーズに進み、写真ではちゃんとカメラ目線を向け、外出も着物疲れすることなく、最後まで機嫌よく過ごせそうである。もっとも、女の子も七歳ともなると、おしゃれにはこだわりがあるよう。着物や小物選びにはなかなかうるさく、あれこれと主張してくるのは、「三」との違いというか、それだけ成長したというか。
 自宅近くのスタジオで着付けをしてから、お参りは伊勢山皇大神宮へと移動。横浜界隈では、初詣や七五三で知られた社で、紅葉山の高台にある境内からはみなとみらい地区のランドマークタワーが見える。殊勝にお祓いを受けて、境内の紅葉と一緒に行儀よく記念写真をとったら、一家でお祝いの会食へと向かうことに。今日はちょっと張りこんで、境内から見えていたランドマークタワーの上層階にある、横浜ロイヤルパークホテルの飲食店街を見てみよう。

 地下の駐車場にクルマを停めたら、ロビー階からエレベーターで一気に68階へと登る。フロアには和・洋・中華の3軒の飲食店があり、洋食のレストランではランチバイキングを催している。好きなもの食べ放題のバイキング好きな子供たちは一瞬、よろこんだが、あいにく90分待ちの大混雑だ。
 娘が振袖をきれいに着付けているので、バイキングで料理を取り損ねて汚しでもしたら大変だし、なんといっても振袖なら日本料理が一番。そこで並びにある『日本料理四季亭』に入ると、和服の仲居さんや待っているお客さんが、娘を見ては「あら、おめでとう」と声をかけてくれる。やや恥ずかしそうにありがとう、と応える様子が、なんともうれしそうである。

 窓際の席はふさがってまして、と案内された席もかなり窓に近く、食事をしながら充分に景色を眺められる。それにしても70階建て、地上296メートルのビルの68階といえば、日本のビルのレストランでは最高所ではないだろうか。直下の市街はミニチュアのようで、横浜スタジアムや山下公園、ベイブリッジもまるで飛行機から見下ろしたように小さく見える。その分、かなり遠方まで見渡せるようで、この日はやや曇りだが、天気がいいとお台場や東京タワー、伊豆半島、富士山も見えるらしい。
 自分たちも、今日はスーツ姿の正装なので、料理もお昼のミニ茶懐石としゃれてみる。一方子供たちは、バイキングでなければ「お寿司!」と、なんだか普段の外食のノリと変わらない。自分たちには向付、子供たちには握りの大皿が運ばれてきたところで、七五三おめでとう、の乾杯だ。菊花〆の鯛のつくりを肴に、まずはビールをグッとひと口。

 茶懐石はかつて、金沢の料亭でいただいたことがある。昼の茶懐石は、茶事を行う前に空腹だと体によくないため、しっかりと食事を取ることを目的としているという。だから、普通の和食の流れだと八寸が早めに出るのに、茶懐石だと最初にご飯と椀物でお腹を満たしてから、焼物や八寸という順で、このあたりから酒を飲みながら料理をいただく組み立てになっている。
 ここでは略式の茶懐石なので、さすがにご飯は締めくくりになっているが、向付の次はいきなり椀物が運ばれてきた。合鴨の丸にカブで、鴨のいいダシが出ていてホッとする味。柚子の黄色、ニンジンの飾り切りの赤、青菜の緑と彩りも鮮やかで、見た目もきれいに細工されている。
 続くサワラの柚庵焼きは、魯山人の染付福字平皿で出された。柚庵地がさっぱりと香ばしく、脂ののったサワラによく合う。サワラの本場は九州の長崎や対馬沖で、これから寒くなるといよいよ旬の到来。焼物のほか、最近はつくりで味わうのも人気が高い。

 

サワラ柚庵焼きの福字平皿がめでたさをかもす。右の八寸は甘味もある

 八寸の盆には、冷酒が添えられているのがさすがは茶懐石。それだけでは足りそうにないので、ここ茶懐石の流儀にのっとって(笑)熱燗も追加、一杯やりながら、カラスミ、カニの奉書巻き、餅レンコンなどをつまんでいく。栗の渋皮煮や柿なますなど甘い品が珍しく、意外に酒にも合うよう。
 八寸にはイクラもあったが、軍艦巻きを食べ終えたイクラ好きの主賓に奪われてしまった。握り寿司の子供たちは早々に食べ終えてしまったようで、店の人に勧められて空いている窓際の席に行き、窓にかぶりついて外の景色を見下ろしている。

彩り鮮やかなふろふき大根。ダシがよく効いている

 紅葉麩、銀杏、シメジといっしょに炊き上げられたふろふき大根が、秋らしく懐石ならではのヘルシーな主菜で、きのこ炊き込みご飯と赤だしで料理は締めくくり。デザートの柿をいただいた後、締めは茶懐石らしく抹茶と生菓子が出されるという。ひとつ上の階の茶室でも頂けるそうだが、時間が気になってきたので、テーブル席で慌しく頂いてお開きとした。
 店内の大きな壁画の前で、店の方が記念に写真を撮ってくれることになり、一同揃ってパチリ。お腹が落ち着いたところで、午後は再び主賓が主役。夕方の着物のレンタルの返却時間まで、それぞれの実家を慌しく顔見世行脚に出発である。(20081124日食記)



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