昨日、ポーラ美術館に参観に行ったレオナール・フジタの企画展について、覚書的に鑑賞記を少々。
氏の画風の大きな特徴は、「素晴らしき乳白色」と称される魅惑的な白。硫酸バリウム等と膠を加えた地の上にシルバーホワイト(鉛白)を塗り、その上に下書きする、という仕組みで、人物を表現することの難しさから独自の作風を突き詰めてのことだそうである。
この白による肌と、面相筆での炭線による輪郭の描線の組み合わせが、女性や子供の独特ななまめかしさを描き出している。「タピスリーの裸婦」は、キスリングやモディリアニらエコール・ド・パリの他の画家とは異なる、いわば白ではない人肌の白さが魅惑的だ。一方で「パリの要塞」「巴里城門」といった風景画は、どこか重く暗いのが対照的。
また氏は戦争に翻弄され、画家活動と金銭面ともに苦しんだ時期があるという。戦後に日本とフランスの間で揺れ動く心情を表わした作品は、動物を擬人化したものが中心となっていた。「犬の円舞」「ラ・フォンテーヌ頌」は、どこかシュールでブラックな印象が、裸婦や少女の絵と一線を画している。迷いというか、心の闇というかが、獣と人間を一体化させた虚偽の生き物を作り上げているようだ。
また、この企画展は子供たちを描いたタイル画「小さな職人たちシリーズ」がメインだったが、これはまた別途。 ※写真は閲覧用図録より拝借しました。
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