ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん61…中伊豆・浄蓮の滝 『フォーシーズン』の、激辛ワサビソフト

2006年09月05日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 家族での3泊に及び修禅寺の旅の最終日も、午前中までホテルの温泉プールでしっかりと遊び、お昼前にようやく帰途につくことになった。まっすぐ帰れば夕方前には自宅に着けるのだが、せっかく珍しく家族での旅行。いつもひとり旅で食べ歩きばかりしているので、日頃あまりやらない「観光」なんてことをしていきたい気分だ。そこで帰る方向とは逆に、国道136号線をクルマで20分ばかり南下して、目指すは中伊豆屈指の有名観光地・浄連の滝。滝への遊歩道入口付近には大規模な駐車場が整備され、飲食店やみやげ物屋もずらりと軒を連ねており、なかなかそれらしきムードである。子ども達はプールで遊びまくった後で、少々眠そうだが、滝を見物がてら少しばかり名所の散歩をしていくことにしよう。

 駐車場の一角、売店の裏手から、滝のある本谷川まで下る遊歩道が延びており、娘の手をつないで180段ほどの石段をゆっくり、ゆっくりと歩いていく。次第に滝の瀑音が響いてきて、木々の間に大きな落水がちらり。遊歩道はそのまま観瀑台へとつながっていて、高さ25メートルの迫力ある滝の落水が間近に見られる。しぶきが飛び散ってくるほどで、なかなか涼しげだ。しばし涼みながら休憩、みんなで記念写真を撮ってから、滝壺周辺に数軒並ぶ売店を覗いてみると、目を引くのは天城名物のワサビを使った商品の数々。ワサビ専門店の「丸いわ」には、立派な生ワサビをはじめ、わさび漬け、ワサビ海苔、ワサビドレッシングにワサビせんべいなどが目白押しだ。中伊豆の天城地方は、全国生産の3割程度を占めるワサビの産地として知られ、周囲の山々にはワサビを栽培するワサビ田があちこちで見られる。山間部特有の涼しい気候、冷たく澄んだ豊富な湧水がワサビ栽培の条件で、滝の周辺にも川の水を引き込んだ大きなワサビ田がつくられている。

 青々した葉が鮮やかなワサビ田を眺めたり、料理用の鮎を生け簀から網ですくっている様子を見物したりしていると、子ども達がお腹が空いた、お昼はまだ? と訴えてくる。そういえばプールで遊んでそのままホテルを出てきたので、昼食を食べていないことを思い出した。といっても売店のワサビ製品ではお昼ご飯にはならず、とりあえず観瀑台近くにあった川魚炭火焼きの店で、子ども達に焼き鮎を1匹ずつ買ってお昼ご飯替わりとした。魚は清冽な水をひいた生け簀からすくいたて、焼きたてだから、頭からまるごと平気でかぶりついているからたくましい限りである。食べさせながら遊歩道を引き返して登っていくと、滝周辺の涼しさからは遠ざかる上に急な登りのため、上に着く頃にはすっかり汗だくになってしまった。鮎を食べた子ども達も、のどが乾いた様子。それを狙ったかのようにアイスクリームの売店があるのは、なかなか商売上手といったところか。バニラや、これまた伊豆特産のみかんアイスを子ども達は選び、もしやと思ってメニューを見るとやっぱりあった、ワサビソフトクリーム。

 このごろ、全国各地でいろいろな「ご当地変わりアイスクリーム」を見かけるようになった。ラズベリーや洋なし、桃にイチジクといった果物路線、枝豆にカボチャ、トウモロコシといった野菜路線あたりまでは常識の範囲内として、中には米に酒に醤油にみそ、そして究極は魚介系でウニにサケ、鮎やサンマなんてのも。以前、鮎のソフトクリームは食べたことがあるが、いわゆる「ツブツブ入り」で味のほうはそれはもうすごいものだった。そうした各地の変わりアイスの中で、ワサビは元祖的存在、かつ比較的安定した人気商品ではないだろうか。さすがに名物らしく、ワサビソフトを出す店は3軒ほど出ており、生地の中に練り込んでいるもの、仕上げにワサビをトッピングするもの、甘口と辛口を分けているものなど、ワサビをソフトクリームにあわせる「処理方法」は、店によって微妙に違うらしい。

 どうせなら人気がある店の評判メニューを試そうと、観光バスのツアー客で人だかりがしている一番奥にある店『フォーシーズン』へと足を運ぶ。店頭にはワサビソフトのイラストが描かれた張り紙が並び、目を引くのは「つぶ入り」との文字。刻んだワサビをそのまま入れているらしく、少なくとも鮎のつぶ入りよりはうまそう、というかちゃんと食べられそうだ。ほんのり香りがする初級、初級よりワサビ3倍の中級、さらに初級の5倍、一番人気とある「激辛」の3段階と、辛さの表示は何だかカレー屋のようでもある。頼むのはもちろん、激辛だ。アイスはジェラートスタイルで、さっぱりした甘味の中に何やらシャクシャクした歯ごたえ、そして後からビシッ、ビシッとはじけるような刺激! 激辛カレーのように火を噴くようなことはないけれど、これはなかなかスパイシーなアイス(?)だ。とはいえしっかりまとまった味なのは、まったく逆の味覚をぶつけ合うと、かえってそれぞれが引き立ってくるということか。

 こちらは子ども達と逆に先に甘いもの、というか辛いものを頂き、後からお腹が空いてきた。もうひとつの伊豆名物である、南伊豆の海岸でとれたテングサをつかったところてんでお昼替わりにしようとすると、何とこちらもワサビ入りがある。ところてんにワサビを練り込んであるためほんのり緑色をしており、さらにトッピングにわさび漬けをちょん。ベンチに座ってのんびり食べていると、天城の谷間にはいつの間にか黒い雲が出てきており、夏の夕立を喰らう前に家路につくとするか。ワサビづくしを最後に、3日にわたる修禅寺の旅は無事終了… といいたいところだが、夕方になる前に渋滞名所である熱海~小田原の海岸線を抜けられないと、夕食も伊豆のどこかで食べることになるかも。(2006年8月23日食記)


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