ラーメンとカレーライス。日本庶民におけるこれら「国民食」は、いずれも本国に存在しないのが面白い。ラーメンは各地の中華街に入ってきた麺料理を、カレーライスはイギリス経由で日本に入ってきた西洋料理を、ともにアレンジした料理。どんな国の料理でも、入ってきたらいつの間にか「おらが国のうまいもん」という、日本の食文化の特徴の代表かつ起源といえる。
もう一つ、イタリアのナポリのローカルパスタっぽいナポリタンも、当地に存在しない日本の「国民食」だ。麺と具をフライパンでジャジャッと炒め、ケチャップをドバドバッとかけ混ぜてできあがり。具はムール貝とかバジルとかではなく、赤ウインナーに玉ねぎ、ピーマン。トマトもホール缶とかではなく、チューブのケチャップ。油ももちろん、オリーブ油ではなくサラダ油。そしてクタクタに茹で上げた麺には、アルデンテという概念は存在しない。これはイタリア料理のパスタではなく、日本のスパゲッティーだ。
しかしながら、フォークでくるりと巻いていただくと、油ギトギトの麺に酸味がとんだトマト味が、郷愁をそそる人も多いのでは。ふと目を閉じて開くと、そこは小学校の教室での給食?学校から帰宅した土曜日の昼ごはん? チェーンのカフェがない時代に友人とダベッた喫茶店でのランチ?
思えば3つの料理はいずれも、子供の頃からみんな大好きで、ウキウキしながら食べていたはずだ。子供も大人も魅了して止まない、これら「国民食」。プチ異国らしさに加え、食べる側のハレの気分や思い出こそが、その所以なのかも知れない。
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