仕事柄、全国にリピートしたいお気に入りの店がある。味はもちろん、居心地、店の人の人柄など、複合的要素で評価されるそんな店だが、当地に赴いた際に必ず足を運ぶここぞ!と言える一軒は、さすがに片手ぐらいしかない。
そのひとつ、広島の繁華街にあった「チャテオあくさん」が、太田川を越えた十日町に移転したと聞き、宮島からの帰りに立ち寄ってみた。店は2階になって広くなり、大きな窓越しに行き交う路面電車を見ながら、燻製とワインが楽しめる。自慢の燻製は素材ごとに仕込みが違い、半年から一年じっくり熟成して作り上げる本格派だ。
2種類ある燻製ディナーから6500円のコースに決め、ワインは「比較的なんでも合う」とのシャブリハーフボトルを選択。前菜のゆで卵は、半熟の黄身の甘さが半端ではない。この卵も燻製で、燻製液に甘みがあるので黄身の甘さが膨らむ。上にカキを麹発酵させたのをトッピングしてあり、アンチョビのような魚の発酵しょっぱさが黄身の甘みを引き立てる。
続いては、魚介の燻製盛り合わせ。マスは海マスで、市販のスモークサーモンより身が厚くソフト。濃厚な脂が燻製香で軽くなり、ツルリと味わえる。アサリの燻製は小さいながら、チェダーチーズの酸味と濃厚さ。カキは抱卵していて、潮の香りがないがホッコリ甘く、黒いひだのところがサラミのように香ばしい。小イワシは半生の燻製で、広島の庶民的ローカル魚が、ハイセンスな酒肴に。
前半のインターバルに、玉ねぎの燻製の小鉢もいただく。ギイのミルク甘さに玉ねぎの甘さが相乗効果。発酵醤油が香ばしく、ワインのアテになる一品だ。「瀬戸内の気候が育んでくれる。自然に委ねる料理が、味も体にもいい」とのご主人によると、翌日体に残らない、やさしく体にいい料理が身上だそうだ。
インターバルの後、肉の燻製盛り合わせが続く。以下は別項にて。
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