ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん57…高知 『喰多郎』の、カツオのユッケ

2007年01月29日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 カツオ一本釣り漁の盛んな、土佐湾に面した漁業の町・土佐久礼の「久礼大正町市場」を巡り、カツオにまつわる本場ならではの様々な話を伺った。お昼過ぎの列車で土佐久礼を後に、旅の最後は南国土佐の中心としてある、高知の街で、思う存分に土佐の味覚を満喫するつもりだ。駅へ降り立つとまだ15時過ぎ、気温は軽く35度に達している上、土佐湾に間近に面しているため湿度もものすごいこと。今日もそうだが、連日早起きして朝から暑い中を歩き回っているせいで、旅の終盤となりさすがにバテてきた。駅から歩いて10分ちょっとのところに、この日泊まるホテルがあるのだが、この炎天下の下を歩く元気はなくタクシー乗り場へ直行。早めにチェックインしたとたん、ベッドの上でバタンキューと眠り込んでしまった。

 クーラーの効いた部屋で2、3時間熟睡したおかげで、日が傾く頃にはかなり体力が回復。さあ今行くぞ、待ってろよ高知の夜、とばかりホテルを出ると、まだ日中36度の暑さの名残でむっと重たい空気が襲ってくる。土佐電鉄の路面電車が走る駅前から延びる通りを渡り越し、日曜日には名物の「日曜市」が行われる追手筋を進み、目指すは夜の繁華街である廿代町界隈だ。居酒屋や郷土料理屋、バーにスナックなど、種類や大小さまざまな飲食店がひしめく小路を覗きながら歩いていくと、通りの一角に大きな看板が目を引くビルに出くわした。候補の1軒だった『喰多郎』で、まだ18時前と早いがやっていそうなので、高知の夜最初の1軒とした。入口をくぐると「どうぞ、奥が空いてますよ」と、5人がけカウンターの一角へ。今日は暑いですね、とすぐにおしぼりを持ってきたお姉さんは元気でシャキシャキした感じ、男勝りで快活な土佐の女性気質を指す、「はちきん」という言葉がピッタリ、といった感じである。

 高知屈指の繁華街である廿代町の飲み屋街の中で、ひときわ大きな店を構えるこの店、その日の土佐沖で水揚げされた魚介類を、刺身、寿司、焼き物など様々なスタイルで味わえる。こじゃれた感じのメニューを開くと、土佐のトラディショナルな一品料理に加えて、オリジナルの創作料理も確かに数多い。日本各地の日本酒や焼酎も豊富に揃っているが、この暑さではまずはやはり、ビール。そして肴もやはり、カツオといきたい。オーソドックスにたたきから、といきたいけれど、四国に入ってからあちこちで「普通の」タタキは頂いたことを思い出す。そんな様子を見越してか、「カツオなら、ちょっと珍しいメニューがありますが、どうですか?」。お姉さんが勧めてくれたのは、カツオのユッケ。これとクジラの串カツ、そしてチャンバラ貝の刺身、酒盗と、カツオ料理を中心にすべて土佐名物の味覚で脇を固めることに。ついでにおまけ、と、ニンニクの丸揚げも頼んで、今宵の飲み歩きのスタミナ補給といこう。

 今日は漁港めぐりの長旅の最後の夜となるため、ビールが出てきたらまずは、無事に旅程をこなせたことに乾杯。そしてお昼の土佐久礼のかつおどんぶりに続いて、まずはカツオから頂くことに。メニューには「にんにく薫るカツオユッケ」とあるこの品、喰多郎の名物創作料理のひとつで、鮮度抜群の生のカツオを、たっぷりの野菜とともにユッケに仕立てたもの。カツオは小振りで角切りにされ、付け合せはレタスとたっぷりのタマネギ、ネギにキムチとニンニクチップと、本来漁師料理であるタタキが、ずいぶんと洗練された感じだ。ビールをグイッ、そしてユッケを野菜ごとガバッとひと口。カツオは甘味とさわやかな酸味があり、身が柔らか。中村と土佐久礼で頂いた時もそうだったが、さすが「鰹乃国」、血の香りはせず、筋などまったくない。今度はカツオの刺身だけで食べてみると、ニンニクの香りがガツンと強烈。普通のタタキでは、薬味におろしにんにくや生のにんにくのかけらを添えるが、それよりもインパクトがある。さらに、ニンニクチップとキムチを添えて食べるとエスニック風で、口の中がカッカしてくる。これは暑さバテが吹っ飛び、食欲が開いていく感じである。

 ニンニクとキムチの強力さにビールがあっという間に空になり、早々におかわりをお姉さんに注文する。ついでに、このカツオはどこの漁港で水揚げされたものか尋ねたところ、この日は須崎のを使っているとのこと。須崎は土佐久礼から高知へ来る際、特急で次の駅で、土佐久礼と同様に土佐湾に面した漁港の町である。須崎から高知まで売りに来るのを、量り売りで買ったそうで、「うちで使うカツオは生のものだけ、もちろん冷凍モノなんか使わないよ」各地の地物のいいものを、その時々で使い分けていると胸を張る。でも、カツオは割って(おろして)みないと、見た目だけじゃ結構分からないからね、と、お昼に訪れた土佐久礼・大正町市場の田中鮮魚店の親父と同じ言葉がでてきてビックリ。今日、土佐久礼に行ってきたことを話すと、あそこは一本釣りで有名ね、と笑っている。

 と、スタートの一品ですっかり元気、食欲も湧いてきて、ニンニクの丸揚げを頼まなくてもよかったかな、と思うぐらいである。引き続き、カツオの脇を固める土佐の味覚が続いていくが、珍しい逸品ばかりであれこれ語りたくなるため(?)、次回に分けて詳細に。(2006年8月7日食記)


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