ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカルミートでスタミナごはん…浜大津 『旧大津公会堂レストラン モダンミール』の、近江牛スジの煮込み

2020年02月09日 | ◆ローカルミートでスタミナごはん
国宝の城を有する彦根、格子戸の商家が集まる近江八幡、黒漆喰の洋館がランドマークな長浜。町並み散策のコンテンツが豊富な滋賀県内の各都市の中で、県庁所在地である大津は今ひとつ地味な印象を受ける。しかし実際に歩いてみると、バラエティ豊かな建築物や通りや史跡が、随所に点在しているのに驚かされる。旧東海道周辺に見られる、国指定重文の商家や民家。中町に延びる昭和の風情漂う商店街。国策で作られた琵琶湖疏水の重厚な産業遺産など。物流の拠点として賑わった町だけに、時代や由緒が多岐にわたるコンテンツが広く揃っているのが、大津の町並みの特徴といえるだろう。

そんな町並みの構成要素を巡った後、最後に訪れたのは洋館だ。浜大津駅の裏手にある旧大津公会堂は、昭和9年築の公共建築である。丸窓と直線的な窓を組み合わせたフォルム、淡い茶系のタイル張りの外観など、シンプルな造りながら公会堂らしい威風堂々とした風格も漂っている。人通りが少ない駅裏の線路端に寂しげにあるようだが、現在は4軒の飲食店が入った「旧大津公会堂レストラン」となり、人気を博しているそう。しかもローカル銘柄である近江牛のグリルとくれば、町並みさんぽの締めにこちらで軽くひと休みしていこう。

ちょうど開店の17時で、車寄せ付きの荘厳な玄関をくぐり、「モダンミール」の扉をくぐった。外観に反して店内はカジュアルな印象で、窓辺にかかるネオンサイン、壁面に描かれたマップのペイント、奥にはバーカウンターもあり、アメリカンダイナーのような賑わいが感じられる。手描きのイラスト付きメニューにはもちろん、近江牛の文字がずらり。ステーキは部位やサイズが各種、ほかハンバーグにカツレツ、一品料理まで、精肉店直営ならではの安さも売りだ。がっつり晩御飯のいくにはやや時間が早く、近江牛スジ煮込みとハイボールで軽い一献といきたい。

お通しの黒毛和牛生ハムを、紙からはがしてはつまんで一杯とやっていると、小鉢に盛った煮込みが運ばれてきた。トロトロに煮えたスジに青ネギがのった見た目は、店のテイストとは違い赤提灯的な感じだ。しかし口にするとさすがは日本三大和牛のスジ、フルフルととろける秀逸な甘さは、部位はスジながら品格すら感じさせる。醤油ベースなのに味噌のような丸い甘みがする汁は、どこか韓国の肉料理のよう。ハイボールよりも地酒が焼酎が合いそうで、軽くのつもりが誘い水になってしまいいけない。

旅先での野菜の補給にとった、大盛りのアンチョビキャベツも平らげて、コラーゲンとビタミンCとカルシウムは充分摂取できた。小一時間で店を後にしたらあたりはすっかり真っ暗になり、ライトアップされた公会堂が昼間とまた違った存在感を見せている。町歩きの締めで立ち寄った伝統と格式ある公会堂建築でいただくのは、日本指折りの高級銘柄牛。でもどちらもちょっと庶民的なたてつけになったのに親近感が湧いた、大津のローカルミートである。

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