「熟成」「◯年物」こんな表現にプレミア感を持てる酒といえば、ワインかウイスキーと相場が決まっている。ところが、できたて生をググッといくイメージの生ビールにも、こんな概念が存在するとは。視察の最後、那須高原ビールには、地元の九尾の狐伝説にちなんだ「ナインテイルド・フォックス」というビールがある。これが長期熟成して年月を置くほど味わいが深くなる、ヴィンテージビールだそうだ。
貴重な品なので1杯だけ試飲させてもらったら、ビールなのにトロリと厚みがある味わい。濃いめの琥珀色の印象通り、麦芽がこなれたトロ甘さが強く、養命酒のような身体によさげな風味が感じられる。説明によると、きちんとした材料・製法の生ビールは、酵母に細胞を活性化する要素や、不純物を排出する要素があるそう。昔のドイツでは飲むクスリ、飲むパンとも称され、何と妊婦の滋養強壮にも進められたとも。
ここの支配人氏いわく、本物の生ビールは文字通り「生もの」で、常に冷やしておく必要があるという。大手メーカーのと比べ、様々なエキスが除かれずに含まれているからで、おかげで二日酔いはせず、健康や美容にもいい飲み物だそうである。ドイツで王侯貴族のビールと称された、黒ビールのヴァイツェン。栄養価が高く夏バテや冬の冷えに効く、ブラウンのスタウト。いずれも那須山系の良質の水で仕込んだ自慢の品です、と力が入る。
バナナのようにフルーティなスタウト、愛子さまから名をとったスッキリ軽い「愛」。試飲した一通りそれぞれ味わいがあったが、飲みやすい分熟成ビールのインパクトを、かえって再認識したような。本格ビールを各種飲み比べ、やや酔い気分でミッション終了。そういえばいつしか咳も止まりダルさも抜けたのは、朝に寄った48度の熱湯湯治場の効果か、これら「飲むクスリ」のおかげ様だろうか。
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