ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

【メンタルヘルスクラブ】『ローカルごはん・食紀行が、知識と心に及ぼす効能は』

2011年05月26日 | おさんぽ講座・介護レクの記録

  

※2011.5.25に、六本木プラスワンショールーム・セミナールームで行われた、メンタルヘルスクラブ主催の勉強会にて、標題の講演を行いました。以下に要旨を披露させていただきます。

 【導入】
●ローカルごはんとは? 食紀行とは?
・「ローカルごはん」とはひと言で言えば「その土地で生まれて伝えられ、今でもしっかり根付いているごはん」。といっても格式は必要ないし、高級なものでなくてもかまわない。伝統ある郷土料理でも、庶民派のB級グルメでも、「おらが町のご自慢のご飯」と、地元の人が胸張って言える様なものなら何でもいい。
・全国あちこちを旅して、食べ歩いて感じるのは、「その土地のごはんは、その土地で食べるからこそうまい」ということ。食材は産地のほうが鮮度もモノもいいとか、料理方法が熟練しているとかもあるが、その土地の「空気」の中に身を置いて食べるからうまい。寒い土地の料理は鼻水すすりながら、南のほうの料理は汗だくでたべるからこそおいしい。
・それに加え、旅先での人とのふれあいもまた、味のうち。水揚げや収穫の現場で農家や漁師に話を聞き、料理人の親父のうんちくに耳傾けたり、店のおばちゃんに親切にしてもらったり、お客の世間話に混ぜてもらった。こうした、
食をテーマとする旅を「食紀行」と呼んでいる。

●ローカルごはんと食紀行の、メンタルヘルスへの効能
・料理が生まれた背景、料理法の秘訣、味や栄養など、食に関する諸情報は「知識への栄養、心への滋養」となる。「耳から、脳から効いてくる調味料」とも表現できる。

テレビの食関連番組で、料理の画像に加えて、食材の由縁や調理の技、レポーターの味の表現などを見ると、よりおいしそうに見え、食べたく、お店に行きたくなるのでは?

◎自身の提唱する調味料は、「旅で出会って得る」こと。本やネット、映像からではなく、場所、産地、店、料理人、生産者、客、すべて実際に出会い、ふれあって得た情報こそが、心と知識への真の調味料となると考える。

※食の知識を持つことが、いかに料理を食べる上でイマジネーションを与え、単に食べるよりいかに心豊かになるかを、いくつかのローカルごはんを例に、料理とそのご当地のスライドを見ながらバーチャル食紀行へ


【食紀行事例・根室のエスカロップ】
・日本最東端の町・根室へ。納沙布岬の先に北方領土を臨む最果ての町。そこの名物料理が「エスカロップ」名前からして、どんな食べ物を想像するか? 

写真によると、パッと見は「ピラフのトンカツのせ」。ちょっと解説すると、バターで炒めたライスの上にカツをのせて、その上にデミグラスソースをかけた洋風の料理。
※見た目の印象は、洋食屋で見かけそうな盛り合わせ程度では? なぜこれが日本最東端の街の名物なのか? しかも花咲ガニなどで知られる北海道屈指の水産都市の売りなのか? 何で「エスカロップ」という名前なのか?

◎それをひも解くと、料理がよりうまそうに見えるようになるだろうか? では「耳から、脳から効いてくる調味料」を加えていくことに。

 
 


 ●名称の所以…フランス語で薄切り肉「エスカローペ」が語源というのが有力。地元では短く縮めて「エスカ」と呼ばれる。でも料理自体はフランス料理とは何の関係もないし、根室とフランスの関わりによるものでもない。
・この料理は、根室にあった「モンブラン」という喫茶店のシェフが昭和 38年に考案したとされる料理。ここから広まって、今では市内のレストランや喫茶店では大抵出している。同じ北海道でも根室をちょっと離れるとほとんど見かけなくなる、根室限定といってもいいローカルごはん。
●土地の背景との所以…根室は古くからオホーツク海や太平洋を漁場とした漁業の町であり、また港湾で働く人も多いなど、いわゆる肉体労働者が多かったから、このボリュームメニューが人気だった。自分が食べたときは洋食屋らしい銀色の楕円の皿に、大盛りのバターライスにトンカツがドン、さらにポテトサラダもたっぷりと、相当なボリューム。
・ちなみに九州の長崎に、同じような洋食盛り合わせメニューで「トルコライス」というのがある。これもトルコ共和国とは何の関係もないが、造船が盛んだった長崎で、労働者のスタミナ食として人気だった。日本の最東端と、西端の町で、同じようなローカルごはんが根付いているのも面白い。
●味の感想…ひと言で言えば、「大人のお子様ランチ」。自分たち世代が子供の頃に大好きだったおかずが山盛りで、懐かしいようなうれしくなるような味。子供のころにうれしかった旗はないけれど、代わりにビール頼むとうれしくなるのがおとな。

◎最初に料理の写真だけ見た印象と、こうした話を聞いた後では、料理への関心や食欲は変わったか? 単なる洋食盛り合わせが、味わい深いご当地料理に感じられるようになったら、それは知識の調味料が効いてきた証。

 (ほか、豊橋カレーうどんで食紀行事例を披露したがここでは略)

◎スライドを見ながらのバーチャル食紀行にて、情報を加えた上での料理の味を想像してもらったが、次は実際に食べ物を試食した上で、単に食べるのと情報や知識を得た後で食欲、味への印象などが変化するか。「調味料効果」を試してみることに。

用意した焼き菓子を配布。まずは眺めていろいろ考えを巡らせてもらう。


【食紀行事例・高知県・須崎の鍋焼きラーメン】
・このローカルごはんの舞台は、高知から特急で 40分ほどの須崎。この町の名物は、「鍋焼きラーメン」 。なぜ土鍋でラーメンを?どうして土佐湾に面したカツオ漁の盛んな小さな港町でラーメンが?

●料理そのもののうんちく
…名前の通り、鍋焼きうどんのラーメン版で、土鍋で炊き込んだラーメンのこと。熱々の麺とスープを、土鍋からそのまま頂く、具もたくさんのラーメン。全国のご当地ラーメンの中でも、見た目のインパクトとオリジナリティではこの「土鍋で食べるラーメン」はナンバーワン。
●土地の背景との所以…そもそもは戦後すぐに開業した「谷口食堂」という店の看板メニュー。戦後の食材不足の中、鳥屋さんから分けてもらった肉やトリガラをベースに、ネギやちくわといった須崎で手に入りやすい食材を使って作られていた。そしてポイントの「鍋焼き仕立て」は、町の主要産業だった木材の加工場で出たおがくずを燃料にスープを炊いて、さらに出前のときにスープが冷めないようにホーローの鍋を使ったのがルーツとされる。
●味の感想…このラーメンの醍醐味は、何といっても沸騰して熱々のうちに食べること。ふたを開けると湯気がバッと上がり、中は泡を吹いているぐらいグツグツやっているのが、うまさの秘訣。しかも土鍋は保温力があるから、食べ終わるまで熱々なのがうれしい。 ※鍋焼きラーメンのスープは、親鳥のトリガラからとった醤油ベースで濃い目のあっさりスープ。具は親鳥の肉に、ネギ、生卵、ちくわを使うことが決まりとなっている。

ここで配った焼き菓子を、鍋焼きラーメンの定義を思い出して眺めてみたら…

 

・これは「鍋焼きタルト」という、鍋焼きラーメンの焼き菓子版。須崎の菓子店「一文字菓子舗」が、鍋焼きラーメンを模して作ったご当地名物で、先ほどの鍋焼きラーメンの定義に出てきた具材が、この菓子にものっている。ドライフルーツや砂糖を使って、ちくわやネギを模しており、それらしい仕上がりで面白い。

◎土鍋の鍋焼きラーメンの、様々なうんちくをイメージしつつ改めて味わってみると、遊び心があって楽しくなる? 味もひとしお深く感じられる?


【まとめ・心の健康・快適な仕事環境と食】
・食は労働力のエネルギーであることに加え、気持ちに作用する部分も大きい。味覚・視覚・嗅覚・聴覚・触覚の五感をフル活動するため、人間にとって、癒しにつながる。
・そもそも各地に根付いたローカルごはんこそ、その土地の「癒し食」。旅先での風土が、郷土料理を生む。寒いところでは寒さに負けないための料理、暑いところでは暑さに負けない料理。なのでその土地の人を心地よく調整するように、ローカルごはんはできているのではないだろうか。
・加えて、食紀行による旅先での出会いも「癒し」のひとつ。見知らぬ土地で、生産者や店の人、お客など、初めてあった人との親交はうれしいもの。その土地その空間に自分自身が受け入れられ、居場所となる安心感が心地よい。

いい食事をしていれば、仕事時のモチベーションを上げる効果も大きい。五感プラス、知識すなわち食紀行の「耳から、脳から効いてくる調味料」。食の知識が、さらなる心の豊かさにつながる。仕事で忙しい中の昼食や夜食に、こうした「食紀行」の精神をとりいれては?

・ファーストフードや立ち食いそば、コンビニ弁当をかき込んだり、仕事をしながら食べたところで、お腹は満たされても頭や心の「食事」にはつながらない。しっかり休んだところでたかだか小一時間、なら時間のロスと考えず、頭を切り替えて食時間を存分に楽しんで、リセットしたほうがより効果的。
そこで「食紀行」の精神を、日常の食にもとりいれては。毎度毎度の食事に興味を持って「この一食」を選び、料理や食材の由縁、料理法、栄養素などに考えを巡らせつつ食せば、仕事の中でのリフレッシュ、知識向上、癒しの一石二鳥三鳥に。
・仕事時の食を楽しみとすることで、仕事の効率が上がるしストレスにも強くなれる。食事を楽しみ(目標)として仕事を頑張る。昼休みに話題のラーメンを食べるために、少し頑張って仕事を終わらせよう、など、仕事や作業のストレスを楽しみ(目標)に置き換えることができ、仕事が楽しくなる。

※もちろん、出張で各地に出かけたら、ぜひリアルに「食紀行」を楽しんでほしい。食事の時ぐらいは営業や打ち合わせから切り替え、ご当地の食をめいっぱい楽しみたい。別に2万円の松葉ガニを食べようとか、 A5ランクの松阪牛を食べようというのではない。出張経費で落ちる(?)ローカルごはんはいっぱいあるので、出かけた先で楽しみながら探し、楽しみながら味わってみては。



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