ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん50…富士宮 『すぎ本』の、富士宮焼きそばとお好み焼きハーフのセット

2006年05月11日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 ラーメンの食べ歩きだと、2軒もはしごすればもうとても食べられないが、お腹と相談したらもう1軒ぐらいいけそう。富士宮の焼きそばは量が手頃なため、食べ歩きには向いているようだ。浅間大社の門前にある「ここずらよ」を後に、さらに店を探して歩く前に、宮町商店街の一角にある「お宮横丁」にもちょっと寄ってみた。地元の名物を扱う飲食・物販店が集まる、ちょっとしたフードコートになっており、入口にある店には数人の行列ができている。ここはやきそばで町おこしを目的とした「富士宮やきそば学会」のアンテナショップで、焼きそばのテイクアウトができるほか、持ち帰り用焼きそば、ミニタオル、ミニ幟、ストラップ、さらに焼きそば音頭のCDなど、様々な焼きそばグッズが揃っているのが面白い。ほか和風カフェ、ジェラート、富士の湧水で仕込んだだんごの店などが並び、お客は中央の大屋根の下に並ぶ縁台に腰掛け、買ってきたものを食べながらくつろいでいる。焼きそばを食べている人の中には、さっきのはとバスのバッジをつけた人も。アンテナショップの前の焼きそば神社に参拝?し、中央に湧き出す富士の雪解け湧水でのどを再び潤す。

 3食目の焼きそばはここで頂いてもいいかな、とアンテナショップに向かおうとして、奥にもう1軒、焼きそばを売る店を見つけた。店頭に掲げられた看板には「創業昭和23年老舗の味、富士宮焼きそば専門店」とあり、どうやら地元の老舗の出店のようだ。本店の案内図も載っていて、商店街を西富士宮駅方向にちょっと歩いたところらしい。駅前の喫茶店、神社門前の物産店と食べ歩いたので、締めくくりは本格的な焼きそば専門店であるこの『すぎ本』に行ってみることにしよう。商店街から路地へと入り、店へと近づくと、次第にコテの音がカチャカチャ、人の気配がガヤガヤ、時折「お待たせしました!」と響くおばさんの声。まだ店に入っていないのに、活気が店の外まであふれている。

 ガラリと戸を開けて中へ入ると、座敷もカウンターもほぼ埋まっている。ほとんどが地元のなじみ客で賑わっている様子で、店の人とのやりとりが、和気藹々とした雰囲気だ。座敷の客は大きな鉄板つきのテーブルで、焼きそばやお好み焼きを人数分まとめて焼いては取り分けている。カウンターの隅に席が空いたので腰掛け、店の人を呼び止めようとしたが「ちょっと待ってね!」と注文をさばくのに忙しそう。厨房でも調理担当の男性が鉄板の前でフル回転、おばさんと姉さんがサポートしている。店長の鈴木きよみさんを中心に家族経営の店らしく、昼時の混雑をみんな一丸となって、てんてこまいでこなしている。

 忙しそうなおばちゃんをようやくつかまえて、焼きそばを頼んでみたら、「みんな富士宮に焼きそばを食べにくるけど、お好み焼きもおいしいよ。うちのもぜひどうぞ」。富士宮やきそばマップにも、焼きそばの店の多くはお好み焼きも食べられる、とあり、この店の品書きにも「昭和20年より50年以上同じ製法で、広島風でも大阪風でもない富士宮風」と勧めている。

 とはいえ焼きそばも外せないし、両方はお腹に入らなそうだな、とあきらめかかったところ、品書きに「お好み焼きと焼きそばのハーフもできます」。それほどまでにお勧めならば、がんばって両方食べてみようか。具は1種ずつ別料金になっていて、焼きそばもお好み焼きも肉、イカ、エビ、シイタケ入りの「五目」にしてもらう。食べ歩きの最後だから、と中ジョッキも頼み、突き出しのおでんと先に運ばれてきたお好み焼きをつまみながらグイッ。生地がスポンジのようにふわふわで、干したサクラエビが香ばしい。

 ジョッキが半分ほど空き、ハーフのお好み焼きの半分ほど平らげたところで、おばちゃんが焼きそばを運んできた。ここの焼きそばやや細麺、つまり一般のソース焼きそばと同じぐらいの太さ。五目にしたため具が豊かで、豚肉が入るとこれは焼きそば、といった感じになる。味の秘訣は店の売りであるブレンドソースで、ピリッと効いた辛さがまた、ソース焼きそば風。老舗の焼きそばが、いちばん一般的な焼きそばに近いスタイルなのも、何だか面白い。

 それにしても、ハーフといってもお好み焼き、焼きそばともに、普通に1人前はあるサイズで、焼きそばを2軒はしごしたあとではさすがに全部は食べられない。お好み焼きの半分をテイクアウトにしてもらい、腹ごなしにさらに小1時間商店街をぶらぶらして、富士宮駅で焼きそばの町を後にした。乗り込んだ甲府行きの特急は、峠へ向けて高度を稼ぐために、市街を迂回したり蛇行したりしながらゆっくりと進んでいく。すると車窓の右手に、ゆったり大きく浮かんだ富士山! さっきからの程良い揺れのおかげでお腹に余裕ができたので、富士山を眺めながら残りのお好み焼きを頂くとしよう。(2006年5月1日食記)


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