ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん74…修善寺温泉 『ラフォーレ修善寺』の、さと焼きに焼きみかん

2007年01月08日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 今年のお正月は、家族旅行で修善寺にあるリゾートホテル「ラフォーレ修善寺」で過ごすことになった。1日目は夕方にホテルへと到着、皆で「日本料理天城」で新春会席を味わい、のんびりと温泉に浸かって終了。翌日はホテルの敷地内で行われている、お正月のイベントをはしごしてみることにした。お昼までホテルの部屋で、箱根駅伝をテレビで見ながらゆっくりして、チェックアウトしたらテニスコートに隣接したイベント広場へ。巨大なすべり台を中心に様々なイベントを実施しており、干支のいのししをモチーフにした「伊豆しし福笑い」、ピエロのパフォーマンス、ビンゴゲーム大会など、子供向けのイベントが盛りだくさんだ。

 そして正月ならではのイベントといえばやはり、餅つき。会場のステージに大振りの臼と杵が運び込まれたら、まずはホテルの職員の方の出番である。蒸しあがったもち米を臼に移し、粒がなくなるぐらいしっかりこねてつぶしてしばらくつく。その後に見物している大人が2、3名参加して仕上げ、最後に子供たちが小さな杵でつくという仕組みである。司会のおねえさんの勧めとともに、子供たちの「ヨイショ!」の掛け声が会場に響き、一巡するとできあがり。つき上がった餅は会場の中央へと運ばれて、きな粉と大根おろしにからめて振舞われる。行列に並んでひと皿頂くと、つきたてで柔らかくふわふわ、ぐっとよく伸びなかなかうまい。普段はトースターで焼いた角餅を食べ慣れているため、子供向けのイベントながらちょっと得をした気分になる。

 会場の奥のテントコーナーでは物販をやっているようで、足を向けてみるとこちらではおしるこのサービスや、せんべいの生地を自分であぶる手焼きせんべい体験など、おいしそうなイベントも行われている。焼き網とコンロで何かあぶっているのを見つけ、見たところ焼き芋のよう。寒いから石焼きいもか、ジャガイモをあぶってじゃがバターか、と思ってよく見ると、焼かれているのはサトイモだ。2つに切ったサトイモを焼いて、醤油をつけて頂くだけのシンプルな料理で、地元では「さと焼き」と呼ばれる、伊豆地方のちょっとした名物なのだ。温かそうなのにひかれてひと皿2つ入りを買い求めると、「これをたっぷりのせて食べるとうまいよ」と、焼けた芋をひっくり返しながら親父さんが勧めてくれる。指差した先の皿には、これまた伊豆の名物である、わさび漬けとワサビ味噌。それぞれをたっぷりのせてから、わさび漬けをのせた芋に醤油をちょっとたらして、熱々のうちに頂く。皮の部分をキュッと押すと、ぴょっと芋が飛び出してくる。ねっとり、ほくほくした芋の食感に、ピリッとしたワサビの風味が好対照。ワサビ味噌には刻んだワサビの茎が入っていて、甘めの味噌が芋の甘みをひきたてるようだ。一方、わさび漬けはしゃっきりと爽快、芋のもったりした感じが際立ってくるのが面白い。

 つきたての餅と熱々の里芋でお昼ごはん代わりとして、引き続きイベントのはしごに出かけた。宿泊施設のそばにある大クスノキで行われているのは何と、木登り体験。ロッククライミングの技術を応用して、ロープで空中をするすると登っていくもので、面白そうだがこの寒空でこの体重で? やって、旅先でどっかの筋でも違えたら大変だ。体験は子供たちに任せ、自分はお手伝いに徹することにする。ヘルメットとサドルのサポーターを装着したら準備完了、枝からぶらさがった専用のロープにとりついて、いざロープで木登りに挑戦だ。数本のロープは、何箇所かが特殊な結び目でつながっていて、足をかける輪状のひもを下にぐっと踏み込むとメインのロープに沿って体がグッと上昇、ぶら下がる体を支える結び目をそれに合わせてちょっと上にずらし、を繰り返して少しずつ登っていく仕組みだ。息子は自分でぐいぐいと登り、自分は娘の輪状のひもを踏み込む手伝いをすると、すぐに木の中ほどまで上がっていく。高いところは弱い自分に対して、ゆらゆらゆれても全く怖がらず、ご機嫌の様子である。

 クスノキはホテルの敷地の高台に生えているため、木のたもとからも周辺の森一帯と遠くに富士山も見渡せる絶景である。ただし高台に位置する分寒風の通りもよく、ロープを登っている人たちは体が温まるのだろうが見ている方はガタガタ震えるほど冷え込みがきつい。焚き火の脇で暖をとっていたら、「よかったらどうぞ、温まりますよ」とインストラクターが何か差し入れてくれた。手にしているのは小粒のみかんで、受け取ろうと手を伸ばしたら何と、ポンと焚き火の中へと入れてしまった。軽くあぶったところで取り出したのを渡されると、オレンジ色の小玉のが手の中で暖かい。旅のお供の冷凍みかんなら聞いたことがあるけれど、温いみかん、というのも何だか不思議な感じである。

 インストラクターによると、焚き火で2、3分ほど軽くあぶり、ほんのり温まった頃が食べごろとのこと。焼きたてホカホカのみかんの皮をむき、冷めないうちに? ひと房。すると熱を加えることで水分と酸味がとぶため、甘みがグッと凝縮されている。身もグッと詰まり、たとえればアプリコットのような感じだろうか。ちなみに「焼きみかん」について調べてみたところ、東北地方などでは普通にみかんを焼いて食べたり、旧正月に正月飾りを焼く「どんど焼き」の焚き火に入れて焼いたみかんを食べる風習があったりと、それなりにみかんを焼いて食べる習慣がある地域は存在するようである。地方によっては、体が温まる上にビタミンCが豊富だから風邪にいいとも言われており、確かにこの寒さの中で食べると体によさそうにも感じてしまう。隠れた伊豆の名物… かどうかは定かではなく(笑)、このインストラクターが寒い時期にロッククライミングをするときに焚き火でつくって食べる、仲間うちの食べ物、といったところだろう。

 焼きみかんのおかげで体は少々温まったが、寒風がビュンビュン吹き抜ける丘に立っているとやはり、寒いことは寒い。ようやく子供たちもロープから降りてきたことだし、この後は温泉プールの「ぷーろ」にでも行ってゆっくり温まるか。ロープで木登りは体にキツイけど、温泉プールで軽く泳ぐぐらいなら、正月休みで食べ続け、飲み続けの体、というかお腹にいい運動になりそうだ。(2007年1月3日食記)


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