ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん55…鹿沢温泉 『休暇村鹿沢高原』の、薬膳料理と嬬恋キャベツうどん

2006年08月19日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 長野新幹線の上田駅からクルマで1時間ほど。長野県と群馬県の県境に位置する鹿沢温泉は、国民保養温泉にも指定されている由緒ある温泉である。この日宿泊する『休暇村鹿沢高原』は、温泉街からはちょっと外れた高台にある1軒宿で、広大な敷地には遊歩道やキャンプ場など様々な施設が揃った、公共の宿ながらもリゾートホテル並みの設備を誇っている。15時ごろにチェックインして旅行マスコミ関連の会議に参加して、森の中の露天風呂でひと息。現地の方々との懇親会では、標高1500メートルという高原の宿ならではの山の味覚を存分に楽しむことにしよう。

 山の湯だから山菜やキノコ、いのししといった料理を想像していたところ、卓に向かって目に入ったのは、それらに混じって置かれた大柄の造りだ。乾杯の後に、さっそく紅色が鮮やかな身に箸をのばしてまずは数切れ。トロリとよく脂がのっていて、川魚特有のくせがない濃厚な味わい、マグロやサーモンといった海の魚に匹敵する旨味と脂の強さに驚いてしまう。名前を尋ねると「ギンヒカリ」とのこと。見ての通り、体が銀色に輝くことでその名がつき、身が締まり脂の風味のよい洗練された味という。群馬県では「幻の最高級ニジマス」とまで称され、コストの上でも生産者が限られた、貴重な魚だそうである。

 取材でよくお世話になる休暇村は、料理は基本的にバイキングである。「うちの自慢のバイキングも、ぜひどうぞ」と宿の方に勧められ、懇親会用の席から宿泊客が料理をとっているコーナーと足を伸ばしてみることに。30種ほどが並ぶ中、新じゃがのサラダやタケノコ土佐煮、大和豚と水菜のサラダなど、地元嬬恋村の高原野菜を使った料理がさすがに豊富だ。そして興味深いのは、薬膳バイキングは品数が充実していること。調理長の石井氏は薬膳調理指導員の資格を持ち、いい素材を使った体にいい料理をとり揃えている。説明書きによると、里芋のクルミ味噌和えは、老化防止にいい里芋と若返りに効果があるクルミをふんだんに使っているとある。ほか山菜の五味子酢あえは順肺や五臓を養う効果が、蕗の蜂蜜煮は胃を補い気を養う効果があるとのこと。スタミナが付くのはもつ煮、杏酢鶏で、懇親会の料理も品数豊富だがいくらか頂いていこう。

 そして嬬恋特産の高原野菜といえば、筆頭に挙げられるのがキャベツだ。少し前のNHKの朝の連ドラ「ファイト」で、パノラマライン沿いに広がるキャベツ畑を覚えている方もいるのでは。嬬恋村は標高800~1400メートルの高冷地で、冷涼で昼夜の気温差が大きく、キャベツの生育に適した地という。バイキングのサラダのキャベツもシャキシャキと歯ごたえ良く、甘味もたっぷり。薬膳料理同様、体の調子を整えるビタミンCなどのビタミン類も豊富だ。宿の方によると、この時期の嬬恋地区は日中が27~8度、夜は6~7度と寒暖の差が激しく、おかげでキャベツの甘味がしっかりと出るという。キャベツの収穫期は7月で、この時期は夜中の3時ごろから収穫をはじめ、貯蔵庫にしまう終了まで昼前ぐらいまでかかるとか。道の駅ほか、街道沿いの売店ではひとつ100円ぐらい、安いときには何と50円で売っているというから、首都圏の野菜の高騰期には信じられない話である。

 産地だけに、嬬恋の高原キャベツをつかった名物料理があるかと思いきや、国道沿いの食堂やホテルのレストランでキャベツの千切り食べ放題などやっていたり、ギョーザの具用にメーカーに卸しているほか、地元で特にキャベツを使った名物料理はないという。「でも、これはうちのレストランで結構好評なんですよ」と、締めに出てきたのはキャベツの葉で何かをくるんだ料理だ。大柄なロールキャベツかな、と葉を開いてみると、中には何と、うどん。その名もそのままなこの「キャベツうどん」、嬬恋産のキャベツに加え、麺は良質の水で打った嬬恋産の手打ちうどん、さらに具は地元の山菜や大和豚と、嬬恋の味を凝縮した麺料理だ。葉からかじると瑞々しく甘く、腰のある麺と意外に相性がいい。さっぱりしていて、うどんというよりもサラダを頂いているような感じである。

 今日は本格薬膳に高原キャベツを味わって高原の湯にゆったり浸かり、明日は朝から山の斜面を歩き回って山菜取りの予定。国民保養温泉らしく、鹿沢温泉の旅は内から外から健康志向満載である。(2006年6月11日食記)


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