松江・宍道湖七珍てくてくさんぽの締めに、味わいに訪れたお店は、駅に近い御手船場町にあるこちら。松葉ガニ、ノドグロ、島根和牛など、地産の食材を用いた日本料理を味わうことができる。店内の生け簀と水槽を囲むようにカウンターが配されており、魚介の鮮度は抜群。奥の調理場は半オープンで、料理人の包丁捌きをちらりと覗くことができる。
こちらの売りの一つが、宍道湖七珍を通年提供できること。頭文字から「相撲足腰」と覚える、スズキ、モロゲ、ウナギ、アマサギ、シラウオ、コイ、シジミを、すべて一度に味わえるのだ。ランチ限定の「宍道湖七珍せいろ膳」は、蒸し器によそったご飯の上に、食材に合わせた下調理をした七珍をのせて蒸したもの。蓋を開けるとバッと湯気が立ち、とりどりの魚介が品よく並んでいる。
椀によそい、七珍それぞれを散らした、まずは一杯。シジミは醤油ベースで酒煎りしてあり、粒が大きい分、味が強く滋味あふれる食べ応え。塩焼きのスズキは白味が瑞々しく、醤油で芝煮したエビは小ぶりながらパリパリの香ばしさ。白醤油焼きのウナギは脂ほどほどで身が締まりがよく、アマサギは濃いめの有馬煮で甘い中で身がホクホク。醤油でヅケにした白魚は白身の芳醇な旨みが広がり、鯉は南蛮漬けでほのかな酸味が身の味を引き出している。
この七珍、季節的・資源量的な事情で、実はすべてを同時期に味わうことは難しい。それをこちらでは地場産に組み合わせ、質的に優れたものを選び他所から揃えて提供している。この日の宍道湖産はシジミ、スズキのほか、希少な天然物のウナギに白魚。ほかは鯉は大山鯉、アマサギは諏訪湖産、エビは秋口は宍道湖産のモロゲエビを提供しているが、その他の時期は国産の手長エビを使っているという。
七珍の中でも、漁期や漁獲量が管理され資源量が比較的安定しているシジミは、七珍の中でも看板的な魚介。椀のタネもシジミで、小粒ながら汁がほんのり白濁しており、たっぷりのネギにといけば体に染み入るのが実感できる。夜の営業ではスズキ、白魚、ウナギ、シジミをだしで煮立てる小鍋や、手長エビの唐揚げ、スズキの奉書焼き、白魚の卵とじなど、それぞれの一品料理も充実。市内・李白酒造の華のある甘さの地酒「李白」月下独酌を合わせつつ、七珍の実力を楽しむのもよさそうだ。