ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ラーメンちゃんneoの、とんてき@四日市

2020年07月18日 | 旅で出会った食メモ
四日市といえばコンビナート、工場労働者が行き交う活力ある街のイメージがある。そんな環境からか、ご当地料理の「とんてき」はまさに、スタミナ補給源らしいローカルごはん。厚切り豚肉をジャッと炒めて甘辛いタレにからめ、丼飯とともにかっ込むという、豪快かつ元気モリモリになること請け合いの逸品といえる。

この店のは富士山盛りのキャベツの麓に末広がりの豚肉がドン、と鎮座。切れてないのは切り分けでなく火の通りを早くするのが目的だからで、手のひら状の見た目から「グローブ焼き」の別名もある。引きちぎった肉にゴロゴロのニンニクをのせ、甘めのタレにごってり絡めてから、ガシガシかみしめ飯をワシワシ。ズンズン攻め込んでくるごとに、力がみなぎるかのよう。キャベツの山がバランス的に嬉しく、ザクザク崩していけばなかなかヘルシー。

トンテキのタレは店のオリジナルで、余った分を一回だけおかわり可のキャベツにからめ、残さずいただいた。このタレを使った太い蒸し麺のやきそばが、とんてきのテイストが近い締め麺だ。具もキャベツに豚バラで、コンテンツが同じ。ともあれ明日のハードな町歩きも、これで何のその、である。

魚万の揚げかまぼこ@奈良・餅飯殿

2020年07月18日 | 旅で出会った食メモ
奈良町から餅飯殿のアーケード商店街「もちいどのセンター街」を歩いていると、通りの中ほどで店頭にかまぼこやさつま揚げを並べる店に出くわした。どれも串を打ってあり、テイクアウトして食べ歩きできるらしい。店内を覗くと、ほかにも様々なタネを使った揚げかまぼこが揃っており、いくつか選んでみることにした。エビやゲソやタコなどのほか、チーズやキムチにポテトといった、魚縛りでない今風のもある。

白壁商家風の店構えに「魚万」とあるこの店、奈良の町とのゆかりが意外に深い。創業は明治34年と、餅飯殿の界隈では老舗の部類に入る。以来、海のない奈良に魚を提供すべく、薩摩揚げや天ぷらなどを扱い続けて110年あまり。界隈の普段使いの客を中心とした、町の揚げかまぼこ屋として根付いている。由緒書きによると、鮮魚を練り製品の形や味に変えることで「魚の命を移し替える」とあり、魚を特別な食材と捉える当地の思いが伝わってくる。

目移りする中からイワシ団子にジャコ天と、古都らしくゆば巻の三種を選び、猿沢池に出てベンチでかじりついてみる。ジャコ天はすり身の中から、やや大振りのジャコがたっぷり顔を出した。形になるぐらい成長した「かえりちりめん」が練り込まれており、弾力あるすり身の甘さとジャコの香ばしい塩っ気が、魚の天ぷららしい。イワシ団子はすり身が柔らかく、ゴボウの土の香りが強靭。湯葉巻はパリッ、シコッとの歯応えからグリーンピースがハイカラな、和洋の折衷が楽しい。

池越しには興福寺の五重塔がそびえるのが望め、かじり眺めながら先ほどの由緒書きを思い返してみる。鮮魚を練り物に加工することは殺生の業を背負うことではなく、人の命となる美味で栄養ある形へと転生させること、なんて説法が浮かべば、普通の揚げかまぼこがいかにも仏教都市らしい食に思えてきたりして。

TABI Coffee Roasterのアイスコーヒー@奈良・椿井町

2020年07月18日 | 旅で出会った食メモ
奈良市街で唯一の市場、かつ相当レトロなアーケードの中程に、まるでここだけ時代も空間も別世界のような、明るく開けた雰囲気のカフェがある。店内の一角ではロースターがいい香りを出しており、焙煎した豆を販売するほかテイクアウトでいただくこともできる。

カウンター下の黒板にびっしり書かれた南米やアフリカ産の豆から選べ、ご主人の勧めで店名を冠した「TABIブレンド」のアイスに。ハードとマイルドも選べ、朝の目覚め用にマイルドにして、店頭の椅子に腰掛けていただいた。淡目の見た目通りスッと入る軽さで、香りも苦味も尖りすぎず程よい。焙煎する際は状態の悪い豆を手作業で選り分け、温度管理も徹底しているからこその、雑味のない味わいである。

ちなみに名前のTABIは「旅」と、ご主人の苗字をかけているそう。アーケードの通りや、背後の五社大神の社を見ながら、ちょっと不思議な空間を旅する気分の、スペシャリティコーヒーがオススメだ。