ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん…奈良・今井町 『ハックベリー』の、ダッチベイビーホワイトソース&オニオン

2020年07月16日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
今井町の入り口、蘇武橋たもとの榎を望んで、築約150年ほどの古民家をリノベーションしたカフェが建つ。ハックベリーの名の由来は、その榎から。外見は今井町にある一般的な町家のようだが、中に入ると店内は天井が高く、客席は吹き抜け3層構造になっている。和の場所柄にしては内装は欧風のしゃれた雰囲気で、界隈の女性や若い人のたまり場のよう。仕事や学校についての日常な会話が、店内で盛り上がっている。

店内はさらっと埋まっており、パインツリー製の階段を登り、三層の最上階の吹き抜け寄りの席へと通された。アンティークなテーブルふた席だけの隠れ屋風な空間で、天井にはファンが回り、直下には古民家の梁越しにフロアの客席を見下ろす。古書が並ぶ書棚の隣に小窓があり、今井町の白壁の町屋も望める展望席だ。散策で乾いた喉に、まずはコロナビールをオーダー。ライムを差し込むと炭酸が立ち上り、ヴィンテージもののランプにほのかに照らされている。

カフェタイムのフードは、「ダッチベイビー」というドイツ風のパンケーキが中心だ。スイーツ系のほかブランチ向けも3種あり、ホワイトソース&ベーコンをオーダーしたら熱々がココットのまま出された。イタリア製ベーコンの角切りが塩味が効きジューシー、玉ネギとチーズに絡めていただけばグラタン風になり、遅いお昼にちょうどいいボリュームだ。器になっているパンケーキは、中を食べ終えるとちょうどしっとり、ソースが染み、ほのかな甘さが食事の締めに嬉しい。

ビアグラスで出されたアイスコーヒーをいただきながら、熱々の料理を食べた後にクールダウン。今井町では珍しい、ディナーやバータイムも営業している店で、次回は午後遅めの今井町散策から夕刻に一杯、の流れで訪れてみたくなる、伝建地区によく似合うローカルごはんである。

ビジネス観光ホテル河合@大和八木

2020年07月16日 | 宿&銭湯・立ち寄り湯
このたびの宿は、駅から徒歩5分ほどのこちら。アプローチが独特で、白壁板塀の街並みをゆき、案内板によると恵比寿神社の境内を突っ切るとある。ホテルの前には、平城宮朱雀門から飛鳥、吉野へ続く「下ツ道」という古道が通り、古い町家が構え今井町に匹敵する町並み風景である。

ビジネス観光とあるがいわゆる商用宿で、家具や洗面台が家庭で使うような市販品と庶民的な感じ。アウトバスの風呂もビジネスのユニットと、必要最小限な感じがした。清潔感があり、居心地は良い。

小林豆腐店で買った刺身を部屋で食べたいと、皿と包丁と醤油も借りられた。ロビーの閲覧本が「ムー」だったのが、古墳など古代史のミステリースポットが多いこのエリアならでは?

今井町てくてくさんぽ8

2020年07月16日 | てくてくさんぽ・取材紀行
最後は称念寺から御堂筋を西へ向かう。「紙屋」の屋号で肥料・綿・油を扱い金融業も営んだ豪商・豊田家の町家と、骨董美術品を収蔵した記念館を過ぎ、右へ折れると左に白壁沿いの路地がかなり長く続く。左側はずっと今西家の屋敷で、路地を抜け左に回り込んだところに玄関が、さらに進み復元された環濠を渡り西口門跡から振り返ると、入母屋造りの二重破風が城郭を思わせる外観が、掘越しにそびえるのが望めた。

今西家は大坂夏の陣の際に街を守った功績から、「今井の西の家」より家名がついたとされる。今井町の惣年寄筆頭をつとめた名家で、八つ棟造りとよばれる複雑な形状の屋根、司法権を持っていたため邸内にある白州、日本最古と言われる帳台構えなど、日本の町家建築史上貴重な造りが多数残る。見学は申込制のため外観を眺めるにとどまるが、掘越しの眺めだけでもその豪壮さは充分感じられた。

付近の環濠は、かつて今井町の周囲を巡っていたものを一部復元してある。幅は11mほど、自営のほか町内からの排水や遊水池としても使われ、この今井西環濠広場付近が土塁や西口門への橋などの雰囲気が、当時を伝えている。これで町内散策は、ほぼ終了。本町筋を引き返し、北尊坊通りに出て蘇武橋の出口へ向かいましょう。

今井町てくてくさんぽ7

2020年07月16日 | てくてくさんぽ・取材紀行
本町筋から今井まちや館の先を南へ折れると、白壁に挟まれた小路の先に入母屋づくりの櫓が見える。浄土真宗本願寺派、大和五ヶ所御坊のひとつに数えられる、称念寺の太鼓楼である。創建は織田信長の治世の頃、本願寺の一家衆だった今井兵部卿豊寿が構えた道場が起源で、今井町の町名の由来もこの今井兵部による。住職は代々、今井家が務めており、今井町はこの称念寺の寺内町として発展してきた歴史がある。

太鼓楼の右に表門があり、くぐった正面に庫裏と客殿、右手に大規模な入母屋本瓦葺の本堂が控える。表門の横には、明治10年に天皇の畝傍御陵行幸のとき行在所になったことを記す石柱も立ち、その格式を窺わせる。筋向かいには中橋家、その先には明治創業の醤油蔵・恒岡醤油の店舗も。店頭にも見られる、吉野杉の仕込み桶を用いた長期熟成が特徴で、かなり濃厚な味わいなのだとか。先ほど買った小林豆腐店の、刺身こんにゃくに合いそうだ。

最後は西の外れの、豪商宅を眺めにいきましょう。

今井町てくてくさんぽ6

2020年07月16日 | てくてくさんぽ・取材紀行
本町筋にある今井まちや館は、今井町の町家の代表的なつくりを学べる施設である。1階建てに見えながら2階がある「つし二階」、漆喰塀に設けられた虫籠窓、通り土間と店の間、2列6室の基本的な間取り、土間の上に設けられた煙取りの窓など、これまで見てきた文化財民家のつくりを、町歩きの後半で改めて復習できる。

またこの町家では「帳台構え」という、家長の部屋の構造が特徴的だ。奥の真ん中の間の敷居が一段高くなっていて、そこが上の者の場所であることが、見るからに分かる。座敷の6間を一巡して、通り土間を裏庭まで往復して、今井町の町家を体感でも確認しておく。

このあとは、寺内町の核となった寺も見ておきましょう。