では、少しだけ朝散歩したら、東京へ帰りましょうか。
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那珂湊さんぽのごはんはご当地グルメということで、那珂湊焼きそばのお店へ。焼きそばといえばグルメイベントで得票しやすく、後発のご当地食にありがちだが、これは50年以上の歴史を持つ、地元の漁師にも食べ続けられてきたローカル焼きそば。魚の街として観光客が殺到するはるか前から、当地に根付いた食なのである。市街では「那珂湊焼きそばのれん会」に加盟した12店で提供しており、「喰い道楽すみよし」は製麺所とともにこの焼きそばを考案したとされる一軒だ。
中で450円、大でも550円の値段も嬉しく、大とサイドに茨城のローカル魚介・アンコウの唐揚げも注文した。大盛りの麺は見た目がかなり白っぽく、ズッといくとやわっとしたアタリが何とも穏やか。同じ蒸し麺の富士宮焼きそばがグイグイ腰がある硬派なのに比べ、こちらは荒っぽい漁師町ながらナヨッとしとやかな麺である。手延べ製法による太麺を高温高圧で蒸した「手延べせいろ蒸し麺」が那珂湊焼きそばの特徴で、この店では蒸す際にとんこつスープを差し水にしているとのこと。色の割に、味がしっかりついている訳だ。
さらに味の秘訣として、ここではラードを麺にからませているそうで、焼きそばにつきもののソースはシャバシャバに薄めのが底にサッと敷かれている程度。麺がかなり濃厚に仕上がっているので、中濃ソースなど使うと辛過ぎてしまうそうである。具はよく見るとキャベツのみ、紅生姜を混ぜ込んでいるのが珍しく、たっぷりの青のりとともに薬味が主役を張るのもまた、独特だ。麺本来の味を楽しむ日本人の味覚向けの焼きそば、といえなくもないか。
アンコウはフリッターに揚げてあり、衣が軽やかでサクサクといける。タネのアンコウはまだ走りだけに、身が締まりグイグイと挑発してくる、ストロングスタイルの白身である。焼きそばともどもビールとの相性もよく、さんぽの締めの一献にはもってこい。魚どころとはまた違った表情の那珂湊が、しっかり見えてきたてくてくさんぽである。