ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

日々是好食…味を奏でる手間と時間

2013年08月06日 | ◆日々是好食
手間と時間は味のうち、とは言ったもので、それぞれかけた分だけきちんと味に反映される。あとひと煮込み、もうひと蒸し。言葉では簡単に聞こえるが、そのためにかかる人の手は結構なものだったりする。長時間に渡り火の番をしたり、ポイントを見切るため付きっきりになったり。特殊な調理技術や高価な調味料にも、勝るとも劣らない。これらをかけることが、実に大切な「味付け」になるのだ。

中華料理で定番の東坡肉も、手間と時間のかけ方が決め手の一品だ。皮付きの豚バラブロック肉を、醤油や酒のタレに浸して煮込む。ただそれだけ、というなかれ。皮の表面をあぶって毛を焼き切ったり、ゆでる前に煮崩れを防ぐために揚げたり、蒸して余分な脂を落としたりと、下ごしらえの手間はあれこれとかかる。そして火加減に気をつけながら、じっくり蒸すこと2時間。ひたすら側についていることが、この料理の一番の味の秘訣なのだ。

飴色の皮がとろけ、コラーゲンが舌を柔らかく包み込む。ホクホクに煮えたバラ肉が、ホロリとほぐれる。さらに中国醤油と八角の、まろやかでアジアチックな味わい。これらが渾然一体となり、まさに食感と味と香りの三重奏だ。東坡肉にかける手間と時間は、いわばその奏で手といえるのではなかろうか。