ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはんbyFb…富山 『富山湾鮨』の、湾内の漁獲いろいろ

2013年03月21日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 立山連峰から下って富山平野へ、さらにそのまま富山湾内へと歩いていったとすると、海岸からいきなり急斜面を下り、さらに日本海を目指し谷筋を深く降りて行くことになる。海水がないとしたら、山脈あり絶壁あり大峡谷ありと、まるで北アルプスからの地形がそのまま、海の中へと続いているような地形らしい。

 山岳でも頂上付近と5合目、尾根と谷間では、気温も気圧も風力も異なるように、富山湾の海底の環境も、場所や深度ごとにずいぶん変わる。加えて日本海で交錯する暖流と寒流が能登半島にぶつかり跳ね返り、この地形の湾内で嵐や吹雪のごとく、複雑な流れとなる。おかげで潮の速さに海水温、それによる餌の量などが様々な環境が生じ、棲む魚介も多彩になる。豊饒な富山湾は、海底版の北アルプス的な地形と気候ならぬ海流の賜物、とまで言うとオーバーだろうか。

 昨日の富山の魚介PRイベントでいただいた「富山湾鮨」は、そんな湾内各所で漁獲された、冬が旬のネタが4カン並んだ。バイ貝は深さ200〜1000メートルの海底に棲息する、底引き網の獲物。コリコリの歯ごたえに潮の香りがパッと咲き、深海の重鎮的な安定感ある味。白エビは深さ300メートルの中層を、小型の底引き網で漁獲。昆布締めにしてあり、ねっとり甘みが爽やかな「海の宝石」とも称される気品ある味だ。

 そしてブランド魚介の氷見寒ブリは、目の前で解体したてのをすぐに握った、贅沢な一品。冬の日本海の荒波にもまれ回遊してきたのを、定置網の「大敷網」で漁獲する。赤身は身が締まり瑞々しくシコシコ、トロは産卵前だからたっぷり脂がのり、溶けるように激甘で涙が出るうまさである。

 どのネタも総じて、雑味のないスッキリした味わいなのは、富山湾の水質の良さもあるという。立山連峰の良質の雪解け水が、湾内に河川から流れ込んだり伏流水となっているそうで、山岳に例えれば澄んで非汚染の空気の中にいるようなものか。最後まで北アルプスの環境が思い浮かんでくる、海ながら山国な富山湾の鮨だった。