ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん76…人形町・甘酒横丁  『双葉』の、熱々の甘酒

2007年01月12日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 修善寺でのお正月旅行を終え、翌日は娘とふたりで留守番の予定である。寝坊して起き出して新聞をパラパラとめくっていると、イベントガイドの面の初詣や新春ウォーキングといった情報が目に入ってきた。今日は、自身の冬休みの最終日。天気も冬の澄み切った青空が広がっていて、旅行後でお疲れとはいえ家に閉じこもっているのは少々もったいない。ちょっと遅めの初詣、ということで、娘と七福神めぐりにでも出かけてみるか。お寺や神社におまいりに行くよ、と誘うと、お散歩だ、と大喜びの様子だ。初詣って何だか知っているのか分からないけれど、ぶらぶら歩いて、どっかでおやつでも食べて、最後の休日をのんびり過ごすことにしよう。

 新聞記事によると、この日はちょうど東京・日本橋の七福神めぐりが開催されており、最寄り駅から京急線と地下鉄を乗り継いで一本と出かけやすいよう。ささっと準備をして、娘と連れ立って自宅を後に、起点である日本橋三越本店へは11時半ごろに到着した。入口で地図と、途中の神社でスタンプを押す用紙をもらい、いざ七福神めぐりに出発である。受付では入れ替わり立ちかわり、主に中高年の夫婦やグループがやってきてはエントリーしている。歩き出すと、周囲には参加の証である黄色のリボンをつけた人たちだらけと、結構な人数が歩いているようだ。地図によると日本橋三越本店が協賛となっており、沿道の各所に案内板を持った職員が立っているので迷うことはない。

 日本橋七福神といっても、巡る社は主に人形町や水天宮周辺に点在していて、中央通りを渡り、昭和通りを過ぎて、一路人形町界隈を目指す。最初に訪れたのは福禄寿と弁財天を奉った小網神社、続いて布袋尊を奉る茶の木神社と、いずれもビルの谷間の小さな社。いかにも都心のど真ん中の寺社めぐり、といった感じである。参拝者が多い上にどの寺社も小さいため、お参りする人で長蛇の列が出来ており、ここに並んでいると時間がかかりそうだ。先は長いので娘とふたり、参拝の行列から離れてやや遠巻きに参拝していく。娘も殊勝に手を合わせており、一応初詣の趣旨は理解しているようだ。何をお祈りしているの、と聞いても、笑っているだけで答えない。

 3つめの社である水天宮は、安産祈願の社として聞いたことがある人も多いだろう。自分も、かつてうちの子供たちが生まれる際の安産祈願にも訪れたことがあり、あたりを歩いていると懐かしいような、一緒に歩く娘が当時はまだ家内のお腹の中だったなあ、と感慨深いような。久しぶりに参拝していくか、と新大橋通りの交差点まで来たところ、向かいに立つ社の周辺には大行列が出来ているではないか。七福神めぐりに加え、この日は安産祈願にご利益がある戌の日が重なっているため、かなりの参拝客でごった返しているようだ。そんな訳でここも社の裏口に回り、遠巻きに参拝して済ますことにした。娘に「ここは赤ちゃんが無事うまれる神様だよ」と教えてあげると、なにやら感心した上でまたお祈りをしている。

 七福神のうちちょうど半分弱を巡り終えたところで、時計を見るとお昼が近い。人形町界隈は味どころも数多く集まっており、鳥料理と親子丼で有名な「玉ひで」や、すき焼きにしゃぶしゃぶの「人形町今半」といった老舗、さらに洋食やエスニックなど、幅広いジャンルの店が軒を連ねている。休憩を兼ねてここらで昼ごはんでもいいのだが、まだ正月休みだったり、開いていても七福神めぐりの客で混雑していたりと、ぶらりと入れそうな店がなかなか見つからない。食事は七福神を巡り終えて、三越のお好み食堂あたりで済ますことにして、ここはお茶でもしてつなごうと、「甘酒横丁」へと足を伸ばしてみた。明治初期に、通りの入口に甘酒屋があったことから名がついたこの通り、沿道には駄菓子やせんべい、たい焼きといった店も見られ、水天宮への参拝客や、近くの明治座で観劇した人がちょっと休憩していくにはもってこいである。自分たちも名物のたい焼きをかじって休憩するか、と「柳屋」を目指したところ、あいにく年始で休業中の様子。

 それでは、と通りの名の由来となった甘酒を頂いて温まろうと、はす向かいの『双葉』へ立ち寄った。創業は明治40年、自家製の豆腐やがんもが売りの店で、店頭には大振りのがんもどきや、竹の器入りの竹豆腐、さらに天然にがりを使ったざる豆腐などが並ぶ。おみやげに魅力的だが、お目当ては甘酒。店頭の鍋から紙コップに柄杓で注いでもらう仕組みで、1杯頂いて店頭にあるベンチに腰を下ろした。熱々のうちにさっそく頂くと、これがガツンと強烈に甘い。特製の麹をつかっているため酒粕の粒々がねっとり、すすっているうちに冷え切ったからだが底からじわっと温まってくるのが分かる。半分ほど頂き、手ごろに冷めたところで娘に手渡すと、何だろう、といった様子で味を見ている様子。ちょっとすすったら満足したらしく、自分のカバンから持参したアメやクッキーを持ち出して、おやつタイムを始めている。

 寒い中の七福神めぐりで、温かく甘いものを頂いたところでホッとひと息。残りの社もがんばって巡ろう、と、娘を伴って再び歩き出す。娘も要領を得たのか、だんだんお祈りも上手になってきたよう。さっき水天宮で熱心に祈っていたので、もう一度何を祈っていたのか聞いたところ、「赤ちゃんの神様だから、弟か妹がほしい」。果たして祈願が叶うかどうかは、自分の責任重大… ってこと?(2007年1月4日食記)