米国の日本文学者、ドナルド・キーン博士が日本に帰化し、永住する、と発表しました。
88歳になって、なぜ?という気もしますが、本人はその気満々で、先般コロンビア大学で最終講義を済ませたとのことです。
能について論じたようです。
博士は、日本の国文学者が狭い専門から出ていかないのに対し、記紀万葉から現代文学まで、幅広く論じることができる碩学です。
日本文学の道を志すきっかけになったのは、古本屋で「源氏物語」の英訳本が、分厚いわりに安かったために購入し、これに感銘を受けてまずは日本語を学ぶところから始めたとか。
戦中は米軍の通訳官として働き、戦後は日本留学をして国文学への造詣を深め、それでも米国人であることを辞めず、コロンビア大学で教鞭をとってきました。
三島由紀夫、安部公房、石川淳らと親交が深く、大江健三郎とは不仲だったと聞きました。
ドナルド・キーン博士がこのタイミングで日本帰化を決意したのは、はっきり言いませんが、震災の影響があるのではないでしょうか。
世界中から放射能に汚染された国と見られている今、あえて高名な自分が日本人になり、情報発信すれば、諸外国の誤解を解き、被災した方々への慰めになるのではないか、と考えても不思議ではありません。
しかし博士は深く日本精神を身に付けたお方。
そんなことは恥ずかしくて言えないでしょう。
とりあえず東京に住んで執筆活動に励むそうですが、谷崎潤一郎のように、京都に移り住むかもしれませんね。
膨大な博士の著作の中から、読みやすいものを以下のとおり選んでみました。
老学者の知の歩みに触れてみてはいかがでしょう。
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百代の過客―日記にみる日本人 (上) (朝日選書 (259)) |
金関 寿夫 | |
朝日新聞社 |
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百代の過客―日記にみる日本人 (下) (朝日選書 (260)) |
金関 寿夫 | |
朝日新聞社 |
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果てしなく美しい日本 (講談社学術文庫) |
足立 康 | |
講談社 |
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日本人と日本文化 (中公文庫) |
Donald Keene | |
中央公論社 |
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日本人の美意識 (中公文庫) |
Donald Keene,金関 寿夫 | |
中央公論新社 |