我、週末の終わりを惜しみて酒に逃れたり。
酒、我をして一瞬の快楽に誘い入れ、心地よし。
我、明日の激務を忘れたることしばし。
能ふなら永遠に忘れたし。
しかれども我、そが瞬時のまやかしなるを知りたり。
知ってなほ、忘却を願ふは、我が魂の怠惰なりや。
そも、魂の怠惰とは何ぞ。
精神の運動とは何ぞ。
我、幼き日より、一つ、求めたり。
すなわち、美を求めむがための運動なり。
我、この世に堕ちたる所以のものは、美を求めむがための運動おこしめむと欲するために他ならず。
されど我、美を忘れて久しく、これぞ魂の怠惰なりや。
今生の我、何をもってか生きむ。
飯、食いたきがゆえか、酒飲みたきがゆえか、女抱きたきがゆえか、賭場荒らしたきがゆえか。
さあらず。
断じてさあらず。
我、今生にて求めたるは、美なり。
わけても言の葉の美なり。
我、何をか忘れむ。
我、初老の域に達し、我が天命を思い至るべし。
我、何をもって今生をわたるべきか。
思い至るべし、天命。
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