昨夜、貫井徳郎の「愚行録」を一気に読みました。
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愚行録 (創元推理文庫) |
貫井 徳郎 | |
東京創元社 |
読んでから知ったのですが、映画化されて、今、上映されているんだそうですね。
でも映像化が難しそうな小説でした。
都内で夫婦と幼い子供二人の一家4人が惨殺されるという事件が起きます。
捜査は行き詰っています。
あるライターが、殺された夫婦の知り合いを次々に訪ね、インタビューをするという形式で物語は進みます。
同僚、大学時代の友人などなど。
で、ハンサムでエリートサラリーマンの夫と、美人で賢い妻という、絵に描いたような理想の二人の人物像が、少しづつ、壊れていきます。
そしてなぜかところどころにはさまれる、妹が兄に語りかける場面。
暴力を振るう両親に育てられ、ゆがんでしまった妹の独白が不気味ですが、物語の結末にいたるまで、この独白と数々のインタビューがどう絡むのか明らかにされません。
愚行というのは、当初、殺された夫婦の若かりし頃のちょっとした意地悪や悪を指すのかと思わせますが、そんなはずもありません。
どんな境遇に育っても、人は誰でも愚行をおかさずにいられないのだと、物語の終盤に気付かされます。
いや、愚行の連続こそ、人生そのものなのかもしれません。
この小説をミステリーとして読むと、物足りないかもしれません。
ミステリーらしい拵えになっていませんから。
しかし人間の愚、人間の弱さを描いた文学作品として読めば、なかなかに趣き深いといえそうです。
時間があったら映画も見てみようかなと、思いました。