かつて日本では、臨終の際、辞世の歌や句、漢詩などを残してきましたね。
浅野の殿様や太閤殿下の辞世は、あまりに有名です
しかし、多くの大名や文人は事前にそれらの詩句を用意していたと思われます。そうでなければ、死の間際、息も絶え絶えに、あんな格好の良い文言は浮かびますまい。
一方、西洋では、そうしたしきたりがありません。そのため、かえって最後の言葉に真実味があります。それらを紹介した書物に「人間最後の言葉」があります。もっとも、西洋人の心にはよほどキリスト教の教えが染み付いているらしく、ほとんどがアーメンやら神様やらが出てくる言葉で、興味をそそりません。
私が面白いと思ったのは、19世紀フランスの女優・ラシェルの「日曜日に死ねて嬉しいわ。月曜日は憂鬱ですもの」と、西太后の「もうけして、女を摂政にしてシナの支配者にしてはいけません」というものです。
いずれも、真実味がありますね。片や、無邪気な女優。一方、権力の極致で人間を見てきた独裁者。
どうも女性のほうが正直なように思います。男は最後まで格好つけたがるというか、悟ったようなことを言いたがります。
さて、では私は、どんなことを言うのでしょう。
恐らく、江戸時代の禅坊主、仙義梵(せんがい ぎぼん)のように、「死にとうない」ではないかと思います。
人間最後の言葉 (ちくま文庫)
辞世のことば (中公新書)
最新の画像[もっと見る]