冥婚という風習をご存知でしょうか?
日本や中国、韓国などの東アジアに広く見られる、死者の結婚です。
結婚することなく亡くなった息子や娘のため、花嫁人形や花婿人形を寺に奉納して結婚した、と見なしたり、人形を使って実際に結婚式を行ったり、という儀式です。
東アジアでは祖霊信仰が盛んなので、結婚せず、子孫も残せなかった無念の思いを晴らそうということのようです。
しかし実態は、親や親族の癒しのためでしょう。
若くして死んだ者が、祖先になりたい、などという欲求を持っていたかどうかなんてわかりませんし。
仏壇にお供え物をするのと大して変わりません。
ただ、奉納された人形を見ると、なかなか迫力があります。
私は写真で見ただけですが、生前の写真と、一対の花婿・花嫁人形が並べられているのは、そこに強い親族の思いが込められているようで、その情の強さに、戦慄すら覚えます。
ひるがえって現代、アラサーだとかアラフォーだとか、婚活だとか負け犬だとか、ずいぶん結婚しない、あるいはできない妙齢の男女が増えています。
さらに、日本では認められていませんが、同性同士の結婚や、籍を入れない事実婚など、結婚にまつわる事態は多様化しています。昔「週末婚」というドラマがありました。単身赴任というのも、常識的な結婚の形態とは異なっています。
一対一の異性間における婚姻が、普遍的なスタイルではないことは、歴史や地域差を見れば明らかですから、個人の、またはカップルの意思によって、どのような形態を取ろうが自由です。
しかし、わが国を含めた東アジアの多くの地域で、死んでなお、常識的な結婚をさせてやりたい、という遺族の強い願望が今なお存在することは、現代の結婚事情を考えるうえで、案外重要なヒントを与えてくれるように思います。
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上記の本は、読み応えがあります。新しい発見があるでしょう。