T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

「風光るー藍染袴お匙帖」を読み終えて!ー1/2ー

2012-11-26 10:17:22 | 読書

 私にとって2作品目の藤原緋佐子の時代小説。

 医学館の教授方であった父・桂東湖の意志を継いで江戸でも珍しい女医者となった千鶴は藍染橋の袂に治療院を構え、弟子のお道と女中の老婆・お竹の三人暮らしで、藍染先生とも呼ばれている。東湖の親友で酔人の酒好きな薬学者で医者の酔楽先生が後見役で、その薬学の弟子で二百石取りの御家人の菊池求馬の助けを得て千鶴が江戸市中でおこる様々な難事件を解決していくといった物語のシリーズ第一弾。

 事件帖に人情話を盛り込んだ4話が収録されていて、各編とも、読み安く面白く読めた小説だった。

 頭の体操を兼ねて、心に残る文章部分をそのまま引用し(下線を引く)、その部分をポイントに私なりにあらすじを纏めた。

「蜻火(かげろひ)ー陽炎のこと。転じて、はかなく消えやすいものの譬え。-」

(自分の遠い記憶を重ねて死を求めているような母娘を引き取るが、本当の男親から殺される短命な育ての男親)

 千鶴のもとに、身元の分からない白骨が持ち込まれた。2年前に家族三人が神隠しにあった小間物屋の徳蔵か女房のものと思われるが、確たる証は無く、困り果てた南町同心の浦島亀之助が助けを求めてきたのだ。

 千鶴は長崎でシーボルト先生の教えを受けていて、内科と外科にも通じていたので、男の顔ということは分かるが、酔楽先生の、他の部分の骨と違って顔は骨が基本なので兎も角手探りでやれとの助言を受けて復顔術を試みることにした。

 酔楽先生の使いで菊池求馬が髑髏に塗る粘土を持ってきた。そして、徳蔵の幼馴染の忠助の家に案内してくれた。

 忠助の話によると、3年前、番頭の徳蔵は、得意先からの帰路、着崩れた女が幼い子を抱いて千鳥橋の上を行き来しているのとすれ違った。振り返ると、子をおろし手を引いてまるで幽霊があの世に向かって歩いているように見えて、徳蔵は遠い記憶の自分に重なったように感じ、母娘を引き取った。

 母親のおきちは、借金があるため外から女郎屋に通って春を売る半抱えの人だったが、徳蔵の母親が田舎で徳蔵の暖簾分けを待っていることも諦め、所帯を持った。子供のおあきちゃんも、おとっつあんとよく懐いていたとのことだった。

 忠助のお蔭で、証拠にもなり得る完全な徳蔵の髑髏が出来た。

 徳蔵と一緒に神隠しにあったと言われていたおきちを、向島で見かけたという話を聞いて探索していた亀之助が、おあきの父親である巳之助と一緒に住んでいることを知らせに来た。

 巳之助は高利貸しの取り立ての元締めをしていて、自分の子のおあきも大きくなったら吉原に売るつもりでいるほどの悪だった。

 求馬の支援で亀之助が巳之助を捕縛して分かったことは、巳之助が徳蔵を殺して徳蔵の財産を我がものにし、おきちを騙して引き取ったことだ。

 治療院でおきちは復元した徳蔵の顔を見た。何も知らなくてごめんなさい。おあきは一度も巳之助をおとっつあんと呼んだことはなく、あの子の父親はお前さん一人です。お前さんが許してくれるなら上総のあんたのおっかさんに会いに行って、あんたに貰った優しい心をおっかさんにお返しするつもりで孝行させてくださいと、泣き崩れた。

 おきちは、千鶴たちに礼を言い、おあきに、おばあちゃんに会いに行こうねと笑みを浮かべた。そのおきちを、徳蔵の復元した顔が静かに頷きながら見詰めているように見えた。

「花蝋燭」 (殺人の事実と赤子の親の名を明かさずに死んだ女)

 千鶴は小伝馬町の女牢の刑務医もしている。牢内で女の子を産み落としたお栄は、産後の肥立ちが悪く、すでに手遅れであった。

 お栄は昨年夏、銀六という遊び人を殺して自分で奉行所に出頭したのだ。

 お栄は花蝋燭で有名になった蝋燭問屋・三国屋で女中をしていて、実家から店への帰りに銀六に手込めにされそうになり杉の角材で銀六の頭を打ったのだという。

 吟味中に子を孕んでいることが分かり吟味は中断になり、誰の子だと何度訊ねても明かさなかった。

 千鶴はおふくと名付けられた赤ん坊を誰か預かる人がいないか、実家を訪ねた。

 老いた両親が金は三国屋から貰っているから育てると言うが、あまりの年齢なので、当分の間、千鶴が預かることにした。

 お栄の容態が急変したとの呼び出しがあった。

 先生、赤ちゃん。私の赤ちゃんとお栄は手を伸ばした。牢名主が赤子をお栄の顔に近づけた。お願い、この子を幸せにと、お栄は、おふくの手を握ったが、すぐにその腕を床に落とした。

 お栄が亡くなった後、女牢の名主から、先生以外に頼む人がいない、お栄は無実だから赤子の為にも何んとか調べてくれと懇願された。

 求馬たちも色々と動いてくれたが、目撃者や使った角材からも事実ははっきりしない。

 求馬は、お栄は亡くなり、銀六も死んでいるので、真実は闇の中だ、三国屋が腹を割って話してくれれば別だが、せっかく手に入れた主の座を手放すはずがないので諦めろと言うが、千鶴は女としても諦めるわけにはいかなかった。

 千鶴は三国屋の主人と直接話したくて出かけたが、商いの旅に出ていて留守だったので、治療室の特別の蝋燭を注文して店を後にした。

 お栄の父親が、孫の面倒をみてくれているお礼として、お栄が作ったものだと花蝋燭を持ってきて帰ったとのことを聞いた千鶴は、お栄さん、おふくちゃんに形見として持たせますからと目頭を押さえた。

 三国屋喜兵衛(与茂助)が治療院を訪ねて吃驚した。お栄と共に創った花蝋燭が灯っていたのだ。

 千鶴は、蝋材の買い付けで旅に出ていて何も知らない喜兵衛に、おふくが生まれた事、お栄がその赤子のいく末を案じて死んでいった事、お栄の気持ちを放っておけなくて自分が赤子を預かっている事を話して、お栄との関係などを尋ねた。

 拾われたお寺を15歳の時に一旗揚げようと家出し、途中知合った博打好きの銀六に、一度だけの旅人からの盗みを見られた。

 三国屋に奉公して手代になった時、納得させる蝋燭が出来たら養子にすると言われ、好きなお栄と共に毎夜試行錯誤して花蝋燭を作り、男女の仲にもなった。

 そんな時、銀六から昔の盗みのことで強請られ、そこへお栄が通りかかり、与茂助を助けようとして人質にされた。与茂助は隙を見て角材で銀六めがけて角材を振り下ろし、肩を打たれて転んだ銀六は角材の角で頭を打ち死んだ。

 お栄が、手込みにされたと自首すれば刑も軽くなり、二人の夢が実現すると言うので、お栄の気持に任せたのですが、私はずっと苦しんできましたと、白状した。そして、お栄、すまないと、蝋燭の前で肩を震わせた。

 千鶴には花蝋燭の火が一瞬輝いて見えた。そして、「いいのよ、与茂助さん。」と、お栄の声が聞こえるようでした。

 「まるでお嫁入りのようでございますこと。」駕籠を従え喜兵衛がおふくを迎えに来た姿を見てお竹が言った。出立を見送る千鶴たちの顔が揃っているなかで、千鶴はお栄の形見の花蝋燭を喜兵衛に渡した。

 

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