T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

「江戸の子守唄」を読み終えて!

2010-06-04 17:18:01 | 読書

平岩弓枝の「御宿かわせみ」シリーズ2の8編の短編捕物帖時代小説。

 他人の関係でなくなってから数年が流れ、かわせみの女主人るいと八丁堀与力の家の次男坊東吾がお互いに愛情を確かめ合い、絆を深めていくが、縁組の成立は困難な状況といった二人の忍ぶ恋を横糸に、江戸下町の四季の風物を織り交ぜながら描かれる人情味溢れる捕物帖。

江戸の子守唄

 喜三・鹿夫婦と幼子の文の親子が、かわせみに宿をとったが、数日して、お文を置き去りにして夫婦は夜逃げした。

 東吾は兄の義父の麻生源右衛門から兄嫁の妹の七重との縁談を進められ、早いうちに、るいのことを話そうとしたが、言いそびれ、かわせみへも行きそびれていた。

 一方、るいはお文をまるで我が子のように可愛がり、東吾と会えない寂しさを埋めようとしているようだった。

 源右衛門の還暦の祝いに出席した帰りに、七重の口から、東吾には将来を約束しているるいがいるので、二人の邪魔をしてはいけないと姉から言われたことを東吾に明かす。

 東吾はるいとお文を連れて呉服屋に行き、番頭の話からお文の母親お才と遇う。

 東吾は、源三郎から、お文はお鹿の実子で、お才に子が出来ず紅花屋から離縁されることを避けるため、お鹿から貰い受けて育てていたが、お鹿と一緒になった喜三がお才を強請った挙句にお文までさらったとの経緯を聞いた。

 喜三たちは捕らえられ、源三郎はお才が紅花屋に帰らず知らない土地でお文と過ごすというので、行き先などを世話してやり、るいは涙ぐんでお文を見送る。

お役者松

 東吾はるいと出かけた縁日の境内で、お役者松と呼ばれる擦り仲間と間違えられ、東吾の懐中に財布が投げ込まれた。

 財布の中に金の他に「こうきちを、かえしてほしければ、十両もって本所はぎでらに七日亥の刻、みかわやこうべえどの」といった脅迫状が入っていた。

 源三郎の調べで、深川に主人が三河屋幸兵衛、女房が後妻の久仁、倅が20歳になる幸吉という酒屋があり、幸吉は家出していることが判った。

 幸吉の生みの親おさんは芸者上がりで姑との仲が悪く、自分から去り状を貰って家を出てしまった。幸吉が乳呑児の時で、子守として奉公に来たのがお久仁だった。

 脅迫状に書かれている時刻にお久仁が出かけたが、相手は来なかった。

 その後、三河屋に泥棒が入り五十両盗まれた。幸吉がお久仁に無理を言って持ち出したのだ。

 お久仁は、幸兵衛の死が近いので幸吉を返して貰おうと、後をつけていくと、農家の離れに病気のおさんと幸吉がいた。

 おさんがお久仁憎しで出刃包丁でお久仁を突こうとした寸前に幸吉がお久仁を守った。おさんは直ぐに大川に飛び込んで死んでしまった。

 三河屋を出たおさんは又芸者をしていて惚れた男に貢ぐ金欲しさに幸吉を誘ったのだった。

迷子石

 江戸の町に連夜の辻斬りが出没する。東吾はその手口から武士ではなく刀の扱いに慣れたものの仕業と兄の通之進に自分の考えを話す。

 源三郎は通之進の指示で研師の佐吉に目を付けた。中年になってできた佐吉の一人娘のおすずが、目の不自由な女房おきよと浅草に出て迷子になった。

 おきよは迷子石の「おしゆる方」におすずのことがないか、通りかかったるいに尋ねた。

 十日ほどして、悪戯されて首を絞められ死んでいるおすずが見つかった。佐吉はおきよには内緒にして、青竹売りをしながら狂ったように犯人を探し回った。

 かわすみの近くで、おすずのことを佐吉に問い質したおきよは佐吉から斬られ怪我をした。

 いったん佐吉は逃げて再度かわせみに来ておきよを出せと言っているところに東吾が帰ってきて、佐吉は大川に飛び込んで逃げたが、その後、迷子石の前で死んでいた。

 おきよも佐吉がかわせみで騒ぎを起こしているときに、かわせみの部屋で息を引き取っていた。

 東吾は、佐吉の辻斬りのきっかけは、おすずの墓や永代供養などの金を売るためではなかったかと思うのだった。

幼なじみ

 かわせみの庭の手入れは、いつも植甚の職人の清太郎がしている。

 その清太郎に好意を寄せている娘が二人いて、一人は親方の娘のお糸、もう一人は清太郎と同じく親なしで同郷の幼馴染みのおてい、しかし、清太郎は固い男で自分から相手に対して気持を打ち明けたり手を握ることもない。

 るいが植甚の親方からお糸との縁談を清太郎に薦めてくれと頼まれ、そのことを清太郎に話すと、数日待ってくれとの返事だった。

 おていは清太郎がお糸と親密になっているのではないかとの心の不安から勤め先の主人といい仲になり、主人からの狂言を頼まれ、おていは清太郎に騙されて店の金三百両を清太郎に取られたと訴えた。

 清太郎は、自分がおていに示唆したのだと嘘の自白をした。おていは、清太郎の話を聞いてあたしをかばってくれたと泣いて詫びすべてを白状した。

 清太郎はお糸を諦め幼馴染みのおていのところへ帰る決心をした。

宵節句

 るいは琴の稽古に一緒に通った和代と再会する。和代には兄がいたが、頑固な性格から不祥事を侵し家を潰して浪人し、今は瓦屋丸八の用心棒をしているとのことだった。その兄の兵馬は東吾や源三郎と同門で突きの名手だった。

 その頃江戸の町に凶悪な押し込みが連続し、襲われた家はいずれも皆殺しにされ同じ鋭い突きで殺された者がいた。

 東吾と源三郎はるいから聞いた瓦屋を岡っ引に見張らせた。推測どおり動き出した。

 瓦屋の盗賊は親方の首領以下全員捕まえたが、兵馬は逃げて和代の家に現われた。東吾たちと争った後、最後は自分で腹を突いて死んだ。

 その翌々日、かわせみではるいが雛を飾って白酒を用意し、東吾が来るのを待っていた。

ほととぎす啼く

 かわせみが昔から油を買っている山崎屋の主人徳兵衛に奇妙な出来事が続いた。

 そのことを、手代の新吉が店が終わってかわせみの嘉助に相談に来た。新吉の話は、徳兵衛の味噌汁に異臭物が入っていた、また、徳兵衛が夜の揉み療治の帰りに大川に突き落とされた、しかし、徳兵衛は店のため表ざたにしないということだった。

 徳兵衛は遠縁からの養子で一人娘の女房お小夜とは20歳も違い、先代からの番頭の治助は新吉の父親で、徳兵衛は店の商いが自由にならない飾り物だった。

 新吉がかわせみに来ている間に、徳兵衛が揉み療治から帰ってきたら、庭で女房は気絶し治助は灯篭の下敷きになって死んでいたという事件が起こっていた。

 東吾は治助と新吉の持ち物を調べた。治助は50両をしまっていた。新吉の持ち物からはお小夜からの恋文が出てきた。

 東吾は徳兵衛に、治助が恋文をネタにお小夜を強請っていて反対に殺されたと騙し、一件落着したように見せかけた。

 徳兵衛が油断して揉み療治の家に行って金のことで言い争いをしているところを押さえられ白状した。揉み療治所の妹といい仲になり帳簿をごまかし金を貢いでいたところを治助に見つかり、三人で仕組んで治助を殺したとのことだった。

 その夜、東吾は菖蒲湯を浴びて夜明け近くまでるいと喋っていると、ほととぎすが啼いた。

七夕の客

 かわせみを開業して5年。毎年七夕の日に泊まり合わせる初老の女と若い男がいた。若い男は偽名のようで、今年はその時間に男だけが顔を見せた。

 東吾は兄から植木屋の岩吉が足を痛めているので、七夕の竹を取ってきてくれと頼まれる。

 岩吉は町の大店の相談役をしていることから、酒問屋三善屋の噂話をする。

 三善屋は先代が没した年に蔵の酒を腐らして小田原の材木問屋の用立てた金で他所から酒を仕入れその場を凌ぎ、後家となったお柳は次の年にその材木問屋に縁づいた。先代の身内たちは、お柳は10歳の倅新兵衛とは今後会うことにならないということにした。

 その後は、番頭の藤七が店の切り盛りをしてきたし、七夕の日に主人新兵衛が内緒で母親に会えるように図った。

 しかし、番頭の金遣いが急に荒くなり、吉原のお職を身請けして囲っている噂も出ていて、店の金を使い込んでいた。

 藤七は新兵衛が若いうちに殺し店を自由にしたいと思い、殺しがばれないようにお柳も殺そうと、女郎蜘蛛の松吉に金を渡した。東吾が偶然にもその場を目にしたのだ。

 松吉は品川の猪の松にお柳殺しを頼み、自分は新兵衛をやることにしたが、結果は失敗して捕まった。

 遅れてやってきた母は倅と5年ぶりに一つの部屋でしみじみと夜明けまで話をして、翌朝、倅が見送る中を旅たって行った。

王子の滝

 東吾がかわせみに色っぽい人妻おすずを連れてやってきた。10年ほど前に東吾を養子にといっていたこともあり、夫婦のことで相談に来たのだ。

 るいが焼きもちをやいている間に、そのおすずが王子の滝で殺された。

 おすずは蔵前の札差大和屋の内儀で家付娘であった。主人の伊平は旗本の次男坊で、おすずが確りしていて商いも自由にならなかった。

 伊平の実家の武部左京は四千両もの借金を大和屋にしており、妾の子供を養子にしたいとまで言っていた。

 おすずが借金の返済を強く求めるので、伊平は左京に相談しおすずを殺す気になった。おすすが妹の安産祈願に王子権現へ行くことを利用して王子で左京がおすずを殺した。

 事件の内容が明白になり、左京は切腹して自殺し、伊平も番屋に引き立てられた。

 

コメント
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