T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

「武家用心集」を読み終えて-2-!!

2010-03-24 09:15:46 | 読書

うつしみ(後添えとして強く行き続ける女の心意気)

 松枝は夫の小安平次郎と二人暮らしの安穏な日々を送っていたが、ある日、夫が捕縛されてから1ヵ月になり、落ち着かない日々を送っていたが、松枝は育ててくれた祖母の墓参りに出かけた。

 祖母・津南は祖父の後妻で父の実母ではなく松枝とも血が繋がっていない。松枝は実母の事も殆ど覚えてなく、継母との間に男の子が生まれたので、津南が母親代わりになった。

 津南は夫を亡くしてからも誰とも血の繋がりのない西村家の中心に居て、一家の精神的な柱だった。

 津南は、祖父の後妻に来るまで、津南の実兄の不始末で実子二人を残して離縁され、小身の実家では暮らせず、料亭での住み込みの仲居奉公に出た。

 津南は女将のように、老いても女一人の暮らしに困らない、男にも左右されない生活を作る事に努力していた。しかし、女将は女が汚れずに生きてゆくのは難しいし、世間も草々自由にはさせてくれない、見かけの涼しさと内に籠もる暑さは違うものですと言う。

 そんな中、郡奉行の西村宣左衛門から後妻にと乞われた。津南は断ったが、何度も申し入れがあり、後妻になることになった。

 宣左衛門は確りした優しい人で、姑と松枝の父がいたが、自分の思うようにやってみるといい、津南も一生の大半を家に縛られるのだからせめて家の中では自立した女でありたい、この一途な思いが彼女を力づけ、西村家を津南が待ち望んでいた平穏な家庭にしていった。

 夫と姑が亡くなり、松枝の父が当主になったが、何も変わらず、家を守るという生き甲斐は続き、その後も松枝を嫁に出すまで西村の家を護った。

 くよくよと人ばかり頼って心を悩ませる松枝は、津南の声が聞こえ、夫の実否が定まるまで待つしかなく、そのうえで万一の時は一人で生きてゆく事も考えなければならないとの覚悟をした。

向椿山(初恋を貫けずに苦しみつつ、もう一度やり直したいと願う女心)

 江戸から岩佐庄次郎が医術の勉強を終え帰ってきたが、迎えには叔父で師匠の良順と千秋がいただけで、美紗生の姿がなかった。

 美紗生は庄次郎と一緒に良順の家で診療などの手伝いをしていて、庄次郎の遊学が決まった時に16歳の美紗生と19歳の庄次郎は二人だけで夫婦の約束をしただけで互いに信じられない歳でもないので身の契りまではしなかった。

 庄次郎は遊学すると勉学に終われて約束した手紙も年1回ほどになっていた。

 帰国後に友人や良順から聞く美紗生の噂はあまりいい話ではなく、今は家に閉じこもっていると聞いていた。

 悩む思いの庄次郎に、思いがけず美紗生の母から病人として訪ねてほしいとの連絡があり、出かけたが、美紗生は別途訪ねるとのことだった。そして、2カ月ほどして美紗生が訪ねてきた。

 美紗生は、2年を過ぎるあたりから5年という月日が途方も長く思えるようになった。そのうちに縁談も次々に来て、何かを始めずにはいられない気持と庄次郎から本草学を学びたいなら生け花をやれと言われたこともあって華道にのめり込んでいった。

 先生の華道家も今日に思う人を残してきたと知ったとき、彼女は庄次郎が現われた気がした。女の深い情に触れて華道家も揺れたのだろう。二人は男女の仲になった。美紗生は身もごり尼寺に、華道家は子のことも知らず京に帰り、子供は流産したという。

 一度崩れてしまうと1日たりとも辛抱のならない気持で、まるで堪え性のない子供でしたと、美紗生は聞いてもらって嬉しかった、これで分かれたいと言う。

 庄次郎は、このまま責任のある病人を返すわけにはいかないと、小刻みに震えてためらう美紗生の腕を掴んで引っ立てるようにして道を歩き、1日でも早く診療してやり直そうと、躓きそうな美紗生を容赦のない力で支え自分の家に連れてゆく。

磯波(初恋の男を妹に奪われる運命に耐えて、別の男と一緒になる女の気持)

 奈津のとこに妹の五月がいつものように突然訪ねてきて、奈津の縁談を持ち込んできたが、奈津はあまり興味がなかった。

 五月の夫・直之進は父の門弟であり、奈津は直之進と夫婦になるものだと思っていた。だが、五月の積極的な性格が起因して、直之進は五月と夫婦になった。

 その直後のある日、直之進も奈津のことを忘れることができず一度だけ関係を持った。それから幾年も過ぎたが、奈津の心の中には、いまだに直之進がいた。

 奈津が入替えた茶を飲みながら、五月は、直之進の心の中にはいまだにお姉さんが住んでいるので直之進との夫婦間が回復できない状態になっている事を奈津に話す。

 五月が帰った後、奈津は何か一人の食事も作るのが億劫で何か淋しい気がし、この先ずっとあの方を思い続けて、いったい何になるだろうと思った。そんな気持になるのも、幸福とはいえない五月を見たせいかもしれなかったが、五月が持ってきた縁談相手と会ってみようかと考えていた。

(文章から姉妹の心の姿が理解し難く十分に纏めきれなかった。)

梅雨のなごり(いつか嫁ぎゆく娘の心構え)

 利枝の父、武兵衛は勘定方だが、最近、ひとり、帰りが遅い。新しい藩主を迎えるに当たって何やら仕事が立て込んでいるらしいが、母・つやは父の体を心配している。母の気がかりは利枝のものにもなっていた。

 ある日、いつものように利枝の家に来て、ちびちびと飲んでいる伯父の大手小市が、酔って帰ってきた兄の恭助を叱り飛ばした。

 藩の不正や怠慢を糾弾し腐敗を一掃して、財政を立て直すため、監察組が組織され、城の一室で警護のもの付いて、再吟味しているが、その中の一人に父が選ばれているのだ。身に覚えがある重役は戦々恐々として手段を選ばず監察に手を回し罪を逃れようとするだろうと言う。

 そして、恭助に酒を誰かに馳走になっていないかと尋ねる。恭助は中老の遠縁にあたる須田千之介がいて、暴漢に襲われたところを助けてもらい二両の借金をしている事を伝えた。

 小市は大事なことなので、自分が処置してやると言って、借金を返してきた。

 監察の仕事も終わり、役替えも進んで、父の仕事も一段落し加増も受けた。

 そんなある日、利枝は、街中で須田が小市に勝負を仕掛け須田は死亡した。小市は大目付に届け出にいった。

 利枝は急ぎ帰宅して、その事をつやに知らせる。

 つやは、小市は貧しい家に嫁いだ妹の事が心配で、ぶらりと家に来ていたので、今度の事も汚れ役を買って出た挙句、人を斬ってしまった、私達の用心が足りなかったのだと言う。

 利枝は、辛い時は父のように辛抱すればどうにかなるという気持と、用心を怠れば何時どうなるか知れないという気持があって、どちらも大切だが、母のように小さな気がかりを重ねてゆくのが、女の用心だろうかとも思うのだった。

 

 

 

 

 

 

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