スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王位戦&自由と必然性

2020-07-15 19:05:44 | 将棋
 一昨日と昨日,札幌で指された第61期王位戦七番勝負第二局。
 木村一基王位の先手で相掛かり。後手の藤井聡太七段の中盤での動きに無理があり,先手が優位に立って終盤戦に。
                                        
 後手が歩を打った局面。ここは☗2八馬と成香を取る手があり,それだと手数は伸びますが,現状の先手の優位は保持することができたでしょう。そういう勝ち方もあったとは思います
 実戦は☗4二銀と打っていきました。これだと☖同金☗6三馬☖同龍☗同香成までは必然。後手は☖4四角と受けました。角が動いたので先手は☗3一飛の王手。☖4一銀に☗2一飛成と桂馬を取りました。後手は☖6二歩。
                                        
 ここで☗7二成香と緩めておけば先手が勝てたと思います。実戦は後で緩めることになったのですが,緩めるならここがよかったということです。
 実戦は☗4六歩☖同銀と動かしておいて☗4四桂。これはおそらく桂馬を入手したところからの狙い筋だったのでしょう。☖6三歩と成香を取られて局面自体は先手の勝ちなのですが,ここからは混戦です。
 ☗4二桂成☖同玉で金を取って☗3四金。☖3二銀打に☗4四金☖同歩と角を取り☗3一角の王手。後手は☖5二玉と逃げました。
                                        
 ここで☗1一龍と香車を取って緩めたのですが,☖5三香が攻防兼備の一手。まだ混戦ですが局面自体は後手の勝ちになりました。
 第3図では☗4二金☖6二玉☗3二金で先手に勝ちが残っていました。また,☗3二龍☖同銀☗5三銀☖4三玉☗3二角成☖5四玉に☗6二銀不成という順も有力で,これは僕にはどちらが勝ちか判別がつきませんが,先手に勝ちがあった可能性はあったと思います。ただ☗4二金は重い攻めですし,☗3二龍は上に逃がすのでやりにくいでしょうから,ここで勝ちを逃したのは仕方がないかと思います。最大の勝敗の分かれ目は第2図の方だったのではないでしょうか。
 藤井七段が連勝。第三局は来月4日と5日です。

 スピノザが自由libertasの意味をそれまでの哲学の考え方からずらしたのに,本性essentiaに自由意志voluntas liberaが属することを認めなかったのは,自由の意味はずらしたけれど意志の意味をそれとは同じような仕方ではずらさなかったということです。厳密にいうと,スピノザは意志というのを,個々の意志作用volitioの総体であるとし,意志作用は観念ideaが観念において含んでいる限りでの肯定ないしは否定negatioといっていますので,意志の何たるかについても,それまでの哲学とは異なった仕方で解しているのは間違いありません。ただ,自由を第一部定義七のように解することによって,それが神の本性に属し得るものとしてしているのに対し,意志はそうではありませんから,自由についても意志についてもそれまでの哲学とは異なって解しているとしても,同じような仕方で意味をずらしたとはいえないのです。
 それまでの哲学では,自由と意志は切り離すことが難しい概念notioでした。というのも,自由というのは基本的に意志の自由というのを意味していたからです。神の本性に自由な意志が属するという考え方は,神の本性には意志が属し,そのゆえに神は自由であるというような意味合いをもっているのです。これに対していうなら,スピノザは自由という概念を意志という概念と結び付けることをやめ,必然性necessitasという概念と結び付けたのだといえます。このことは定義Definitioの内容から明白だといえるでしょう。そして神は本性の必然性によって働くagereものであるがゆえに,自由であると主張するようになりました。このことは第一部定理一七系二が,まさに系Corollariumとして第一部定理一七から帰結する事項であるということから分かるでしょう。つまりスピノザは,意志から自由を剥奪し,それを必然性に付与したのです。
 スピノザが,自由という概念を必然性に付与し直したのは,意志という概念と自由という概念を結び付けるのには好ましくない材料があったからです。そのためにスピノザは,意志についてはそれが神の本性に属するということはなかったのです。これは,神の本性の必然性からすべてのものが生じるというとき,それを神の自由な意志といい換えるのには不都合な理由があったという意味です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする