小暮満寿雄 Art Blog

ダジャレbotと間違われますが、本職は赤坂在住の画家です。作品の他お相撲、食やポリティカルな話も多し。右翼ではありません

「風立ちぬ」~思想は反戦、体質は好戦

2013-08-02 08:27:44 | Weblog
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タイトルで誤解しないでください。
映画は実に素晴らしかった!

さすがは宮崎駿監督です。

ネット上では鈴木プロデューサーの護憲発言や、宮崎監督の「慰安婦に謝罪すべき」という発言に対する攻撃が喧しく、見る前は色眼鏡で映画に接しそうでした。
それが実際に映画を見てみると、反戦思想を打ち出してる映画でも、戦争を肯定してる映画でもなく、単純に飛行機作りに情熱を燃やす技術者の物語でした。

特に背景の美しさは筆舌につくしがたい表現・・・

ただ、この人の作品。
破壊する場面や戦闘シーン、カタストロフィの表現が凄まじいんですよね。

インタビューで言ってることは完全に左巻き思想なんですけど、実際の映画に接すると、この人は戦争肯定者だと思われかねないほどであります。

宮崎監督はよく言われるように「矛盾の人」と呼ばれますが、たしかに普段言ってることと、作品があまりに違いすぎる。



宮崎監督はインタビューで、戦前に生まれていたら軍国少年になっていたろうと自分でも言っています。

だから最初は、左翼や右翼の中でリバーシブルになってる人がいるようなもの?
そう思っていましたが、作品を見ながら思ったことは巨匠宮崎駿はそんなレベルではないようです。

と言うか、そもそもアート、芸術作品というのは、最初に本人の体質ありきで(才能とは少し違うもの)、思想や学習にあまり左右されないものがある。
今回の「風立ちぬ」を見て、そんなことを強く感じました。

それは遺伝子のようなもので、どのようにしても変えることのできないもの。
元から持っている顔かたちや血液のようなものとでも言いましょうか。



作品と本人というのは、当然ながらリンクする部分が多いものですが、個人差はあるものの、必ずしももそうではありません。

小心者で人の意見に左右されながら改訂を続けていったブルックナーが、あの壮大な大伽藍のようなシンフォニーを作ったりすることもあれば、ベートーベンのように曲と本人のギャップが少ない人もいます。

宮崎駿の場合、矛盾をそなえた典型的なアーチストですね。

この人の言ってる思想というのは、まったく与でできないのですが、作品は本当に素晴らしい。

ただ、72歳になった宮崎翁の仕事を見てさらに思ったことに、キャラクターと背景画の乖離を強く感じました。
キャラと背景が合ってないというのではありません。

背景の実在感、存在感が圧倒的なのに対して、キャラの薄さが際立つ感じでした。

難を言えば声優でしょうか。

主人公の堀越次郎の吹き替え。あまりに下手な棒読みにいったい誰かと思ってクレジットを見たら、エヴァンゲリオンの庵野監督。大物だけど声優は素人ね。

ほかにもプロの声優じゃなく、風間杜夫、國村隼、大竹しのぶなど、みんなプロですが役者さんを使っていて、いつものジブリなんだけど、声優使った方がいいのになと思いました。

ともかくもこの映画、必見です。まだの方はぜひご覧あれ。


コメント
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