先週の木曜日、上野の森美術館で開催中の「生頼範義(おうらいのりよし)展」、見てきました。
緑色をした上の絵は、小松左京の「果てしなき流れの果てに」のカバーイラストで、私は中学生の時、絵に惹かれて買って読みました。
小松版「2001年宇宙の旅」みたいな、ちょっと難解な内容でしたが、頭がグルグルするような宇宙のロマン(笑)にときめいて読んだ記憶があります。
▼こちらが生頼範義が担当した本のブックタワー(館内、場所によって撮影OK)。
その膨大な作品数にびっくりです!
生頼の仕事は主にSF、時代劇、戦記物など、どちらかというと男子目線のものが多いのですが、私どもの世代だと、この人のカバー絵に惹かれて思わず手にした本が多いと思います。
敬愛するミケランジェロの「奴隷」をモチーフにしたカバー絵です。
小松左京がこの絵を見て驚き、以降、自分の著作の多くを生頼に任せたといういわくつきのイラストです。
昨年、フィレンツェでミケランジェロの「奴隷」の実物を見た感じでは、もちろん本物とはだいぶ違う感じです。私自身、何10年ぶりにこのカバー絵を見て、ミケランジェロをモチーフにしていたことに初めて気づきました。
スケジュール的に多忙な生頼がイタリアで見て来たはずはなく、「奴隷」は石膏にもなっているので、石膏か写真(おそらく写真)を見て描いたのでしょうが、大変優れたコラージュ絵画になっていました。
こちらはペン画の点描ですが、生頼作品はモノクロが良いですね。
個人的にはギラギラしているアクリル画より、渋いペン画の方が良いと思います。
ほかにも三国志や吉田茂の肖像画など、この人でないと描けない画力のペン画はさすがです。
無題で商業絵画とは無関係に7年かけて描いた、生頼オリジナル作品です。
戦争体験のあった生頼範義が、その怒りや悲しみをキャンバスにぶつけた作品ですが、いや重過ぎて見ていられません。
この人は多忙で、膨大な仕事をこなしていたにもかかわらず、その合間に自分の心に潜んでいる怪物をこんなに吐き出していたのですね。
仕事してなかったら、ただのアブない親父だったかもしれません。
▼絶筆となった作品ですが、その反面桝目を丁寧に描いているなど、几帳面な一面もこの絵から垣間見ることができます。
ともかくも小松左京やアルフレッド・ベスターの「虎よ! 虎よ!」など、中学高校時代に夢中になったSF小説のカバー絵に触れて、懐かしさ満載という感じでした。
また、スターウォーズやゴジラ、スティーブン・セガールのデビュー作のポスターなど、改めてこの人の絵と知って驚いた作品も満載。
生頼範義展は2月4日(日)まで。
おそらく一堂に会するのは最後の機会です。