小暮満寿雄 Art Blog

ダジャレbotと間違われますが、本職は赤坂在住の画家です。作品の他お相撲、食やポリティカルな話も多し。右翼ではありません

レオナルド・ダ・ヴィンチ「糸巻きの聖母」を見てきました!

2016-03-19 13:46:30 | Weblog

昨日は江戸東京博物館で開催中のレオナルド・ダ・ヴィンチ「糸巻きの聖母」を見てきました。

メインはこの「糸巻きの聖母」1点で、レオナルドの筆による作品、あとは素描のみで、ほかはレプリカやレオナルド周辺の画家たちの作品が展示されるという構成でしたが、なかなか興味深い展覧会でした。

そもそも、わたくし・・・この「糸巻きの聖母」がレオナルドの真筆かどうか疑わしいのではないか。そんなことを考えていたのです。

その理由として・・・

1、モナリザなど、輪郭線をハッキリ描かないレオナルドなのに、空と水の背景と聖母の頭がハッキリしすぎている。

2、背景の山々の形が単純すぎる。これもモナリザに比べるとさらに顕著である。

3、浮いた右手の描写が、レオナルドにしては人体的に正確でないところがある。

4、聖母の頭の形がやや歪み気味である。

などが挙げられました。

ところが、実物を見て「やっぱりレオナルドの真筆かな」と考えを変えました。
まあ、わたしなどが何と言おうと、この絵は鑑定的にレオナルドの真筆なのですが、それはそれとして、もう少しお付き合いを。

なぜ、この絵がレオナルドの真筆だと考え直したかというと、まずレオナルド周辺の画家の筆と「糸巻きの聖母」のレベルがあまりに違うことです。これは誰の目にも明らかで、見た人々が口々に「やっぱり違う」とつぶやいていました。

余人を以て代えがたし、ということでしょうか。

理由2の「背景の山が単純」というのは、もしかしたら弟子が描いたものかもしれません。レオナルドの絵に、ラファエロみたいに誰か他の人の手が入っていたなんて話はあまり聞きませんが、この時代は当たり前のことだったので、もしかしたらそうだったのかもしれません。。

理由4の「聖母頭部の歪み」というのは、あくまで印刷物やTVなどで見た時に感じたもので、本物を見る限りでは感じられませんでした。

不思議なもので、写真に撮ると歪んで見える絵というのが、理由はわかりませんが、あるものです。もちろん原画に微妙な歪みがあるのでしょう。それが撮影されると、より強調されて見えるのかもしれません。

撮影されて歪む画家の代表は、個人的な感想を言うとドラクロアでしょうか。
反対に実物の方がリアルに感じない画家が、同時代のアングルだと思っています。

ともかくも「糸巻きの聖母」に見られる神秘性、精神性はレオナルド・ダ・ヴィンチ のものと見て良いと、一人勝手に腑に落ちた次第です。

それにしてもレオナルドの作品に見られる「知の迷宮」はすごいもの。みな、彼の絵を模したり、鏡面文字を解読したりするのは、少しでもこの万能の天才に近づきたいからでしょう。

私が一番尊敬する人物の一人は間違いなくレオナルド・ダ・ヴィンチなのですが、一番真似しちゃいけない人だとも思っています。まあ、真似するなんて「笑わせるな」なんですが(笑)♪

↓ こちらはミュージアムショップにあったトスカーナはヴィンチ村産のレオナルド・ワイン。キャンティのブランドで出していて、これは買わないワケにいかないと、つい一番安いものを購入してしまいました♪

 
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4 コメント

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万能も弊害に… (狸もなか)
2016-03-21 00:38:34
画伯、私もレオナルド展行ってきました。
化学、物理学、幾何学にも及ぶ彼の思考、深い洞察の経過をとどめた「鳥の飛翔に関する手稿」は圧巻でした。
昔から画集を見ながら「糸巻きの聖母」は、疑念が色々あった一枚。買った図録によると、手前の岩肌に比べてやる気ない感じ(笑)の背景は後から加筆されたものらしいです(1507年以前)。画伯が指摘する聖母の輪郭の浮き上がり方は、この加筆のせいなのかもしれませんね。聖母子と岩の仕上げ、人物像の肉付けとスフマートはレオナルド本人の手とされているようです。また当時の書簡によると、2人の協力者が絵を描き、時々レオナルドが手を入れていたそうです。レオナルド本人は、絵より幾何学の研究に没頭していたとの事。
神は彼に多くの才能を与え過ぎた様ですねσ(^_^;)
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絵より幾何学とは (マスオさん)
2016-03-22 06:49:50
狸もなかさん、おはようございます!

図録に解説があったのですね。
モナリザが昔はもっと大きくて、ナポレオンが額に合わせて四隅を断裁したなんて話がありましたが、レオナルドの作品に加筆するなんて、今では考えられない話です。

絵より幾何学に没頭していたとは、いかにも万能の天才にふさわしい話。いやはやびっくりポンですわ(笑)。
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Unknown (柳川)
2017-12-20 00:02:47
私は難しい事はわかりませんが盗まれた絵をお金を支払って買い戻された持ち主がイギリスの田舎の宮殿に常時展示されていることに感動して見たいとおもいま した、意外に小さな絵だからもちさられたのかなと納得しました。
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お越しありがとうございます。 (マスオさん)
2017-12-31 11:04:23
柳川さん、おはようございます!

こちらのブログは滅多にコメントを見ないもので、レスが遅れて失礼いたしました。
いろいろ、経緯があったようですね。

またお越しくださいませ!
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