漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

アルラウネ

2016年03月07日 | 読書録
「アルラウネ」(上・下) H.H.エーヴェルス 著 麻井倫具/平田達治 訳
世界幻想文学大系27 国書刊行会刊

を読む。

 アルラウネ(マンドラゴラ)伝説を下敷きにした、ドイツの流行作家エーヴェルスの、最大のヒット作。1911年の刊行で、23万部ほども売れたそうである。現代ならいざ知らず、その当時としては破格の発行部数だろう。それほど人気を博した作品なのだから、さぞかし面白いのだろうと思って読み始めたのだが、うん、それはやはり古い作品だけあって、読みやすい作品ではなかった。特に前半は、展開が遅い上に、そもそも人物の関係からしてなかなか上手く理解できなくて、かなりの忍耐が必要だった。同一人物に対して様々な呼び方をするものだから、余計に。まあそれでも、だんだんと慣れてくるので、なんとか読みきることができた。
 ストーリーとしては、ある不良青年の思いつきがきっかけで、放蕩娘に殺人者が処刑された時に漏らした精液を受精し、人工的にひとりの女性を産ませ、その娘に「アルラウネ」という名前をつけて育てるのだが、長じるにつれてその娘は次第に魔力とさえ呼べるような力を身につけた悪女に育ち、その魅力に魅入られた人々を次々に破滅に導いてゆく、というようなもの。処刑された男の精液が大地を孕ませ、そこにマンドラゴラが生えるという伝説を踏んだ作品。読み終えてみれば、物語自体は、特に複雑で凝ったものではなく、むしろあっけないほどストレートなものだった。途中、男装を初めとするいろいろなコスプレをして見せたり、フェティシズムが全開の記述があったりと、今の基準ではさほどではないにせよ、おそらく当時にしてはかなり刺激的なシーンがあるので、そのあたりが人気の秘密だったのかもしれない。ちょっと、七十年代後半から八十年代前半頃の少女漫画のようだとも、思った。

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