漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

浜辺のキャビン

2006年03月27日 | 読書録
 今日、ようやく「積読」書架から、

 「新しい太陽の書1:拷問者の影」
 ジーン・ウルフ著

 を引っ張り出して、読み始めた。
 去年の秋に、全四巻が揃ってリクエスト復刊されたもの。ここぞとばかりに揃えたが、今まで睨んでいた。まだ読み始めて100ページほどだが、これは期待に違わないということを確信している。

 ジーン・ウルフは、最近国書刊行会から「ケルベロス第五の首」と「デス博士・その他の島」が相次いで刊行され、話題を集めている。その流れでおそらくは復刊されたのだろう。ただし、「新しい太陽の書」は、復刊分ももう手に入りにくくなってきているようだ。

 僕が初めてウルフの作品を読んだのは、「SFマガジン」(1986年2月号)に掲載された「浜辺のキャビン」という作品だった。僕は「SFマガジン」を定期購読しているわけではないのだが、その頃、一年ばかり「SFマガジン」を買っていた。で、ネビュラ賞の短編部門を受賞したということで、訳出されていたのだった。
 僕は怠け者なので、雑誌を端から端まで読むというタイプではない。しかし、その作品は、タイトルからして引っかかった。で、読み始めた。ところが、これがとても印象的な作品だった。
 雑誌は実家に置いたまま僕は東京に出てきたのだが、数年経っても、ふとその短編のことを思い出すことがあった。だが、作者が思い出せない。少し調べて、それがジーン・ウルフという人の作品であることはすぐに分かったのだが、いざ彼の作品を探そうとしても、邦訳単行本はヒロイック・ファンタジー(実際は、多少違うのだが)の「新しい太陽の書」のシリーズしかないことが分かった。しかも、それは既に絶版になっている。
 そういうわけで、僕にとって長い間ジーン・ウルフという作家は「幻の作家」だった。これから、「新しい太陽の書四部作」を皮切りに、読んで行くつもりである。