漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

幽霊滝の伝説

2006年03月16日 | 読書録
 少し前の話になる。

 創元文庫の「日本怪奇小説傑作集」を読んだとき、冒頭の小泉八雲の「茶碗の中」が思いのほか面白く、そういえばうちにも一冊あったなと思い出して、「積読書架」からごそごそと、角川文庫の「怪談・奇談」を引っ張り出してきて読んだ。僕が買ったのではなく、妻が結婚した時に持ち込んだのであるが、妻に聞くと、私は読んでいないという。そういうことは、よくあることで、僕も、この有名な本を読むのは初めてだったのだから、素直に納得した。「むじな」とか「ろくろ首」とか、下手に知っているだけに、読む機会を失していたのである。
 ところが、これが滅法面白かった。あらすじをなんとなく知っているのと、実際に読むのとでは、随分違う。名作としてずっと残っているだけのことはあるのだと、改めて感心した。きほんの「き」の字をおろそかにしてはいけないのだ。それにしても、日本に帰化して「小泉八雲」という、ものすごく立派な日本名を持っているのに、翻訳書というのが、昔から不思議な感じがして仕方ない。関係ないか。

 さて、この中で、実は以前から少し知っていた話なのだが、やはり圧倒的に怖いのは

 「幽霊滝の伝説」

 である。なんというのか、怖さの持ってゆきようがない怖さである。この滝は実在している。こちらが詳しい。