■瞬間の記憶力 競技かるたクイーンのメンタル術 - 楠木早紀
前回のプリキュアさんの競技かるたに影響されて、買ってみました。
現役の競技かるたクイーンの楠木さんのご本。勢いで購入しましたが、なかなかに面白かったです。
あと、勢いで番組終了後に注文して、翌日には届くAmazonさん凄い。
内容は、競技かるたの説明から、女流王者・クイーンにいかにしてなったか。
噂の「ちはやふる」は未見なもので、競技かるた自体が、まず新鮮でした。
そして史上最年少でクイーンになり、現在まで9連覇中の楠木さんの考え方や姿勢が興味深い。
楠木さんを指導したのは、競技かるた素人のお父さん。
だからなのか、その発想は長年の伝統やセオリーとはかなり違うところにあった様。
「歌の意味や好き嫌いは(競技中は)考えない、作らない」「相手をどうこうする戦術ではなく、自分がどうしたいか」等々。
フォームをビデオ撮影して矯正したり、「とどのつまり全ての札を払い尽くして完勝すれば駆け引きも糞もない」という発想は、乱暴なようでいて筋が通ってる。
文章の感じから、おそらく楠木さん自身は意識されていない様子ですが、相当にロジカルで現代風な発想で取り組まれてる印象を受けました。
(この書き方は物凄く偉そうですが…。楠木さんは、競技かるたおよび百人一首や伝統への敬意と愛情に満ちた表現をされているので、ロジックよりもそちらを重視されてる印象です。ただ、失礼ながら私はそちら方面に無知なもので、その視点から見ると恐ろしく理にかなってるというか、なるほどそれは強いわけだと納得する面が多かったのです)
Amazonさんの感想等を見ると、「記憶術のハウツー本を期待するとちょっと違う」といったものが目立ちます。
ですが、日常に応用可能な、現実的なテクニックがかなり見られます。
例えば、「札の場所を映像として認識している」という箇所。
普段あまり意識しないかもしれませんが、文章で認識するのと、映像や音声で認識するのはかなり違う。
身近なところでいえば、音声ならば「歌詞を文章で思い出すのは困難でも、唄えば思い出す」とか、実感として分かると思う。
速読術も多分この理屈を使ってるんだと思います。文字を見て心の中で読み上げて認識するのではなく、文字は文字として認識した方が速度が上がります。
(例えば「わたし」という単語に対し、「わ・た・し」と心の中で読むよりも、「わたし」という図形として認識した方が早い)
「英語は英語として理解する方が(いちいち日本語に翻訳するよりも)早い」というのも同様。
これを突き詰めていくと、異常なまでの処理速度や反射が実現します。
著書の中で「最高に集中しているときは、読み上げが行われるよりも早く、取るべき札が分かる」とあります。
まさしく驚異の世界。「一字決まり」どころか「0字決まり」。
「読まれた札をとる」という基本ルールすら超越です。こんなことされたら、もはや為す術がないですよ。
本文中に「クイーン決定戦で、挑戦者がにやりと笑った事があった」「なぜ笑ったか後で聞いところ『クイーンがあまりに早くて思わず笑った』」とのエピソードがあります。
挑戦者の絶望と称賛が伝わってきます。
クイーンはこの事に関して「読み上げの前の呼吸が、発生する文字に応じて微妙に違うから分かる」と書かれています。
これは紛れもない事実だと思う。
ただ同時に、通常の聴覚認識とは違う部位で動けている結果ではないかとも思う。
現実的には、音を認識するには、どうしてもタイムラグがある。
私らが認識している「世界」は、実際には零コンマ前の世界。
音が発生して、空気中を振動して、鼓膜を震わせて、その動きを脳に伝え、意識下で認識するまで、どうしたって誤差がある。
もしも「空気の震え」を肌で認識したりできれば、脳に伝わりそれを処理するのにかかるタイムラグをスキップできます。
つまり「音が聞こえる(認識する)よりも早く反応する」ことは物理的に可能なはず。
私自身も似た体験はあります。(念のため書くと、クイーンの体験と私の体験では天と地ほどの差があるはず。私のMAXに集中した状態でも、クイーンの足元にも及ばないと思う)
いわゆる走馬燈が見えたことは2回、「見るよりも早く(先読みではなく確認した上の反射で)反応した」ことが1回。
後者については受験の「国語」の時。問題文を読むよりも早く答えが完璧に分かりました。(そして半端に考えて回答してしまった1問を除き、全て正解した)
楠木さんが実践されている記憶力やテクニック等は、非常に理解できます。
目的や手段に関する考え方や、「一つのことに集中するよりも、いろいろやった方が伸びる」とか、視覚化して対処せよとか。
「プリキュア」さんのテーマにも沿ってます。前回の話は、この本が下敷きになってるんじゃないかと思うくらい。
文章は、さすがに物書きが本職ではないのでかなり平易ですが、そのおかげでとても読みやすかったです。
さくっと読めて、得られるものはかなり多い。
さりげなく「練習室は畳が歪み、ふすまが破けている」とか「指を骨折・脱臼する」とか「近寄るとやられるような殺気をまとってた」とか「払った札の飛んでいく速度で調子を測る」とか、恐ろしいことが書いてあったりするところも含めて、大変に面白かったです。
リンク先の右側は、最近読んで面白かった本。
格闘ゲームの神こと「世界のウメハラ」の著書です。
競技かるたと格闘ゲーム、全然違う分野ですし、使ってる表現や悩み事も違うのに、至った結論やプロセスはかなり近かった。
「収斂進化」という表現は不適切かもしれないけど、なんかそういう共通点を感じ取りました。
ていうか、あの人たちは凄い。
【蛇足】
「映像として認識する」は、睡眠にも役立つスキルだと思ってる。
眠る際の定番の「羊を数える」は、かえって目が覚めると言われてます。
そうなってしまうのは、1匹2匹と数え上げているからだと思う。
要は文字として認識している。
そうではなく、映像として羊の数を数え始めれば、割とすっきりと眠れるはず。
(例えば、5枚の硬貨を並べられた時、「1、2、3…」と数えるのではなく、映像として「5」と認識するはず。それと同じやり方で順に数える)
詳しい理屈はよく分かりませんが、実体験としてなぜかそうなる。
考え事をし始めると眠れなくなるのも同様。
文字として整然と考えてると眠れない。
非文字で考えてると、むしろ眠れる。
同現象は歌でもいいです。
歌の歌詞を思い出しつつ頭の中で再生すると目がさえますが、映像やなんちゃって音声で再生すると寝ます。
個人的なことになりますが、私の体験で言うと「フルスロットルGoGo」をOP映像で再生すると、なんか知らんが眠りに落ちる。
不眠に悩む人はお試しください。
(注意点は、音声や映像として再生する点。決して文字ではなく)
【蛇足2】
プリキュアさんのせいで、競技かるたに触れてしまった。
先日はアプリ目当てに、長年のガラケーからスマホに乗り換えました。
私生活が浸食されていく。恐ろしい人たちだ、ほんとに。
ここ数年の私の人生は、彼女たちに支配されてると思う。
前回のプリキュアさんの競技かるたに影響されて、買ってみました。
現役の競技かるたクイーンの楠木さんのご本。勢いで購入しましたが、なかなかに面白かったです。
あと、勢いで番組終了後に注文して、翌日には届くAmazonさん凄い。
内容は、競技かるたの説明から、女流王者・クイーンにいかにしてなったか。
噂の「ちはやふる」は未見なもので、競技かるた自体が、まず新鮮でした。
そして史上最年少でクイーンになり、現在まで9連覇中の楠木さんの考え方や姿勢が興味深い。
楠木さんを指導したのは、競技かるた素人のお父さん。
だからなのか、その発想は長年の伝統やセオリーとはかなり違うところにあった様。
「歌の意味や好き嫌いは(競技中は)考えない、作らない」「相手をどうこうする戦術ではなく、自分がどうしたいか」等々。
フォームをビデオ撮影して矯正したり、「とどのつまり全ての札を払い尽くして完勝すれば駆け引きも糞もない」という発想は、乱暴なようでいて筋が通ってる。
文章の感じから、おそらく楠木さん自身は意識されていない様子ですが、相当にロジカルで現代風な発想で取り組まれてる印象を受けました。
(この書き方は物凄く偉そうですが…。楠木さんは、競技かるたおよび百人一首や伝統への敬意と愛情に満ちた表現をされているので、ロジックよりもそちらを重視されてる印象です。ただ、失礼ながら私はそちら方面に無知なもので、その視点から見ると恐ろしく理にかなってるというか、なるほどそれは強いわけだと納得する面が多かったのです)
Amazonさんの感想等を見ると、「記憶術のハウツー本を期待するとちょっと違う」といったものが目立ちます。
ですが、日常に応用可能な、現実的なテクニックがかなり見られます。
例えば、「札の場所を映像として認識している」という箇所。
普段あまり意識しないかもしれませんが、文章で認識するのと、映像や音声で認識するのはかなり違う。
身近なところでいえば、音声ならば「歌詞を文章で思い出すのは困難でも、唄えば思い出す」とか、実感として分かると思う。
速読術も多分この理屈を使ってるんだと思います。文字を見て心の中で読み上げて認識するのではなく、文字は文字として認識した方が速度が上がります。
(例えば「わたし」という単語に対し、「わ・た・し」と心の中で読むよりも、「わたし」という図形として認識した方が早い)
「英語は英語として理解する方が(いちいち日本語に翻訳するよりも)早い」というのも同様。
これを突き詰めていくと、異常なまでの処理速度や反射が実現します。
著書の中で「最高に集中しているときは、読み上げが行われるよりも早く、取るべき札が分かる」とあります。
まさしく驚異の世界。「一字決まり」どころか「0字決まり」。
「読まれた札をとる」という基本ルールすら超越です。こんなことされたら、もはや為す術がないですよ。
本文中に「クイーン決定戦で、挑戦者がにやりと笑った事があった」「なぜ笑ったか後で聞いところ『クイーンがあまりに早くて思わず笑った』」とのエピソードがあります。
挑戦者の絶望と称賛が伝わってきます。
クイーンはこの事に関して「読み上げの前の呼吸が、発生する文字に応じて微妙に違うから分かる」と書かれています。
これは紛れもない事実だと思う。
ただ同時に、通常の聴覚認識とは違う部位で動けている結果ではないかとも思う。
現実的には、音を認識するには、どうしてもタイムラグがある。
私らが認識している「世界」は、実際には零コンマ前の世界。
音が発生して、空気中を振動して、鼓膜を震わせて、その動きを脳に伝え、意識下で認識するまで、どうしたって誤差がある。
もしも「空気の震え」を肌で認識したりできれば、脳に伝わりそれを処理するのにかかるタイムラグをスキップできます。
つまり「音が聞こえる(認識する)よりも早く反応する」ことは物理的に可能なはず。
私自身も似た体験はあります。(念のため書くと、クイーンの体験と私の体験では天と地ほどの差があるはず。私のMAXに集中した状態でも、クイーンの足元にも及ばないと思う)
いわゆる走馬燈が見えたことは2回、「見るよりも早く(先読みではなく確認した上の反射で)反応した」ことが1回。
後者については受験の「国語」の時。問題文を読むよりも早く答えが完璧に分かりました。(そして半端に考えて回答してしまった1問を除き、全て正解した)
楠木さんが実践されている記憶力やテクニック等は、非常に理解できます。
目的や手段に関する考え方や、「一つのことに集中するよりも、いろいろやった方が伸びる」とか、視覚化して対処せよとか。
「プリキュア」さんのテーマにも沿ってます。前回の話は、この本が下敷きになってるんじゃないかと思うくらい。
文章は、さすがに物書きが本職ではないのでかなり平易ですが、そのおかげでとても読みやすかったです。
さくっと読めて、得られるものはかなり多い。
さりげなく「練習室は畳が歪み、ふすまが破けている」とか「指を骨折・脱臼する」とか「近寄るとやられるような殺気をまとってた」とか「払った札の飛んでいく速度で調子を測る」とか、恐ろしいことが書いてあったりするところも含めて、大変に面白かったです。
(左画像) 瞬間の記憶力 (PHP新書) (右画像) 勝ち続ける意志力 (小学館101新書) |
リンク先の右側は、最近読んで面白かった本。
格闘ゲームの神こと「世界のウメハラ」の著書です。
競技かるたと格闘ゲーム、全然違う分野ですし、使ってる表現や悩み事も違うのに、至った結論やプロセスはかなり近かった。
「収斂進化」という表現は不適切かもしれないけど、なんかそういう共通点を感じ取りました。
ていうか、あの人たちは凄い。
【蛇足】
「映像として認識する」は、睡眠にも役立つスキルだと思ってる。
眠る際の定番の「羊を数える」は、かえって目が覚めると言われてます。
そうなってしまうのは、1匹2匹と数え上げているからだと思う。
要は文字として認識している。
そうではなく、映像として羊の数を数え始めれば、割とすっきりと眠れるはず。
(例えば、5枚の硬貨を並べられた時、「1、2、3…」と数えるのではなく、映像として「5」と認識するはず。それと同じやり方で順に数える)
詳しい理屈はよく分かりませんが、実体験としてなぜかそうなる。
考え事をし始めると眠れなくなるのも同様。
文字として整然と考えてると眠れない。
非文字で考えてると、むしろ眠れる。
同現象は歌でもいいです。
歌の歌詞を思い出しつつ頭の中で再生すると目がさえますが、映像やなんちゃって音声で再生すると寝ます。
個人的なことになりますが、私の体験で言うと「フルスロットルGoGo」をOP映像で再生すると、なんか知らんが眠りに落ちる。
不眠に悩む人はお試しください。
(注意点は、音声や映像として再生する点。決して文字ではなく)
【蛇足2】
プリキュアさんのせいで、競技かるたに触れてしまった。
先日はアプリ目当てに、長年のガラケーからスマホに乗り換えました。
私生活が浸食されていく。恐ろしい人たちだ、ほんとに。
ここ数年の私の人生は、彼女たちに支配されてると思う。