老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「麻生氏は辞任を」署名提出と11.11アピール行動

2018-11-09 17:24:13 | 安倍内閣
『「麻生氏は辞任を」 市民団体が署名1万699人分提出
 市民団体「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」は9日、麻生太郎財務相の辞任を求める1万699人分の署名を財務省に提出した。署名の呼びかけ人の醍醐聡・東京大名誉教授は「麻生氏が国民の税を預かる財務省のトップに居座ることは許せない」と訴えた。
  財務省をめぐっては、公文書改ざん問題やセクハラ問題で、国税庁長官や財務事務次官が相次いで辞任した。麻生氏自身はこの2人について「適材適所だ」「はめられた可能性がある」などと発言し、批判の声が上がった。
  この日、財務省に署名を提出した杉浦ひとみ弁護士は「署名活動は今後も続ける。問題の大きさを認識してほしい」と話した。11日には日比谷公園などでデモ行進をする予定。(杉浦幹治)』
(朝日新聞デジタル2018/11/09)
https://www.asahi.com/articles/ASLC93HG6LC9UTIL00H.html?iref=comtop_8_08

先に私からもご案内した「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」による「麻生財務大臣の辞任を求める署名運動」の第一次集約が7日に締め切られ、本日署名簿が財務省に提出されました。

小さな市民グループの呼びかけにも拘わらず、10月7日からの一か月間で1万筆を超える署名が集まったということは、様々な不祥事を起こした財務省のトップとしての責任を取ろうとしないばかりか、記者会見や国会審議の場で傲慢で高圧的な態度をとり続ける麻生氏が、このまま財務大臣の座に居座り続けることへの怒りが、国民の間に根強く存在していることの現れだと思われます。

この署名が直接的に閣僚人事に影響を与えるとは考えられませんが、「国民の声を真摯に受け止める」との建前を言い続ける安倍政権にとっては、無視することのできないボディーブロウのような動きに違いありません。

「市民の会」メンバーの一人として、ここに結果をご報告すると共に、署名に参加して下さった皆さんにお礼申し上げます。有難うございました。

なお、記事にもあるように、こうした皆さんの声を可視化するために、11月11日には財務省前でのアピール行動と、日比谷周辺のデモを行います。ご都合のつく方は是非ご参加ください。皆さんの積極的なご参加をお待ちしています。

■財務省前アピール行動+デモ 
13時00分~ 財務省前アピール行動
 主催者冒頭スピーチ/各党・会派の国会議員のスピーチ/ゲストのスピーチ(近畿財務局OBの方)/コール
14時00分~ デモ行進(日比谷公園西幸門→新橋→銀座鍛冶橋駐車場まで)
http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/1111-5336-1.html

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
笹井明子
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世界を巻き込む中国と米国の貿易戦争の真の狙い!(3)

2018-11-09 11:00:51 | 安全・外交
(3)貿易戦争と日本

この貿易戦争は、一つ間違えれば、米中戦争に発展しかねない危険性をはらんでいる。しかし、米中とも一歩も引くつもりはない。【時代の転形期】の終焉をどのような形で迎えるかは予断を許さない。

トランプ大統領が口火を切った米中貿易戦争は、大方の予想では、簡単には終息しない。そして、トランプ大統領の目的の一つに覇権従属国のふるい落としがあると考えられる。

当然、同盟と言う名の従属国の筆頭である日本もそのターゲットになる。それが先日行われた日米会談で如実に出てきている。安倍首相は、これから本格的交渉に入るなどと、トランプ大統領に押しまくられ、かなりの譲歩を強いられている。トランプは、「晋三は脅しに弱い」と嘯いているようなので、相当譲歩をしたのだろう。

少し、日米共同宣言の内容を見てみよう。

・・・・・・・・・・・・
★「日米共同声明」9月26日、日米首脳会談

1.2018年9月26日のニューヨークにおける日米首脳会談の機会に、我々、安倍晋三内閣総理大臣とドナルド・J・トランプ大統領は、両国経済が合わせて世界のGDPの約3割を占めることを認識しつつ、日米間の強力かつ安定的で互恵的な貿易・経済関係の重要性を確認した。大統領は、相互的な貿易の重要性、また、日本や他の国々との貿易赤字を削減することの重要性を強調した。総理大臣は、自由で公正なルールに基づく貿易の重要性を強調した。

2.この背景のもと、我々は、更なる具体的手段をとることも含め、日米間の貿易・投資を更に拡大すること、また、世界経済の自由で公正かつ開かれた発展を実現することへの決意を再確認した。

3.日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する。

4.日米両国はまた、上記の協定の議論の完了の後に、他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。

5.上記協定は、双方の利益となることを目指すものであり、交渉を行うに当たっては、日米両国は以下の他方の政府の立場を尊重する。
-日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること。

-米国としては自動車について、市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること。

6.日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく。

7.日米両国は上記について信頼関係に基づき議論を行うこととし、その協議が行われている間、本共同声明の精神に反する行動を取らない。また、他の関税関連問題の早期解決に努める。
・・・・・・

ポイントは【6】にある。

●知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく。

この国がどこか。誰がどう読んでも、中国を指していることは明らか。では、この「不公正な貿易慣行に対処するため、日米、日米欧三極の協力を通じて緊密に作業していく」とは何を意味するのか。

このヒントは、新NAFTA(USMCA)協定にある。

・・・・・・・・・第32条 例外と一般規定・・・・・・
第32.10条 非市場国とのFTA

1.USMCA締約国の一ヶ国が非市場国とのFTAを交渉する場合、交渉開始の3ヶ月前に、他の締約国に通知しなければならない。非市場国とは、本協定の署名日前に締約国が決定した国である。

2.非市場国とFTA交渉を行おうとする締約国は、他の締約国から請求があれば、可能な限りの情報を提供すること。

3.締約国は、他の締約国がFTA協定と潜在的な影響を調査するため。署名日の30日前に他の締約国がFTA協定の条文、附属書、サイドレターなど見直す機会を与えること。締約国が機密扱いを要求する場合、他国は機密保持を行うこと。

4.締約国が非市場国とFTAを締結する場合、他国は6ヶ月前の通知により、本協定(USMCA)を終了し、残りの二国間協定とする。

5.二国間協定は、上記締約国との規定を除き、本協定(USMCA)の構成を維持。

6.6ヶ月の通知期間を利用して、二国間協定を見直し、協定の修正が必要か決定する。

7.二国間協定は、それぞれの法的手続を完了したと通知してから60日後に発効する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この非市場国とはどこか。 ロス商務長官はこの非市場国が中国であることを当然の前提としている。

つまり、中国との貿易交渉を行う場合、あらかじめ他の二国に通知し、交渉に関する情報を提供しなさい。中国との貿易協定を結んだ国は、USMCAから離脱される。

つまり、カナダ・メキシコは、勝手に中国と貿易協定を結べない条約になっている。これは国家の主権を制限する条項であり、カナダ・メキシコはいわば【毒薬=ポイズン】を飲んだのと同じ。その為、この種の条項を【毒薬条項】と呼ぶ。

日米共同声明を読めば、この新NAFTA条約=USMCAと同じ【毒薬条項】を飲まされる危険性はきわめて高い。そうなれば、日本は中国との貿易大きく制限される。

日米FTAは、日本に対して「お前は米国か中国のどちらを選択するのか」という究極の二者択一を迫るものである。この選択は日本にとってきわめて厳しい。

中国は巨大な経済力を持つ大国。このまま行けば、そう遠くない将来、GDPでも米国を抜いて世界一になるのは確実だろう。安倍政権以降の関係の冷え込みの中でも、中国との貿易高は米国を上回る。現在でも中国抜きに日本経済の成長など考えられない。

さらに言えば、中国は13億とも15億ともいわれる人口を持つ。しかも、広大な領土も所有している。そのポテンシヤルの大きさは米国の比ではない。米国を選択して中国と関係を断てば、日本は間違いなく没落するだろう。ネトウヨでない日本人ならこの損得勘定は誰にでもできる。

田中宇は、以下のように分析する。
・・・「トランプは、このような同盟諸国のお得な状況を破壊している。トランプは、自由貿易体制が米国に不利益を招いていると言って、同盟諸国が無関税で米国に輸出したり、同盟諸国が中国と自由貿易協定を結ぶことに反対している。」となる。・・・・田中宇の国際ニュース解説」の「中国でなく同盟諸国を痛める米中新冷戦」(2018年10月16日)

さらに彼はこう述べる。
・・・「改定後のUSMCAは、改定前のNAFTAに比べて「米国主導」の色彩が強い。米国が北米の地域覇権国であり、中国が東アジアの地域覇権国であるという、きたるべき多極型の世界体制を先取りしているのがUSMCAだ。USMCAの東アジア版が、中国主導の貿易協定であるRCEPだ。カナダやメキシコに対する米国の支配強化が許されるのなら、東南アジアや朝鮮半島に対する中国の支配強化も許される。それがきたるべき多極型世界のおきてだ。 」・・同上

さらに田中はこう述べる。
・・・「加えて今後、米国から同盟諸国への安全保障の「値上がり」も続く。日本は米国から「在日米軍に駐留し続けてほしければ、貿易で譲歩しろ」と言われ続ける。日本の官僚独裁機構(とくに外務省など)は、対米従属(「お上」との関係を担当する権限)を使って国内権力を維持し続けているので、米国からの安保値上げ要求を無限に飲んでいきそうだ。」・・同上

田中の分析は、安倍政権のトランプ政権(米国)に対する「従属外交」=「属国外交」=「ポチ外交」の本質を見事に分析している。

(4)日本に手はないのか。

トランプ政権の中国政策は、10月4日のペンス副大統領が中国をあらゆる部門で猛烈に非難する演説を行ったところから、明らかに新たな段階に入った。いわゆる「新冷戦」の始まりである。

米国の方針は、日欧英とも二国間貿易協定(FTA)を開始。これらの交渉を通じて、日欧英が中国との貿易協定を結べないようにする【毒薬条項】を入れるように要求する予定。

一言で言えば、「米国と同盟関係を続けたいのなら、中国と貿易するのは止めろ。中国と貿易したいのなら、米国との同盟関係を止めろ」と言っているのである。

トランプは米国の各研究所や大学から中国人研究者を追い出せとまで言っているように、反中国路線(新冷戦)は広範な範囲に及んでいる。

この対中冷戦路線は、米支配層(特に軍産複合体)に潜在的に存在する反中路線とも呼応しており、簡単には終わりそうにない。11月4日から始まるイラン制裁強化と相まって中・ロ・イランVSアメリカの冷戦構造が出来上がりつつある。

この大きな流れの中で起きたのが、サウジアラビアのカショギ暗殺事件であり、イラン原油の輸入を8ケ国には認めるという決定である。

田中にいわせれば、この決定はこうなる。
・・・「世界は、対米従属を強めるどころか、逆に「石油高騰が耐えられず、トランプは本気でイラン制裁できないな」と思っている。今後トランプが再びイランを本気で制裁しても、露中EUは非ドル化された決済機構で迂回し、制裁が効果を発揮できない。トランプが押したり引いたりを繰り返すほど、BRICSやEUは迂回する術を身につける。その術は「不正行為」でなく逆に、国際法違反のイラン制裁をはねのける「正当防衛」だ。トランプは、米国覇権を失墜させている。」・・・(土壇場でイラン制裁の大半を免除したトランプ)
https://tanakanews.com/

★日本も手をこまねいているわけではない。

10月25日安倍首相は中国を訪問した。米国との対峙をやむなくさせられている中国側は、手のひら返しで安倍首相を歓待した。「豚もおだてりゃ木に登る」。この種のおだてに弱い安倍晋三は、満面笑顔で大喜びしていた。

実は、トランプ大統領のアメリカファースト政策により始まった対中貿易戦争は、日本も対岸の火事ではない。特に自動車業界にとっては死活問題と言っても過言ではない。

もし、自動車関税が20%になったら、トヨタなど自動車業界にとってきわめて重大な影響を齎す。もし、トランプ大統領のいうように、さらに生産拠点をアメリカに移したら日本の雇用にとって大問題になる。最近、トヨタがソフトバンクと業務提携を結ぼうとしているのは、電気自動車問題だけでなく、このような経済情勢の大変化が前提になっている。

今回の中国訪問は、このような経済界の危機感を背景にして行われた。日本は中国敵視より、中国協調、日中貿易強化の方向に舵を切った事を意味する。7年ぶりに中国を訪問した安倍は、尖閣諸島・東シナ海問題を事実上棚上げした。そして、東シナ海ガス田の共同開発についての日中交渉を再開することで中国側と合意した。

この政策変更は、きわめて重要で、米中貿易戦争に与せず、日中貿易優先に舵を切ったことになる。

実は、今回の安倍訪中。総勢500人にも及ぶ随行団が一緒に訪中している。彼らの大半は、経済人。安倍政権が主体的に舵を切ったというより、大企業主体の日本経済界が、中国なくしては生きていけないという意思表明。中国の「一帯一路政策」「製造2025」などの諸政策に日本も積極的にコミットします、という経済界の意思表示である。

この政策変更には、官邸内部の外交の主導権争いが背後にある。中国重視政策に舵を切ったのは、経済産業省主導の外交方針。

外務省は伝統的に米国隷属方針。米国産軍複合体の意向を配慮するのが外務省の伝統的立場。この方向性から言えば、今回の安倍訪中はきわめて問題が多い。

おそらく、官邸内部で外務省と経産省との主導権争いが熾烈を極めているはず。それが図らずも露呈したのが、「これからの日中関係の道しるべとなる3つの原則を確認した」――。と安倍首相が日中会談の成果をどや顔で強調した事に対し、外務省がやっきになって火消しに走っている点である。

ちなみにこの三原則とは以下の方針を指す。
(1) 競争から協調へ
(2) 互いに脅威にならない
(3) 自由で公正な貿易体制の発展

しかし、外務省は、「一連の会談で「三原則」との言葉でこれらの方針に言及したことはない」と否定している。翌27日にも「三原則」という言葉を否定している。

まあ、これは功を強調したい安倍首相の勇み足だろうが、外務省はとにかく今回の日中会談の成果をできるだけ小さいものにしたいという意図が滲み出ている。

●一つはトランプ政権(米政権)との関係の悪化を避けたい⇒中国との貿易戦争はトランプ政権にとっても生きるか死ぬかのぎりぎりの戦い。その敵と嬉しそうに握手をしている安倍晋三をトランプがどう思うか。彼の怒りに火をつければ、自動車関税20%の悪夢が現実になる。日本経済の落ち込みが現実になる。現にワシントンポストは「トランプ氏の盟友、日本の首相が中国首脳にすり寄ろうとしている」と報じている。

●中国の習近平首相の顔が象徴しているが、日中関係の悪化の大きな要因は、安倍首相の対中包囲網外交。オバマ政権晩期ごろからの米戦略に積極的に加担してきたのが安倍政権。これがうまくいかないと中国に縋りつく。中国も対米貿易戦争がなければ、積極的に仲良くする相手ではない。こういう複雑な思いが習近平のぶつ仏頂面に現れていた。この事は外務省も良く分かっている。

しかし、中国は自由貿易拡大に旺盛な意欲を示している。トランプ大統領が「アメリカファースト」を言い募り、保護貿易的自国有利な関税障壁を設けることも厭わない姿勢を見せれば見せるほど、中国は、「自由貿易」の旗手としての立場を鮮明にしている。習近平主席は、今後15年で物品とサービスで約4,500兆円超輸入するに見通しだと表明している。日本企業は、このビッグビジネスチャンスを指をくわえて見逃すわけにはいかない。

しかし、現実的には安倍政権の米政府に対する隷属ぶりから判断すると、指を咥えて見逃す可能性が高い。当然、経団連や経済団体は、安倍政権に働きかけ、中国との交渉に消極的な安倍政権の尻を叩いたと考えられる。

その際の窓口が経済産業省。米国隷従が省是の外務省は当然良い気持ちはしない。これが、「三原則」の話があった、なかった、論争につながった、と考えられる。

★【米中間選挙】後の米中貿易戦争と対日TPA交渉の行方

米中間選挙の結果は、上院が共和党が過半数を制し、下院が民主党が過半数を制し、両者痛み分けの結果になった。トランプ大統領にとっては、まずまずの結果だと考えられる。(自らの再選戦略から見た選挙結果という視点)

【客観的影響】
①内政面⇒トランプ流政策(壁の建設とかオバマ・ケアーの形骸化など)の実現は難しくなる。
②内政面⇒トランプ氏のスキャンダル追及が厳しくなる。⇒ロシア疑惑、スキャンダルもみ消し疑惑等々。⇒常に大統領弾劾のリスクが付きまとう
③外交面⇒大統領再選戦略からすれば、外交でのポイント稼ぎが重要⇒北朝鮮との関係での進展が見られる可能性がある。⇒朝鮮戦争終戦宣言⇒在韓米軍撤退の可能性
④外交面⇒中国との貿易戦争は継続(軍産複合体との利害関係一致。民主党にも対中強硬派が少なからず存在(軍産複合体の影響を受けた議員が多数存在)。⇒そのため、米中貿易戦争は継続する。
⑤外交面⇒対イラン経済制裁強化⇒強硬にやれば、米国の影響力がかなり削がれる⇒中国・ロシア・EU・インドなどは従わない⇒石油のドル決済(ペトロダラー)がますます減少⇒米国の覇権の力が減退。⇒覇権国家としての中東の仲介者の役割がなくなる⇒中東の覇権がロシアに移る
⑥外交面⇒ロシアとの確執の増大⇒INFの離脱の影響は甚大⇒例えば、北朝鮮やイランに対して核開発禁止を強要し、経済制裁を行う倫理的道徳的根拠が喪失⇒米国のダブルスタンダードが明らかになる⇒※全てが米国の都合という覇権国家のタイラント(暴君)ぶりが世界中に明白になり、米国の信頼感喪失につながる。

その他、挙げればきりがないが、米国と言う国家が完全な曲がり角にある事が明白になっている。私流に言うと、覇権国家が覇権から降りようとしているための【悪あがき】が世界中に影響を及ぼす時代に突入したのである。

これからの世界は、まさに【転形期】のカオスに突入したといって過言ではない。(完)

「護憲+BBS」「安全・外交政策を考える」より
流水
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世界を巻き込む中国と米国の貿易戦争の真の狙い!(2)

2018-11-09 10:31:36 | 安全・外交
(2)トランプ大統領の狙いと米国戦略

以前にも指摘したが、覇権国家が覇権国家であり続けるためには、軍事力だけでなく、経済力でも世界を圧倒する力がなくてはならない。米国にとって、自らの覇権力を弱体化させる国家の台頭は抑えなくてはならない。巷間言われる、「NO2を叩け」は、米国の中心政策。特に軍産複合体にとって自国の軍事力がNO1である事が、利益を最大化する重要なポイント。その為なら、どんな謀略でも行う。

(※現在、米国の軍需産業はロシアの武器販売を巡って熾烈な争いを展開している。特に、MD(ミサイル防衛システム)では、米国はロシアに後れを取っている。トランプ大統領がINFを脱退したのも米国の武器の遅れが背景にあると言われている。実は、トランプ大統領の決定はロシアにとってそれほどの打撃ではない。ロシアのミサイルの凄さは、大陸間弾道弾にある。特に、今年発表されたミサイルには、多くの核弾頭が取り付け可能。一発のミサイルから、十発前後の核弾頭が降り注ぐように設計されている。このミサイルは現在の技術では、迎撃不可能とされている。もし、核戦争になれば、米国は無傷どころの騒ぎではなく、完全に破滅する事も視野に入れる必要がある。米国のネオコン連中はその危険性を軽視している。)

米国の覇権力が突出していた時は、「NO2」を叩くにしても、紳士的に行う余裕があったが、覇権力の低下とともに余裕がなくなり、タイラント(暴君)的手法を採るケースが多くなった。

そこへトランプ大統領が登場した。彼はオバマ流の紳士的手法を徹底的に嫌う。むき出しの力の手法で米国利益のみを追求する。これが世界中を混乱に陥れる。

その象徴的なものが、各国製品に法外な関税をかけると脅し、米国に有利な貿易協定(FTA)を国別に結ぼうとするやり口。例えば、メキシコとカナダをターゲットにしたNAFTAの改正交渉。この力を背景にした強引な手法は、世界各国の首脳たちの眉を顰めさせた。世界各国は、WTOの国際協定や貿易慣行を完全に無視した米国の強引なやり口を見せられると、米国からの独立(自立)を模索せざるを得なくなる。

このような米国の暴君ぶりに対して、先に書いた米国ドルが世界の基軸通貨である事を保証している【ペトロ・ダラー】に対する挑戦など、中国・ロシアなどを中心にして始まっている。中国やロシアは、すでにドルを使わずに石油取引の決済を始めている。

トランプ大統領がイランとの核開発停止合意を破棄し、イランに対する経済制裁を再開した。イラン石油との取引をしないように各国に圧力をかけている事に対し、EUもまたイランとの石油取引にドルを使わないで行おうとしている。ここでも「ペトロ・ダラー」の威力が崩壊し始めている。

田中宇は、このような現象を以下のような見方で解説している;

・・「この戦争が長く続くほど、新興市場の諸国は、ドルでなく自分たちの通貨を使って貿易・投資する体制を整えていく。いずれ、ドルと米国債が敬遠される傾向が増し、米国債金利の大幅上昇が不可避になり、ドルが基軸通貨としての機能を喪失する。トランプは、この流れを意図的に作っている。」・・ドル覇権を壊すトランプの経済制裁と貿易戦争
https://tanakanews.com/

田中宇は、トランプ大統領は、米軍産複合体が主導する「米国一国覇権体制」を意図的に破壊する政策を採り、「覇権」からの脱却を狙っていると解釈している。その方法としてきわめて過激な政策を打ち上げ、それを実践することにより、これまで紳士的外観の裏に隠されていた米国の本音を白日の下にさらした。その結果、これまで米国に従属的だった世界各国に自立を促している、と解釈している。

トランプ大統領の真の狙いは、軍産複合体が主導する米国の支配体制を崩壊させることだ、というのが、田中の解釈である。米国政治の混乱は、トランプ大統領と軍産複合体との暗闘にある、というのが彼の解釈である。

★そこで、問題は中国との貿易戦争である。

2018年4月16日に米商務省は、中国の大手通信機器メーカーZTEへの部品(ICチップやソフトのすべて)輸出を禁ずる行政措置を取った。中国の半導体輸出量は、今や世界一。ところが、半導体制作のための部品輸入量は90%。この部品輸入を止められたため、ZTEは大変困った。

輸出禁止の名目は、対イラン制裁法令に違反した社員を処分する約束を履行していないと言う事だが、これが名目に過ぎないことは誰の目にも明らか。中国では、米国の禁止措置は対中ハイテク産業を狙い撃ちにするものという見方が定着している。

先に書いた【製造2025】は、この部品輸入90%の現実を2025までに国内生産70%程度までにするという目標を掲げている。米国の禁止措置は、この中国の目標が達成できる前に先手を打って中国を叩いておく、という狙いがある。

10月18日のIWJの岩上安身のインタビューで、孫崎亨氏(元外務官僚)は、以下のような認識を語った。

・購買力平価に換算したGDPでは、中国はすでに米国を抜いた
・米国が20世紀の100年で使ったコンクリートを中国は僅か20年で消費した
・中国の時速300キロの高速鉄道の総延長は世界の高速鉄道の総延長に匹敵する
・米国が?年かけて作る大橋を中国は43日(?)で完成してしまう
・特許の取得件数(だったか?)も米国を凌駕している

孫崎氏は中国経済がこの数年で一変するであろうと述べている。

さらに、ロシア主導の【ユーラシア経済連合】がすでに動き始めている。中国主導の【一路一帯】構想とロシア主導の【ユーラシア経済連合】が融合すると、ユーラシア大陸全域を包含した経済圏ができる。極東地域の経済的ポテンシャルは歴史上最も高まっていると言って良い。長期的視点から見ると、世界経済の中心が完全にアジアに移りつつあることは確実。

★米国の対中国貿易戦争の狙いは、このような中ロ主導の【一路一帯経済構想】や【ユーラシア経済連合】などの計画を阻止するところにある。

中国専門家の遠藤教授が語っていたが、中国の【一路一帯構想】は、陸と海と空の覇権だけでなく、宇宙の覇権まで視野に入っているそうだ。遠藤教授は「大風呂敷に聞こえるかもしれないが」と断っていたが、中国の覇権意欲はこれだけ旺盛だと言って良い。

ただ、ここで注意しなければならないのは、中国の覇権意欲は、【世界覇権】ではなく、【地域覇権】だと言う事。習近平が米大統領との会談で何回か打診している太平洋を二つに分けて支配しようと言う構想が象徴的。米国の覇権は、それに対して【世界覇権】であり、覇権の多様性を認めない。そこが決定的に違う。

米国はその違いをあまり認識していない。「覇権」と言えば、「世界覇権」を意味すると考えている。だから、彼らは、中国の【製造2025】、【一路一帯】構想は、明確に米国【覇権】に対する挑戦と捉えており、それに対する先制攻撃を仕掛けた。これがトランプ大統領が始めた【貿易戦争】。

そして、この【貿易戦争】は、軍産複合体の同意を得ており、おそらくトランプ在任中続く見込みである。中国のアリババの会長は、30年は続くと語っている。(続く)

「護憲+BBS」「安全・外交政策を考える」より
流水
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世界を巻き込む中国と米国の貿易戦争の真の狙い!(1)

2018-11-08 21:59:04 | 安全・外交
トランプ大統領が仕掛けた米・中貿易戦争の影響が様々な局面で表面化している。

NYダウの急落、日本や世界の株価の急落。トランプ大統領は、FRBの金利引き上げ政策のせいにしているが、原因はトランプ自身の政策にある。

以前から何度も指摘しているが、現在の世界は【転形期】にある。【転形期】の世界の特徴は、覇権国家の力が衰え、これまでの秩序が崩れ、想像もつかない現象が次々と起きるとろにある。

問題は、前の覇権国家とその後を襲う次の覇権国家との争いは、彼らの図体がでかいため、その他の弱小国家にとって死活的影響を及ぼす。その為、彼らの争いを高みの見物でやり過ごすわけにはいかない。

やくざ組織でもそうだが、「覇権国家」が「覇権」を滑り落ちようとするとき、様々な【悪あがき】をする。最終的には、【戦争】も辞さない。はた迷惑な話で、これが一番困る。

こういう時は、できるだけ近づかないようにするのが、賢明な策だが、「覇権国家」と交流を断つわけにはいかない。特に日本は、太平洋を挟んで、中国と米国の間に位置する地政学的に重要な位置にある。

さらに、中国と米国との貿易は日本の生命線。両国との貿易が途絶えれば、日本は生きては行けない。これが日本の置かれた宿命。

とするならば、この「宿命」にどう向き合い、どう生き延びるか、が日本の指導者や支配層の絶対的な命題である。この「命題」を解くのにふさわしい能力と資質を備えた指導者を選択する目が日本国民に課せられた最重要な【命題】と言う事になる。

この中国・米国との貿易戦争が今や【新冷戦】として喧伝され、両国間の戦争まで囁かれるほど拡大し続けている。ここでの対応を間違うと、日本の命取りになりかねない。これまでは、両国との間のグレーゾーンをうまく立ち回り、儲けてきたが、これからは米中どちらかにシフトチェンジを迫られる可能性が高い。まさに、日本は【正念場】に立たされている、と考えたほうが良い。

こういう場合は、とにかく情報が第一。正確な情報を基に、冷静で客観的な分析を心掛けねばならない。さらに重要なことは、最悪の事態を想定して、対策を講じておく必要がある。21世紀の日本の命運がかかっていると覚悟して、性根を据えて準備しなければならない。

★まず、中国との貿易戦争に対する米国の狙いは何か、である。

一言で言うと、【IT産業分野】での覇権争いが最大の要因。

中国と言う国は、もともと社会主義国。社会主義国は、計画経済は得意技。彼らは、長期的スパーンで、IT産業部門だけでなく、製造業部門で世界の強国を目指している。それが「一帯一路」政策と「中国製造2025」である。

(1)中国製造2025とは何か

その基本計画が、【中国製造2025】。英語流に言えば、【MADE IN CHINA 2025】 。これは別に中国だけでなく、ドイツは「インダストリー4.0」。アメリカは「インダストリアル インターネット」という計画を持っている。

特にドイツの「インダストリー4.0」は、官民共同で作成されており、「第4の産業革命」と呼ばれるほどのインパクトと先進性を持っている。日本でも昨年あたりからよく語られ始めたA1などの研究がそうである。おそらく、この研究などで21世紀の社会は激変するに相違ない。(これについては,稿を改める)

【中国製造2025】は、2015年に発表され、2025年までの中国製造業発展のロードマップである。当然、このような世界の趨勢をにらんだ計画になっている。

この計画はきわめて具体的で明快。まず、【5つの基本方針】を策定。それを実施するための【4つの基本原則】がある。そして、中国が最終的に製造強国になる目標年度を2049年に設定。その間を3段階に分けて目標を設定している。

第一段階⇒2025年までに世界の「製造強国」入りを果たす。
第二段階⇒2035年までに中国の製造業レベルを世界の製造強国の中位レベルに上げる。
第三段階⇒2045年までに「製造強国」のトップになる

【5つの基本方針】
1、イノベーション駆動
2、品質優先
3、環境安全型発展
4、構造の最適化
5、人材本意

この中で特に焦点を当てられているのが、1のイノベーション駆動と4の構造の最適化である。

中国は豊富な労働力と低賃金による「労働力労働密集型」の製造体制を誇ってきた。これが、日本でも、一時、否、現在でもお世話になっている、衣料品などの安価な大量生産品の供給を支えてきた。これが中国を「世界の工場」にした。

しかし、今後は労働構造の転換を図り、ITやロボット、AI(人工知能)を活用した「技術密集型/知能的集合型」の産業にシフトする必要があると、中国は考えている。この背景には、人件費の高騰と労働人口の減少(一人っ子政策)がある。

上に書いたように、中国政府は、「製造業のイノベーション能力の向上」を最重要な「戦略任務」の一つとして掲げている。具体的に書くと、企業主体で、官民学一体となった「製造業イノベーション体制」の構築を推進。産業ごとにイノベーションチェーンを整備し、(財政・金融・人材などの)資源を適材適所に配置したりする。また、イノベーションのコアとなる技術研究を強化し、研究成果の産業化を促進。

中国政府の恐ろしさは、こういう【戦略目標】を確実に実行する実行力と息の長さである。

他の民主主義国家はそうはいかない。どうしても選挙を意識せざるを得ない。選挙のたびに【長期的国家戦略目標】がぶれざるを得ない。さらに、これらの「国家戦略目標」は、覇権国家米国との関係で揺れ動かざるを得ない。

そう考えると、資本主義国で、「長期的国家戦略目標」を比較的自由に策定し、比較的自由に実行できるのは、「覇権国家」以外にないと言う事になる。

その為、先進各国の中で【長期的国家戦略目標】を保持しているのは、主に米国と言う事になる。そしてEUの盟主ドイツと言う事になる。(続く)

「護憲+BBS」「安全・外交政策を考える」より
流水
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日本のマスコミの大本営化が進んでいる

2018-11-08 13:48:06 | マスコミ報道
トランプ政権の帰趨を決する「中間選挙」で、下院で民主党が善戦しているのに上院でのトランプの活躍ばかり報道する全国紙に、「大本営」に近い翼賛報道かと目を疑った。「ねじれ国会」などという言葉は死語に近い言葉である。ねじれているのはマスコミの頭の方だ。

考えて見て欲しい。メキシコ国境に壁を作り「自由の国」(?)アメリカを目指す移民集団を、火器も使って追い払うと公言するトランプである。

海外貿易でも200年前以上の「保護貿易」を展開しているし、貿易相手国を「恫喝」するような経済政策を次から次へ打ち出す大統領は今まで見たこともない。

99パーセントと1パーセントの戦いとなっている米国(世界的な傾向だが)で、1パーセントの代表者を大統領に据える国はおかしい。(日本も同じであるが、この点は次の投稿で関連的に言及する。 )

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
名無しの探偵
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明治150年に思うこと

2018-11-05 11:05:23 | 民主主義・人権
2018年は明治元年(1868年)から満150年の年に当たるということで、日本全国にある美術館や資料館などの文教施設では多くのイベントが開催されている。

今日まで連綿と続く近代的社会制度の基礎が築かれた時代であり、文化や芸術などの面でも、現代まで読み継がれる文学作品などが多く生み出された時代であることは間違いないだろう。

明治時代と比較すると現代は恵まれた時代であり、日本の社会も文化も進歩していることはあらゆる側面で明白な事実だ。

明治期に書かれた小説や詩、戯曲などの文学作品テクストからは、日清・日露という二度の大戦の影響が垣間見える。表面的にではあるものの、日本は今日に至るまで70年以上戦争を起こさず加担もしていない。

夏目漱石の『吾輩は猫である』では、62歳の登場人物を「六十二で生きている位だから丈夫と言わねばなるまい」と評し、「肺病」や「ペスト」が人間にとって致命傷となる時代であったことも記されている。現代では、62歳でも自分で自分の体を思うように動かせる人が多く、平均寿命は80歳を超えている。

その反面、あの当時から何も変わっていないのではないかと思われることも多い。現在では、確かに参政権も性別や収入に関係なく認められ、進学や就職といったライフコースも男女ともに選択できるようになった。しかし、現在でも女性であることを理由に入学試験で不利な取り扱いをする大学があることが明らかになった。国会議員や大学教員などの職業においても男女比に偏りがあることも事実である。

また、少子高齢化が進み、生産人口が減少しているため、労働現場における人手不足が問題となっているが、実際には低賃金のポストや労働条件の厳しい仕事に人が集まらないだけであり、庶民の労働環境はそれほど改善していないことも、今日まで続いている課題である。

日本が近代国家として歩んできた道は、必ずしも進歩だけで語れるものではない。今日まで残る課題にも目を向ける必要があるのではないかと、痛切に感じられる。

「護憲+コラム」より
見習い期間
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空疎な自己責任論 (安田純平氏の記者会見を見て)

2018-11-03 09:39:26 | マスコミ報道
安田純平氏の記者会見を見た。妻などは、こんなに早く会見をして大丈夫なのか、とはらはらしながら見ていた。

彼の会見を聞きながら、想像を絶する地獄のような監禁生活を3年半もよく耐えたな、と感心した。肉体的苦痛もさることながら、精神を痛めつける監禁グループのやり口にぞっとさせられた。肉体的にも精神的にも、人を支配する、というのは、こういう事なのだと改めて知らされた。

これは何も安田純平氏だけの特殊な経験ではない。ナチスドイツもそうだったし、戦前の日本の特高警察の取り調べもそうだった。最近では、カンボジアのポルポト政権もそうだったし、ミャンマーの軍事政権下でも同じだった。

権力と暴力で人を支配する、というやり口は、洋の東西を問わず、人種の有無を問わず、組織の大小を問わず、同じやり口が行われる。安田氏の話は、人間の持つ悪魔性を再認識させられた。

わたしが安田氏に感心させられたのは、そういう苛酷な状況の中で、克明な記録をとり、冷静に拉致した人間たちを観察し、捕らわれた施設の内部を観察し、周囲の環境や状況を観察している事である。

これは、言うのは簡単だが、3年半も行い続けるのは、難しい。自分が彼のような状況に落とし込まれたらと想像すれば、彼の凄さが実感できる。わたしには、到底できない。わたしはこの一事をもってしても、彼が骨の髄からジャーナリストだと評価できる。

前の投稿(私見;自己責任論)でも指摘したが、そもそも自己責任論などは論として成立しない。人間(大人)の行動はほとんど全て自己責任に基づいて行われている。その行動の評価は甘んじて受けなければならない。それが大人社会のルール。

安田氏も語っていたが、戦場地帯に入るのは自らの判断。その結果、生じた事態は彼の言葉を借りれば、【自業自得】=自己責任。そんなことも分からずに戦場や紛争地帯に入るジャーナリストはいない。この当たり前の事が通じないのが自己責任論を叫ぶ輩。

先日、羽鳥のモーニングショーで、橋下元大阪府知事と玉川氏がこの問題について討論していた。さすがに、橋下氏の論理は、そこらあたりのチンピラ自己責任論者とは一味違っていたが、論理の浅さは否めなかった。

彼は戦場取材の必要性は認めた。戦場記者たちが自己責任で危険地帯に入っていくことも認めた。そして不幸にして拉致された人間が生還した事を喜ぶことも認めた。政府に邦人保護の責務がある事も認めた。

では何を批判するのか。彼は、安田氏が捕まった事自体を批判したのである。エベレスト登山をするのに本当のプロは十分な準備をして登山する。ところが、素人は適当な準備をして登山するから遭難する。

それと同じで危険な戦場取材をするのだから、十分な準備をして絶対の安全を期して入らなければならない。安田氏はそれができていなかった、と批判する。そして、政府に邦人保護の責務があるとしても、そのために政府に迷惑をかけたことを謝罪するべきである、と言う論理。

まず、エベレスト登山の話だが、過去プロの登山家がどれだけ遭難したかを彼は知らないはずがないだろう。どれだけ完璧な準備をしても、遭難する事があるのが、山の恐ろしさ。普通の人間はそういう危険な場所には立ち入らない。しかし、山に魅せられた人には、不可能と言われたり、危険と言われたり、怖ろしいと言われたりするからこそ挑戦する。人間の冒険心や挑戦心には限りがない。これが人間の進歩につながった、と言って良い。

戦場記者も同じ。ひょっとするとエベレスト登山より難しい。何故なら、エベレスト登山の場合、気象条件などはある程度以上読める。その予測の下で行動できる。ところが戦場記者の場合、相手はテロリストだったり、軍隊だったり、夜盗だったり、誘拐ビジネス集団だったり、気象条件を読むような具合にはいかない。どれだけ準備をし、どれだけ慎重に行動しても、絶対の安全は保障できない。もし、絶対的安全を期するのなら、中東での行動の場合、米軍と行動を共にする以外ない。それでも流れ弾や砲撃を受ける危険性はゼロではない。

しかし、彼らはジャーナリスト。米軍と行動を共にすれば、かっての従軍記者と同じで、米軍側から見た情報以外手に入らない。そうではない情報を手に入れようとすれば、米軍の保護下から出て取材する以外ない。

戦場ジャーナリストの取材対象は様々。ジャーナリストの数だけあると言ってもよい。米軍側から見た真実。米軍の攻撃を受ける人たちから見た真実。テロリストから見た真実。双方の戦闘の間で生きようとしている無辜の民の真実。戦争の興廃の中で生き抜こうとしている子供たちの真実。戦争には様々な真実がある。その真実の欠片を丁寧に拾い上げて人々に伝えるのが戦場ジャーナリストの仕事である。

そうなると外務省の発する危険情報と相反する結果になる場合も多々あるだろう。それだけ危険地帯に入るのだから、安田氏のように捕まる場合もあるだろうし、後藤氏のように命を落とす場合もあるだろう。

しかし、彼らはその仕事を選択し、自らの生命の危険を賭しても、戦争の真実の欠片を拾い集めようと決心して危険地帯に入ったのである。

橋下氏は、【仕事の成果】がないから駄目だ、という評価をしていたようだが、それもまた近視眼的評価と言わざるを得ない。上に書いたように、戦場の真実は見る立場によって違う。その真実の欠片を評価するのも、評価する立場によって違う。自分が評価できないから全否定するのはあまりにも近視眼的と言わざるを得ない。

橋下氏よりはるかに低次元の自己責任論による批判を繰り広げていたのが、坂上忍や東国原などが出ていたフジTV系列の「バイキング」。あまりにも低次元の批判で聞くに堪えなかった。彼らの言説批判は、リテラで詳細に行っているのでそちらをご覧ください。

・・安田純平会見に『バイキング』坂上忍、東国原、土田らがゲス全開バッシング!「シリアの話より反省聞かせろ」
https://lite-ra.com/2018/11/post-4348.html リテラ

わたしは安田氏をジャーナリストとして評価できると考えているので、こんな【愚者の狂宴】のようなバッシングにひるむことなく自らの仕事に邁進してもらいたいと切に願う。

“行蔵は我に存す 褒貶は他に存す 我にあらず 我に関せず ” (勝海舟)
行動の責任は自分にある それに対する毀誉褒貶は他人が行う わたしの知った事ではない、と言うほどの意味である。江戸城の無血開城を行った海舟に対する批判は凄かった。それに対する海舟の言葉である。

戦場ジャーナリストの皆さんも「自己責任論」のようなつまらないバッシングに惑わされず、これからも勝海舟の覚悟で取材活動を行って欲しいと切に願う。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
流水
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野党共闘再生の新機軸を

2018-11-01 16:30:41 | 立憲民主党
10月31日の日経新聞電子版をネットで見ていたら、下記の谷口尚子 慶応義塾大学准教授 の記事が目にとまった。ところが詳細は、[有料会員限定]、となっており、当方はその会員でもなく、日経新聞も購読していないので具体的内容は分からない。

ただ題名の、「野党再生の条件(上) 左右対立超える新機軸を 」については全く同感なので、10月24日の当スレッド(安全・外交政策を考える)より、弊稿を下記に抽出して逆提案しておきたいと思う。

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO37063580Z21C18A0KE8000/
『野党再生の条件(上) 左右対立超える新機軸を
谷口尚子 慶応義塾大学准教授
経済教室 コラム(経済・政治) 2018/10/30付日本経済新聞 朝刊

ポイント
○現選挙制度下、自民・野党の政策内容近く
○政権能力の評価低いままでは支持伸びず
○野党は個々の有権者のニーズに寄り添え

[有料会員限定] この記事は会員限定です。電子版に登録すると続きをお読みいただけます』


(以下は10月23日の弊投稿)

>日米安保条約に代わる日本の平和と安全保障への道(永世中立国)(2)
https://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/7bf2a70a82800bcca623a37121573379

>*永世中立国へのムーブメント造り

・来年の参議院選挙の1人区で、各野党は統一候補を立てないと自民党、公明党候補に勝てないこと分かっているが、野党共闘できそうな旗がなく、溝が埋められず難航中である。この際先ず、[永世中立国を目指す」というアイデンティティーの旗の下に結集して、各党の政策をすりあわせ調整できないものか、このことについて野党は議論してみて欲しい。また「日本の永世中立国化」を唱えるるような政治家が一人でもよいから出て欲しいものである。現在期待したい政治家は自由党参議院議員山本太郎氏、社民党福島瑞穂氏、千葉民主連合参議院議員の小西洋之氏あたりである。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
厚顔
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