老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

米朝会談・東アジア戦後体制崩壊の第一歩

2018-06-12 21:47:12 | 安全・外交
6月12日。おそらくこの日は、世界に唯一残った冷戦体制の終焉と同時に東アジア戦後体制(米国覇権体制)の崩壊の第一歩として歴史に記録されるだろう。トランプ大統領と金正恩委員長と会談は、きわめて歴史的な意義を持った会談だった。

では、これからの米朝関係、東アジアの体制はどのように変化するのか。それを読み解くカギは、今回二人によって調印された「合意文書」にある。

・・・12日、シンガポールで開かれた米朝首脳会談で、米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が会談後、共同声明に署名した。

共同声明によると、両首脳は1.米朝関係の正常化、2.韓半島(朝鮮半島)の平和体制保障、3.韓半島の完全な非核化、4.韓国戦争(朝鮮戦争)の遺骸送還--など4項目に合意したことが分かった。・・YAHOOニュース 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00000051-cnippou-kr

この後のトランプ大統領の記者会見を見ると、どうやら非核化について以前の米国のように、CVIDの適用を厳密に求めなかったようだ。

イラクのサダム・フセイン、リビアのカダフィーに行ったように執拗な査察・検証を繰り返し、完全に武装解除をさせておいて、その後体制崩壊を行うという米国方式は、北朝鮮の厳しい拒絶にあったと考えられる。このあたりの知恵は、中国側から与えられたのであろう。

ましてや、イランと非核化の合意を破棄したトランプの米国である。米国の口約束など信用できない、という北朝鮮側の言い分は一定以上の説得力を持ったはずである。

実は、トランプ大統領は、メディアのプロパガンダほど「非核化」に対して情熱を傾けていいなかったと考えられる。それより何より、北朝鮮との歴史的会談を行った大統領という名誉が欲しかったのだろう。わたしはその動機を不純とは思わない。そんな動機の詮索より、北朝鮮のトップとの直接会談を行い、膠着した朝鮮情勢や東アジア情勢の変化や流動性をもたらした結果の方が重要だと考える。

そういう意味で、1.米朝関係の正常化、2.韓半島(朝鮮半島)の平和体制保障、は、トランプ大統領の狙いを見事に具現化している。

わたしが考えているトランプ大統領の世界戦略は以下のようになる。

※米国は覇権国家から手を引く
※軍産複合体を弱体化する

トランプ大統領の一見奇矯な政策を「世界覇権」から脱出のための手段という視点で俯瞰すると、きわめて一貫性に富んでいる。同時に、トランプ大統領の過激な、過激すぎる発言(特に北朝鮮などに対して)を軍産複合体を弱体化するという視点で見ると、過激すぎる発言で本当に戦争が近いのではないかという危機を煽る。本当に戦争になったら儲からない軍産複合体は、トランプ大統領を説得する。

そうしておいて、軍産複合体の邪魔を排除して、北朝鮮との融和交渉に入る。

表面上の強面とあまり上品ではない物腰と、強引な物言いでトランプ大統領の「戦略」など軽視してしまいがちだが、なかなかどうしてトランプ大統領は強かでやり手の大統領かも知れない。

貿易の不均衡是正を名目にして、EUや中国、日本などに関税をかけるという誰がどう見ても国際ルールを無視した強引な手法をとるのも、「覇権国家」からの脱却という視点で見るときわめて有効な手法である。

EUなどから言わせると、米国の強引な手法にはついていけない。となると、必然的に米国をあてにできなくなる。こんな無茶苦茶な議論を振りかざす国を「覇権国家」として認められない。トランプ大統領はここでも「覇権国家」から抜け出し、世界の「多極化」を促している。

エルサレムをイスラエルの首都として認め、米国大使館を移転させたのも同じ文脈で説明できる。

昔から米国議会は、エルサレムをイスラエルの首都として認めている。ただ、パレスチナをはじめとするアラブ諸国の反発を考えれば、それを行う事は火に油をそそぐようなもの。イスラエルとパレスチナの仲介者としての米国の立場を考えれば、できない。だから、過去の大統領は理屈をつけては引き延ばしてきた。

トランプ大統領は、過去の大統領ができなかった原因を米国が「覇権国家」である事に求めている。「覇権国家」であると思うから、様々な国に配慮して思い切った政策が打てない。ならば、「覇権国家」であることを辞めれば良い。これがトランプ流政策決定の思想であろう。

もはや米国は、アラブの仲介者としての立場を完全に放棄したのである。要するに、覇権国家を辞めたというわけである。

今回の米朝会談。日本のメディアは、「完全で検証可能な不可逆的な」非核化などという軍産複合体の論理を、さも正義の議論のように主張してきた。同時に安倍首相の口車に乗って、「拉致問題」の解決などというおとぎ話を主張してきた。

CVIDの論理は、核保有国には適用されない。これらの国は、国連の非核化の動きに対してきわめて非協力的というより、敵対的ですらある。核保有国以外が核を所有すると、CVIDを厳しく適用し、査察をし放題。挙句の果てには、政権転覆も辞さない。CVIDの適用を声高に主張する論者は、この矛盾を説明しなければ説得力を持たない。

「拉致問題」についていえば、基本的に日朝二国間の問題である。蓮池透氏が指摘するように、安倍政権下の五年間拉致問題はほとんど進展していない。「拉致問題」の解決には、それこそ話し合いしかない。それを圧力一点張りでは解決したくても、その方策が見つからない。

まして、金正恩委員長は、軍部の反対を押し切って「非核化」に舵を切った。不倶戴天の敵である米国との交渉に踏み切った。文字通り、彼は今回の会談に命を懸けている。拉致問題の解決など、思案の外だろう。

トランプ大統領だって同様。今回の会談に失敗すれば、軍産複合体の力を削ぐどころか、トランプ大統領の権威失墜は必至。この失敗は、秋の中間選挙に直結する。そんな彼らが、他国の問題である「拉致問題」を必死に議論するわけがない。まあ、議題の一つに挙げた程度になるのは最初から分かっている。

そんな事のために、数千億単位の買い物を米国からすると安倍首相はトランプ大統領に言ったそうだ。その程度の批判すらできない日本メディアは、死んでいると言わざるを得ない。

では今後の朝鮮半島はどうなるのか。東アジア情勢はどうなるのか。今回の会談では宣言されなかったが、おそらく次回かその次ぐらいの会談では、朝鮮戦争の終結が宣言される可能性が高い。

もし、朝鮮戦争終結が宣言されると、国連安保理が安保理決議83の状態(韓国を侵略した北朝鮮の脅威を抑えるため、国連加盟国が派兵して韓国軍を助ける必要がある状態)の終了決議をするだろう。そうなると、在韓米軍の駐留の国際法的根拠がなくなる。

トランプ大統領は今日の記者会見でも、在韓米軍約3万の撤退について否定しなかった。ただ、この米軍の撤退については、米軍や韓国内で米軍によって利益を得ている人間たちの強い反対もあるので、すぐ実現はしないかもしれない。

もし、米軍が撤退すると、韓国の米国従属は終わる。韓国と北朝鮮の統一はすぐにはできないだろうが、経済的な一体化はかなりの速度で進むだろう。特に北朝鮮の地下資源は世界有数のもので、米国・中国・EU・ロシアなどの企業が虎視眈々と狙っている。

以前にも指摘したが、ロシアのプーチン大統領の提案(韓国と北朝鮮を鉄道で結び、それをシベリア鉄道や中国の鉄道に連結する。ロシアからガスのパイプラインを引くなど)に代表されるように、朝鮮半島とロシア・中国・モンゴルなどを包摂した一大経済圏ができる可能性が高い。

つまり、今回の米朝会談は、このような「地政学的大変動」をはらんだ会談なのである。

トランプ大統領の大目的である「覇権からの撤退」は、世界の「多極化」を推進し、21世紀世界の大変動をもたらす可能性が高い。

日本の政界、日本メディアが世界性を失って久しいが、今回ほど彼らの時代遅れが際立ったイベントはない。TVで「らしい」発言をしたのは、原田武夫(元六ケ国協議に参加した外務官僚)だけである。(あべまTV)彼は、今回の米朝会談の目的は、非核化などではなく、「朝鮮戦争の終結宣言と朝鮮半島の平和宣言」だと断言していた。現実に彼の予言通りに事は動いた。

「拉致問題」のみにこだわった報道をしている日本メディアの世界性のなさにあきれ果てている。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
コメント (3)
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明日の米朝会談は合意かパールハーバー再来の選択かだ

2018-06-12 02:27:58 | 安全・外交
いよいよ明日は21世紀最大の会談といってもよいであろう。世界のメディアは会談成功か否かで固唾をのんで見守っている。過去の米朝会談とはプロセスもトップのキャラクターも違うゆえ、過去の米朝会談での経緯や経験は常識として通用しないのではなかろうか。

先ず今回の会談までのプロセスであるが、両国は一時一触即発の戦争直前まで行き、一瞬地獄の釜の底を覗いて観ている。このインパクトは両首脳にとって会談を成功させたいとの心理に繋がっていると思われる。また両首脳とも会談を成功させねばならない国内事情を抱えていることも共通しているように思われる。

かつて米国は日本を追い込んで真珠湾攻撃を誘発して、結果的に日米は悲惨な戦災を経験した。しかも今回は核戦争になる可能性もあり、その戦災の影響は在韓在日米軍、韓国、日本、北朝鮮に及ぶことは必至で被害甚大である。このような状況をトランプ大統領と金委員長がイメージできないはずがない。

次に二人のキャラクターであるが、トランプ大統領は歴代大統領と違い国防省や国務省のテクノクラートを信用しない政治スタイルである。このことは会談成功にプラスにはたらく。テクノクラートこそ軍産複合体と与して戦争慣れして感覚が麻痺し、適時どこかで戦争をすることが米国が世界一のステイタスを維持し続ける方法だと信じている。

一方金委員長は祖父や父とは違い、物心ついた頃には東西冷戦は終了し、各国で共産主義経済は破綻しており、イデオロギー戦争に固執する必要もない。またスイスに留学し、自由、民主主義の空気も吸っている。青春時代の良き想い出は誰しも忘れられないものであり、それに近い国体にしたい感情があるやも知れない。しかし祖父と父が築いた旧体制は簡単には変えられない。絶対的権力が必要である。今その時が来たと思っての今回の行動とも考えられる。その意味では両首脳とも機を見るに敏な処は共通している。

先ほど米国側から明日のトランプ大統領のシンガポールからの帰国時間も発表されたが、これはほぼ両国の事務方でトップ会談の合意が整ったことを意味しているのではなかろうか。

その内容は朝鮮戦争終結、北朝鮮の体制保障、核廃棄と経済制裁解除の段階的な推進が合意点ではなかろうか。核廃絶は物理的にみても一気には無理で、期限を決めて段階的にしかできないであろう。例え米国に一任すると言われても段階的にしか廃絶できないはずである。

しかし既に所有する核爆弾数が正直に報告されるかは疑問であり、他国には分からない。例えば全核保有国が核廃絶に合意したと仮定しても、各国が正直に保有数を申告し、廃棄するとは思われない。人間に猜疑心と疑心暗鬼はつきものであるからである。よってこの問題は相手を信用するしかない。こだわりすぎては会談は失敗する。

一方拉致問題は、日朝両国で交渉することが打ち出されれば上々であろう。トランプ氏から安倍氏へ拉致のことは伝えたとの電話報告が落ちとなる可能性は十分にある。しかし安倍首相もこれは想定内で、国民向けのパフォーマンスを意識してのトランプ頼みのジェスチャーに見えて成らない。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
厚顔
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