老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「風は西から」村山由佳

2018-05-19 22:16:21 | 社会問題
私は友人達と時々日曜日に居酒屋で飲む機会があり、チェーン店の居酒屋を訪れる度に、「日曜はバイトも休む人が多くてスタッフの人達も大変だな」と思っていた。それが違っていたと分かるのは、村山由佳「風は西から」を読んでからだった。

村山由佳は恋愛小説を主に書いていて、「ダブルファンタジー」等の著書は、名前は知っていても手に取った事はなかった。

この物語の主人公健介は、大手居酒屋チェーン店「山背」で繁盛店の店長として働ていた。その仕事ぶりは無駄もなく有能で、バイトの若者達からも慕われていた。しかし健介はある日突然命を絶ってしまう。

残された恋人千秋と健介の両親は真相を知りたいと願い、「労災」の認定を得るべく力を尽くす。「山背」は事実を隠蔽し証拠隠滅を図ろうとする。

この物語で千秋達を支える弁護士が、いかにもバリバリという風ではなく、しかしその仕事ぶりは、何回か都知事選に立候補したあの方を思いださせる。

健介の両親は広島で居酒屋を営み、父親の確かな腕で作られた料理とおいしいお酒、母親のおもてなし等で繁盛している店だった。その店を継ぐ前に居酒屋で修業したいと、健介は「山背」の内定を勝ち取る。人間を徹底的にぶち壊すブラック企業とも知らずに。

とは言え、やはり村山由佳、健介と千秋の、透明なほどの柔らかく優しい恋愛を絡めながら、小さな人の中に秘められた「強さ」を描いている。

私達は居酒屋で飲食するとき、料理やお酒が美味しく、店の雰囲気も良くて値段も安ければ、コストパフォーマンスが良いと喜ぶ。勿論企業努力している店もあるのだろうが、コストダウンしようと食材やお酒を削れば客が逃げていく。削れるのは人件費。日曜の居酒屋でスタッフの人件費を削るためにバイトを減らしているのである。そして赤字を出さないように、自らの勤務時間を短く記載する店長。

5月26日には「高プロ制度」を含む「働らき方改革」が国会を通過しようとしている。これは小説ではない。

既に「高プロ」制度を先取りして、健介と同じような働き方をさせられている若者が無数にいる。この法律はその「働らかせ方」を正当化する法律なのだ。何としても止めなければならない。

これからの時代を生きる若者達が、奴隷のように、人間ではなく物のように、働かされるのを止めるために。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
パンドラ
コメント (1)
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