1月11日に行われた‘第29回毎日新聞社編集綱領(*)制定記念のつどい-公開シンポジウム「自衛隊って『戦場』に行くの?」に参加しました。
パネリストは、元陸上幕僚長の冨澤暉さん、前海上自衛隊呉地方総監の伊藤俊幸さん、元国連PKO職員で東京外国語大大学院教授の伊勢崎賢治さん、東京大大学院教授(法哲学)の井上達夫さんの4名。コーディネーターは防衛大卒業後毎日新聞に入社、現在毎日新聞東京社会部編集委員をしている瀧野隆浩さんと、シンポジウムの趣旨「これからの自衛隊の役割や安保政策の行方、憲法の捉え方を議論する」に相応しい陣容です。
議論は、タイトルの「自衛隊って『戦場』に行くの?」の問いから始まりましたが、どのパネリストの答えも「イエス」「既に行っているし、訓練死を含めた戦死者が出ている」というものでした。
その上で、冨沢さん、伊藤さんは、今回の新安保法制を歓迎。冨沢さんは、「課題は残るものの‘一国平和主義’を排し‘積極的平和主義’を具現化した」と国際貢献の拡大を評価。また、駆けけ警護などによる自衛隊のリスクについては、「できないことは『やらない』と現地の自衛官が判断し返上できる」との見解を示しました。
一方、伊藤さんは、「新安保法制は、その具体的内容から、憲法解釈の範囲を逸脱していない」と強調しつつ、「アメリカとの連携強化は平和と独立の抑止力を強める」「後方支援が『国際平和支援法』という恒久法になることで、他国との作戦に最初から加われる」と、他国(特にアメリカ)との協調伸展に期待を示しました。
これに対し、伊勢崎さんは、「戦場の現場で『できないことはやらない』と言って戻ることなどできない。大変な不名誉の烙印を押される。国際情勢の変化により、自衛隊が殺し殺される可能性はどんどん高まっている。軍隊として海外に送るなら国民の合意に基づく改憲が必要だし、そうでなければ安保法制を廃案にして、自衛隊は危険な地域から引き揚げさせるべき」と主張。
井上さんは、今の世界の政情不安はアメリカの身勝手が齎したものとして、アメリカとの協調への過度の期待を歴史的視野から批判。その上で、戦争の正義論として「積極的正戦論」「無差別的戦争観」「絶対平和主義」「消極的正戦論」の四つの類型を提示。国民の自衛権行使を限定付きで認める「消極的正戦論」の立場を語りました。
また、議論の終わり近くに、コーディネーターの判断で急遽伊藤真さんが登壇し、12月18日の公開討論会と同様、「現憲法は有効」「軍隊は持たない」「自衛隊は国際災害援助などの貢献に専念すべき」などと主張、その上で、自衛隊の役割については「国民的議論と合意が必要」との見解を示しました。
「集団的自衛権行使容認の閣議決定」という掟破りの手法が取られて以来、安保法制論議は「違憲か合憲か」の議論に終始し、総理大臣や防衛大臣らの不誠実な答弁や、与党議員らのトンデモ発言が飛び出すなどして、国会内で真っ当な安全保障や国際貢献の議論がされず、結果、マスコミも国民もその問題に正面から向き合うことができなかったという認識の下、そうした反省に立って今回のシンポジウムは企画されたようです。
安倍首相は、今年の参院選で「憲法改正」を争点にすると明言しました。いよいよ私たちも、「平和憲法を護る」という希望をいっているだけでなく、日本の安全保障や国際貢献について、具体的にどうあるべきかについて、自分の問題として深く真剣に考えていくべき時を迎えています。そういう意味からも、今回のシンポジウムは聴き応えがあるだけでなく、時宜を得た有意義なものだったとの感想を持ちました。
(*)『毎日新聞社編集綱領』
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われわれは、憲法が国民に保障する表現の自由の意義を深く認識し、真実、公正な報道、評論によって国民の知る権利に応え、社会の公器としての氏名を果たす。このため、あらゆる権力から独立し、いかなる不当な干渉も排除する。
われわれは開かれた新聞を志向する。新聞のよって立つ基盤が広範な読者国民の信頼と協力にあることを自覚し、積極的にその参加を求めていく。
(以下略)
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「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子
パネリストは、元陸上幕僚長の冨澤暉さん、前海上自衛隊呉地方総監の伊藤俊幸さん、元国連PKO職員で東京外国語大大学院教授の伊勢崎賢治さん、東京大大学院教授(法哲学)の井上達夫さんの4名。コーディネーターは防衛大卒業後毎日新聞に入社、現在毎日新聞東京社会部編集委員をしている瀧野隆浩さんと、シンポジウムの趣旨「これからの自衛隊の役割や安保政策の行方、憲法の捉え方を議論する」に相応しい陣容です。
議論は、タイトルの「自衛隊って『戦場』に行くの?」の問いから始まりましたが、どのパネリストの答えも「イエス」「既に行っているし、訓練死を含めた戦死者が出ている」というものでした。
その上で、冨沢さん、伊藤さんは、今回の新安保法制を歓迎。冨沢さんは、「課題は残るものの‘一国平和主義’を排し‘積極的平和主義’を具現化した」と国際貢献の拡大を評価。また、駆けけ警護などによる自衛隊のリスクについては、「できないことは『やらない』と現地の自衛官が判断し返上できる」との見解を示しました。
一方、伊藤さんは、「新安保法制は、その具体的内容から、憲法解釈の範囲を逸脱していない」と強調しつつ、「アメリカとの連携強化は平和と独立の抑止力を強める」「後方支援が『国際平和支援法』という恒久法になることで、他国との作戦に最初から加われる」と、他国(特にアメリカ)との協調伸展に期待を示しました。
これに対し、伊勢崎さんは、「戦場の現場で『できないことはやらない』と言って戻ることなどできない。大変な不名誉の烙印を押される。国際情勢の変化により、自衛隊が殺し殺される可能性はどんどん高まっている。軍隊として海外に送るなら国民の合意に基づく改憲が必要だし、そうでなければ安保法制を廃案にして、自衛隊は危険な地域から引き揚げさせるべき」と主張。
井上さんは、今の世界の政情不安はアメリカの身勝手が齎したものとして、アメリカとの協調への過度の期待を歴史的視野から批判。その上で、戦争の正義論として「積極的正戦論」「無差別的戦争観」「絶対平和主義」「消極的正戦論」の四つの類型を提示。国民の自衛権行使を限定付きで認める「消極的正戦論」の立場を語りました。
また、議論の終わり近くに、コーディネーターの判断で急遽伊藤真さんが登壇し、12月18日の公開討論会と同様、「現憲法は有効」「軍隊は持たない」「自衛隊は国際災害援助などの貢献に専念すべき」などと主張、その上で、自衛隊の役割については「国民的議論と合意が必要」との見解を示しました。
「集団的自衛権行使容認の閣議決定」という掟破りの手法が取られて以来、安保法制論議は「違憲か合憲か」の議論に終始し、総理大臣や防衛大臣らの不誠実な答弁や、与党議員らのトンデモ発言が飛び出すなどして、国会内で真っ当な安全保障や国際貢献の議論がされず、結果、マスコミも国民もその問題に正面から向き合うことができなかったという認識の下、そうした反省に立って今回のシンポジウムは企画されたようです。
安倍首相は、今年の参院選で「憲法改正」を争点にすると明言しました。いよいよ私たちも、「平和憲法を護る」という希望をいっているだけでなく、日本の安全保障や国際貢献について、具体的にどうあるべきかについて、自分の問題として深く真剣に考えていくべき時を迎えています。そういう意味からも、今回のシンポジウムは聴き応えがあるだけでなく、時宜を得た有意義なものだったとの感想を持ちました。
(*)『毎日新聞社編集綱領』
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われわれは、憲法が国民に保障する表現の自由の意義を深く認識し、真実、公正な報道、評論によって国民の知る権利に応え、社会の公器としての氏名を果たす。このため、あらゆる権力から独立し、いかなる不当な干渉も排除する。
われわれは開かれた新聞を志向する。新聞のよって立つ基盤が広範な読者国民の信頼と協力にあることを自覚し、積極的にその参加を求めていく。
(以下略)
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「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子