非国民通信

ノーモア・コイズミ

不要な雇用保険

2007-04-21 14:22:02 | ニュース

文書誤配布で採決先送り、改正雇用保険法が成立(読売新聞)

 雇用保険料の引き下げなどを柱とした改正雇用保険法が19日午後、衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決され、成立した。

 同法は、雇用情勢の改善により、失業給付などに充てる雇用保険料(労使折半)を現行の1・6%から1・2%に引き下げる内容。

 法案は一度衆院を通過し、3月29日の参院本会議で成立予定だった。しかし、厚生労働省が28日、「29日成立した」と明記した文書を誤って関係議員に配布したことから野党側が「国会軽視だ」と反発、採決が先送りされた。

 審議の最中であったにもかかわらず「成立した」と明記した文書を配布してしまい、無駄に揉めることになった案件ですね。政府与党としては仮に反対があったとしても最終的には強行採決で押し通せるわけで、野党側の対応の如何に関わらず最終的な法案の可決は変わらないと考えていたのでしょうか、審議の段階でいきなり結果を通知する不始末を犯したわけです。誰でもミスはありますが、これは頂けません。審議の前から結果を決めておくというのであれば、審議などしても意味がない、審議に応じるつもりがない、そう非難されても致し方ないでしょう。

 ちなみに内容はと言えば、雇用保険料が引き下げられるとか。元より負担感の薄い雇用保険料が多少引き下げられたところで我々の懐にはあまり影響がありませんが、それでも雇用保険の財源には大きく影響があるはずですね。なんでも雇用情勢が改善しているためだそうで、それで雇用保険の財源を縮小することが可能になったのでしょうか。雇用情勢の改善で失業者が減るのと、単に失業給付金受給資格者が減るのとではまた違いがあるのですが、その辺はどうでしょうかね?

 最近では新卒を対象に正規雇用の求人も増加傾向にありますが、それでも非正規雇用の伸びが正規雇用のそれを上回っています。これが名目上の失業率引き下げに一役買っているわけですが、それは同時に失業給付金受給資格者を減らす上でも大きいのではないでしょうか。つまり正規雇用の枠から外れて失業状態にある人が、失業給付金を受給しながら正規雇用の職を探す代わりに、低賃金の非正規雇用に吸収されることで失業給付金受給資格者が減るわけです。非正規雇用の拡大は企業側の人件費削減だけではなく政府側の社会保障削減の面でもそれなりの役割がありそうですね。

 たとえば派遣社員の場合、原則として失業給付金は受け取れません。もちろん理論上は受給が可能ですが、実際の受給は困難を極めます。これは「派遣先企業」と「派遣元企業」を役所側に都合良く組み合わせることで受給を徹底的に制限する仕組みが作られているからでして、ここでも生活保護の「水際作戦」よろしく国民ではなく財政を優先する観点から不法な阻止が繰り広げられているわけです。

 派遣社員が派遣先企業の都合で契約を打ち切られた場合ですが、この場合は派遣元企業との雇用関係は継続していると見なされるため、失業認定は為されません。給与支払い関係がないものを雇用関係と呼ぶとは笑わせてくれますが、それも給付を抑制するためです。ここで派遣元企業が派遣社員の仕事の斡旋を止めた場合は失業と見なされますが、原則として派遣会社が斡旋を打ち切ることはありませんので、制度上の雇用関係は維持され、失業認定は受けられないわけです。

 逆に派遣会社の斡旋を断ると、この場合は自己都合による退職と扱われるため、3ヶ月(認定に掛かる日数その他を含めると実質4ヶ月)の待機期間が発生します。そのため契約を打ち切られた派遣社員が選択できるのは、継続して派遣社員の斡旋を受けるか、もしくは失業給付金も何も受けられない状態で自分で仕事を探すか、そのどちらかになるわけでして、概ね資金面で余裕のない派遣社員は前者を選ばざるを得ません。失業給付金が出れば、焦らず正規雇用の職を探したり職業訓練を受けることも出来ますが、そうならないように制度を作ってあるわけです。非正規雇用が非正規雇用のままに押しとどめようとする政財界からの予防策ですね。

 唯一の可能性として、派遣会社が倒産した場合などは派遣社員でも失業給付金が受給できるはずですが、この場合は半年以上の給与支払いの実績が必要になります。失業認定の段階では給与支払いがなくとも派遣元企業との雇用関係があるものと見なされ、資格認定が受けられないわけですが、いざ受給の段階となると半年以上の給与支払いがないと受給資格が認められない、一口に雇用関係と言っても状況によって基準を変えるわけです。こんな仕組みですから、失業者が多くても失業給付金の支給額は少なくて済む、財源も縮小できるのでしょう。

 

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6 コメント

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こんにちは (ていぞう@シニア保険FC)
2007-04-21 16:43:57
こんにちは~
↓あなたのサイトを紹介しました~
http://senior27fc.blog99.fc2.com/blog-entry-187.html
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2007-04-22 00:29:11
>ていぞう@シニア保険FCさん

 御紹介ありがとうございます。
 今後ともよろしくお願いいたします。
返信する
雇用保険も大変だが、介護の雇用もますます・・・ (y-burn)
2007-04-22 00:40:55
 雇用保険どうこうと言えば、約三年前、乳飲み子の長男を抱えつつ、せっせと職安に通っていたのを思い出しますな。昔飲み屋でそこの職員と取っ組み合い寸前の喧嘩を売られたことがありましたなぁ。こっちは何も悪いことしてないのに。

 今の雇用保険の法律は、今のようなワンコールワーカーのような雇用形態が出て来ることを全く想定していないわけで、それを細かく法律を変えても駄目だと思います。思いっきり変えるべきだし、何らかの理由があってすぐに働けない人間の生きる権利は守るべきではないか、と。

 でね、今回の国会、はっきり言って駄目だわ。馬鹿役人やアホ議員の独擅場とも言えるような法律が、通る可能性が出てきています。それもおいらの本職の方で、ね。

http://yburn.13.dtiblog.com/blog-entry-298.html

詳しくはここを読んでいただければ。このような、福祉関係者を社会の底辺に追いやるような法律は、許すべきではない。というか、ネタにならない?
返信する
ダメ人間究極の選択 (名も無きダメ)
2007-04-22 10:29:05
こちら↓のお遊びコーナー
http://hpcgi1.nifty.com/ima-dame/SELECT/select.cgi
のダメ人間の究極の選択477番にそちらのブログを選択肢に入れて右のブログと対決してもらいました。もともとネウヨが集まるネタサイト的な場でもあるためか、圧倒的に右のブログが優勢になってます。
許可無く勝手な事をしてすみませんでした。
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2007-04-22 21:46:28
>y-burnさん

 飲み屋で喧嘩寸前ですか。それも不条理ですね。私は認定窓口で担当職員をぶん殴ってやろうと思ったことが何度もありますが。

 それにしても、規制緩和で雇用制度を変えても、雇用保険制度が未対応のまま、そして介護保険関係も随分酷いようですね。どうして、こうも実情に合わない制度を次々と考えつくのやら・・・

>名も無きダメ

 御紹介いただいたようで、どーもです。

 もとより閲覧数に1桁以上の違いが有りそうな著名ブログ相手ですが、半分ジョークでも並べて論じられたことは少し嬉しいですよ。どうぞ遠慮なく宣伝してやってください。
返信する
どうもです (名も無きダメ)
2007-04-22 22:42:18
どうもです。
でも、ネタサイトとはいえ、タイトルの印象だけで切り捨てて、見もしないでいるのは勿体無い気もします。でも、そこんとこは左の人間が右寄りのブログを読もうと思わないことで釣り合いが取れていると言われると反論できなかったりします。
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