定額給付金、所得制限１５００万円を検討…河村官房長官(読売新聞)
河村官房長官は６日午前の記者会見で、追加景気対策の柱である総額２兆円の「生活支援定額給付金」について、支給対象を年収１５００万円未満の世帯に限定する案を検討していることを明らかにした。
政府・与党は所得制限額など制度の詳細について、週内の決着を目指す方針だ。
河村長官は１５００万円を基準とすることについて、「高額所得者をどこで線引きするかという議論の中の一つの案だ」と述べた。給付方法については、「法改正を伴わないでやれる方法を検討している」と語り、受給者が市町村窓口で対象者であると申告する「自己申告方式」を軸に調整する考えを示した。
本当にやるのかと、未だに実感の湧かない「生活支援定額給付金」ですが、実際の運用については検討中の部分も多いようで、所得による制限を付け加えるべきかという論議も為されています。そりゃまぁ、生活にゆとりのある人に端金を渡しても経済対策にはなりませんからね。そこで支給対象から外れるラインとして提案されているらしいのが「年収１５００万円」だとか。
……あーあー、年収１５００万円を超える世帯は、日本には４％くらいしかいません。すなわち、残る９６％の世帯は支給の対象です。仮に年収１５００万円で制限をかけたとしても、この給付金に必要な予算は大して変わりません。１００％全ての世帯へ支給するために必要な予算が２兆円なら、９６％の世帯に支給するための必要予算は1.92兆円です。２兆円も1.92兆円も、どっちも「約２兆円」、グラフで比較しなくとも、それほど差はありません。
追加経済対策として政府が年度内実施を目指している総額２兆円の定額給付金に関し、全世帯に「引換券」となるはがきを送った上で一定の年収以上の所得者に対して自発的な辞退を促す案が浮上していることが６日、分かった。麻生太郎首相が求めている所得制限には法的措置が必要で手続きも煩雑になるためで、政府筋が明らかにした。ただ政府、与党内では「自己申告方式」で高額所得者を除外すべきだとの意見も根強い。
一方「自発的な辞退を促す案が浮上している」そうです。いかにも道徳家が好みそうな手口であり、最も自民党的と言えますね。ここでの肝は受け取るか辞退するか、この判断が受給資格者に委ねられていることです。受け取るにせよ辞退するにせよ、それは受給者が自らの意思で決めることであり、政府が決めたことではない、少なくとも建前上は、そうなるわけです。
もし政府が受給資格の有無を決めたなら、政府によって「資格なし」と判断された人の反発を買います。そして今回のようなケースはさほどでもないかもしれませんが、政府が人を選別すれば、必ずやどこかで責任を問われるものです。そこで責任を回避する方法は、判断を国民に委ねることです。国が支給を拒めば国の責任ですが、支給対象者が「自発的に」受給資格を放棄するなら、それは個人の判断の問題として扱われますから。
しかるにこの「自発的」は、往々にして強制された結果です。生活保護がそうであるように、受給することが悪である、「お前に受給する資格はない」、そういう社会的な合意＝偏見が作り出され、それに縛られることで「自ら」権利を手放すことを余儀なくされる（そうしなければ不当な受益者として扱われる）、「自発的」とはその結果なのです。
一人当りの金額を考えれば、それほど大きく問われることはないかも知れませんが、この給付が「富めるものは辞退すべきもの」として強調されるほど、「貧しい人だけが受け取るべきもの」とのイメージも強まります。それが転じて、「受給者なのに貧乏らしい生き方をしていないのはおかしい、奴は不正な受給者だ！」という実に幼稚な正義漢も幅を利かせるようになるのではないでしょうか？
受け取った金をどう使おうが、そりゃ個人の判断であって他人に干渉される謂われはありません。一点豪華主義とばかりに、その他諸々では切り詰めた生活を送りつつも、自分の趣味にだけは人一倍お金を使う、まぁその人の勝手です。ところが世の中には他人を意のままにしたくて仕方がない人もいる、社会保障受給者が人生を楽しむなどけしからんとばかりに自分が思い描く「貧乏人像」から外れた人をバッシングすることに血道を上げるような輩もいるわけです。こういう連中が社会保障受給者のイメージダウンに貢献し、社会保障の切り捨てへの理解を広める上で活躍してきたように、今回の場当たり給付金でも同じ役割を果たすような気がします。ゆとりのある人は受け取るべきではない、我慢すべきだ、そういう空気が作られれば（自民党的には）しめたものです。自民党は対策を打った、やるべきことをやった、しかし国民は自らの意思で辞退した、おかげで財政支出は最低限で済んだ、こうなればアリバイ作りとしては完璧ですから。
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それよりも嫌なのが同調圧力というやつです。自分以外はみな楽しているように見えるのか、常にカリカリしている印象を受けます。「情けは人のためならず」という格言のちょうど逆ですね。
政府が自らの責任で線引きした方が潔いと思うわけですが、国民の「自発的な～」に委ねようとする辺りに自民党らしさを感じるのですね。ここに同調圧力が働けば、「国民を救おうとする自民党＆国家のために自身の取り分を蜂起する国民」という鳥肌が立つような美談が出来そうですし。
地方公務員や社会保険事務所職員あたりが格好の標的になりそうですね。というよりも公務員は「自主的な」辞退を上から「要請」されるかもしれません。
これなら、いっそ所得に関係なく全員に配って欲しいものです。変な倫理感で結果として苦しんでいる人を金銭面でも精神面でも縛るのはやめてほしいものです。
そもそも彼等は日本国の責任者で、執行責任を行使してケツを持つために地位に就いて給料貰ってるんですけど。
空自爆長の退職金にしてもまたまた「自主返納」ですよ。
身内のことで庇い立てしたいくらいで無理に剥ぎ取れないので、なんとなく辞退してくんないかなー・・・と、背任を起こした部下に期待してどうしますか。
法治国家なんだから、大枚が動く話に法律の外でナシつけようってのはまずいでしょう。
自爆長に退職金支払われるのは私も嫌ですが、しかし脱法的にそういうものが要請される国情が普通になるのも嫌です。
いつこっち側で似たような話が(道理の有無は保証の限りでないし)あるかも知れなくなりますから。
……ローゼン閣下は口が割けてもいわんでしょうがね。
実際ヤフーでそういうコメント見ました。これが日本語の「自発的」の意味です。と言うよりそこまで簡単に先の展開が読めてしまうのは…。
＞いるか缶さん
そうでしょうね、受け取るか受け取らないかが選択に委ねられますと、公務員など周りから好待遇だと思われている人が給付金を受け取ることへの非難は容易に燃え上がりそうです。そうなると実質的に事態を強要されることにもなりかねないわけで、卑怯なやり方でもあります。
＞Gl17さん
実質的には政府及びしかるべき権限者の責任逃れなのですが、まぁ「自発的」「自主的」と語ることで、あたかも他人の意思を尊重しているかのような印象が作られたりすることもありますしね。田母神氏の場合は、退職金を没収してしまうと極右層の反発が怖いから、それで「自主返納」で茶を濁そうという戦法でしょうか。
＞あぐりこらさん
給付は一律でも、累進課税と組み合わせれば、ちゃんとした富の再分配になりますからね。しかるに、消費税増税と組み合わせることで再分配どころか「１０ｍの井戸を掘って、それを埋める」レベルの無駄をやろうというのですから……
＞ノエルザブレイヴさん
ヤフーはあまりチェックしていないのですが、やはりそう来ましたか。現時点では「バラマキ」と自民党支持層からも評価の芳しくない政策ですが、上手いこと公務員らを非難の対象にすることで、いつもの「すり替え」が行われるのかも知れませんね。
情報ありがとうございます。
私は週刊誌あたりで火がつくイメージだったのですが、もう言っている方がいましたか。それにしてもYahoo!ニュースってすごいらしいですね。そしてこれや２ｃｈが週刊誌やテレビに火をつける絵を想像するとあまりの連携の見事さに一瞬ほれぼれしてから暴言吐きたくなります。
その手の主張は２ｃｈが有名ではありますが、むしろYahooやmixiの方が右傾化が顕著と言うところもありますね。ただ放置しているだけのサイト以上に、管理している（はず）のサイトにヘイトコメントが居並ぶのは何とも……
http://yy31.kakiko.com/test/read.cgi/x51pace/1222351178/l50
これを出されると、たとえ資格があっても受け取ることが悪とされてしまいますからね。こうすれば低予算で景気の対策ができる(できているように見せかけられる)上に、失敗しても「受け取らなかった人の自己責任」にできますから、うまいですよね。いえ、私としては支給金額どころか考えまで安っぽく見えるのですが、世の中は「景気対策をしている。麻生総理はすばらしい。」と言うんですよね。国民の皆さんが「権利を要求すること＝悪」としても自分たちは得しないと気づいてくれればいいんですけどね。同じことしか言っていませんが、そう願っています。