非国民通信

ノーモア・コイズミ

格付け会社は間違っていない

2010-02-15 22:52:19 | ニュース

「外国に影響されるアホみたいな日本人多い」亀井金融相(朝日新聞)

 亀井静香金融相は12日の記者会見で、外資系格付け会社が日本の長期国債の格付け見通しを引き下げたことに関連して、「日本人は外国に影響されちゃう。アホみたいなのが多い」と述べ、格付けのあり方や、国民の受け止め方に不満を示した。4月から、金融相は格付け会社の監督権限を持つことになっている。

 亀井氏は「日本国債は90%国内で消化していて、外国で消化している話ではない」と指摘。その上で「国債の格付けに対して、実態に合っていないと注意喚起することも大事かもしれない。勝手に格付けを決めて、それで影響がでたって格付け会社が尻ぬぐいするわけじゃない」と批判した。

 亀井大臣ですが、つい先日も国民はアホみたいなことを言っていましたね。前回は世論の大勢が小沢氏の責任を追及する方向に傾き、民主党サイドの唱えるシナリオに国民が乗らないことを憤っての発言でしたけれど、今回は格付けがらみですか。どうせだったら選挙の時にも「国民はアホ」と公言してみても良かったのではないでしょうか。なにしろ有権者は国民新党に冷ややかな目を向けたのですから。あの選挙結果はアホな国民がマスコミに踊らされた結果だ、ぐらい言ってみたらいかが?

 それはさておき、米S&P社による日本国債の格付け見通しが「ネガティブ(弱含み)」に引き下げられたそうです。ただし格付け自体は21段階中で上から3番目の「AA」に据え置きとのことで、そこまで酷いランキングではなさそうにも見えます。むしろ自ら先進国の座を放棄しようとしている日本の経済状況からすれば、まだまだ好意的な評価と言ってもおかしくないくらいです。日本以外の国が軒並み順調に景気回復に向かう中、例外的にデフレどん底の日本であるにも関わらず格付けが「AA」で据え置かれたのであれば、客観的には「まだまだ安全圏」とのお墨付きが下されたようなものでしょう。

社説:日本の債務懸念は行き過ぎ(フィナンシャル・タイムズ)

 こうした異常な数字を簡単な説明であっさり片づけることには慎重になった方がいい。だが、いくつかの基準からして、日本は他国と異なる。第1に、債務総額の水準はミスリーディングだ。国が持つ資産を差し引いた日本の債務は、GDPの100%に満たない。

 第2に、国債の元利払いのコストは低く、GDPの1.3%程度だ。これに対して、米国はGDPの1.8%、英国は2.3%、イタリアは5.3%に上っている。第3に、日本の財政には手を尽くす余地がある。何しろ、消費税率はたったの5%だ。第4に、日本国債の95%は国内投資家が保有しており、気紛れな外国人投資家には影響力がほとんどない。

 実際、今もって日本の問題は過剰貯蓄なのだ。銀行は膨大な預金を抱えており、どこかに投資する必要がある。当面の間、政府は日本国債の買い手の確保に苦労することはないだろう。日本の債務問題は、家族の中で解決されていくのである。

 要するに、日本は今のところ、まだ財政のブレーキを踏む必要はないということだ。むしろ、もう少しの間、緩和型の財政政策を通じて景気回復を確かなものにした方がいい。ただし、ある一点において、日本は慢心しすぎている。デフレとの戦いがそれだ。

 フィナンシャル・タイムズの主張と日本の経済誌の主張は180°異なることが多いです。昨年の今頃「国民の消費を刺激する真の財政出動に加えて、企業が非生産的な資金を内部留保しないよう政府が止めさせる必要がある」と主張していたのもフィナンシャル・タイムズでした。日本の「経済に詳しいフリをしている人」は雁首揃えて「内部留保は使えないお金なんだ」と大合唱していましたが、海外の経済誌とは見解が異なるようです。もしかしたら外国の経済誌は日本の経済誌と違って意見が一様ではないのかも知れませんが、ともあれ海外メディアの代表的な一つであるフィナンシャル・タイムズに言わせれば「日本の債務懸念は行き過ぎ」とのことです。「国民一人あたりの借金額は~」が定番の国内メディアとは正反対ですね(ただしFT紙が日本の消費税とイギリスの消費税の違いを見落としている点、税収に占める消費税の割合は日本と欧米諸国でもそう極端な差がないことを見落としている点は指摘せねばなりませんが)。

 亀井氏は国民はアホ云々の後で「国債の格付けに対して、実態に合っていないと注意喚起することも大事かもしれない」とも語ったわけですが、「日本だけデフレ」「日本だけ不況から脱出できない」という状況を考えれば「弱含み」は致し方ないところでしょう。これだけ経済情勢が悪化しているのに格付けが現状維持だったら、今度は格付け会社の方が信用できないということになります。太平洋戦争中だったら「連戦連勝」と嘘でも景気の良いことを並べ立てられたかも知れませんが、そういう時代ではないということを亀井氏は自覚すべきです。

日本国債の格付け見通し引き下げ 米社、財政再建に懸念(朝日新聞)

 米格付け会社のスタンダード&プアーズは26日、日本の長期国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」(弱含み)に引き下げた。鳩山政権の政策では、財政再建が従来の予想より遅れると判断したという。発表直後の午後4時ごろには、東京外国為替市場の円相場が1ドル=89円60銭から90円30銭付近まで急落した。

 同社は「日本政府の債務負担は格付け先の中で最も重いグループに属している」と指摘。そのうえで、政権交代後の一連の政策について、「中期的な経済成長見通しの向上を見込みにくい」とした。格付け自体は「AA」に据え置いたものの、「中期的な成長戦略がとられなければ、格付けを1段階引き下げる可能性がある」としている。

 市場では、日本国債の9割超を国内投資家が保有することもあり、影響は限定的との見方が大勢だが、「中長期的には財政再建の道筋が必要だ」(民間エコノミスト)との懸念も出ている。

 そもそも格付け会社側は「中期的な経済成長見通しの向上を見込みにくい」「中期的な成長戦略がとられなければ」という観点から見通しを引き下げているわけです。それなのに日本国内のエコノミストは「中長期的には財政再建の道筋が必要だ」と語る――つまり海外からは経済成長の欠落が指摘されているにも関わらず、日本国内では財政再建の問題にすり替えられているのです。まず亀井氏が憂慮すべきはそうした動き、海外からの問題提起を財政再建論にすり替えようとする輩ではないでしょうか。格付け会社は財政再建しろと言っているのではなく、経済成長しろと言っているのですから。そして問題を財政再建論にすり替えようとする輩は政府周辺にこそ潜んでいるわけです。格付け会社を監督する前にやるべきことは他にあります。

 

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