福岡エムケイに値上げ指導 九州運輸局、500円認めず(朝日新聞)
福岡都市圏で初乗り運賃500円を認可申請していたタクシー会社、福岡エムケイ(福岡市)に対し、九州運輸局は570円に値上げするよう求めて通知した。タクシー業界の過当競争を防ぐため昨年10月に施行されたタクシー適正化・活性化特別措置法に基づく措置で、法人タクシーへの値上げ指導は全国初。期限の24日までに値上げに応じないと、営業が続けられなくなる。
同社は低運賃で全国展開しているエムケイ(京都市)のグループ会社として昨年1月から営業。初乗り運賃を福岡都市圏の他社より1割安い500円としてきた。昨年10月、九州運輸局に認可の継続を申請した。
九州運輸局は同社の経営状況を分析。「現行の運賃では運転手の人件費や安全を保つための収益を上げられない」との査定結果をまとめ、審査を受けずに料金が認められる自動認可運賃の下限に当たる570円が妥当とした。
近畿運輸局は10日、大阪府内で最も安い初乗り500円の運賃の継続を申請していた堺市と大阪市の法人タクシー2社に対し、継続を認めないと通知した。
「ワンコインタクシー」に対し、実質的な値上げを求めており、法人に対する値上げ指示は全国初。ワンコインタクシー側は「業界つぶし」と反発を強め、訴訟も検討するが、既存業者は「過当競争の是正につながる」と歓迎している。
規制を強化する「タクシー適正化・活性化法」の昨年10月の施行後、法人に対する初判断で、通知した同運輸局の長井総和・自動車交通部長は「安全にかかるコストが運賃に正しく反映されておらず、適正化が必要」と強調した。
通知を受けた2社は「ワンコインタクシー敷津」(大阪市浪速区、36台)と「新金岡交通」(堺市北区、41台)。同運輸局は敷津に対し、「適正な利潤が出ていない。初乗り590円が妥当」とし、新金岡には「売り上げを実際より多く記載している」と申請を却下した。
福岡と大阪で、同時期に似たような通知が下されたようです。一部事業者からは反発もあるそうですが、まぁ妥当なところではないでしょうか。これが工業製品であれば技術革新によってコスト削減が可能になる、その結果として従来品よりも安価な供給が可能になることもあるわけですが、タクシーのようにコストの大部分が人件費で占められるような業界であれば、値下げは必然的に賃下げと労働強化に直結しますから。
もちろん値下げによって獲得できるシェアもある、値引きで他所から客を奪える場合もある、単価が下がっても客を増やすことで会社の利益が増えることもあるわけです。だから特定の事業者だけを見れば採算が取れていることもあるでしょう。ただ、業界全体で見れば話は別です。低価格を武器にした事業者がシェアを獲得すれば、その分だけ他の事業者の顧客は減少します。利用者が減れば売り上げも落ちますから、既存の事業者は低価格攻勢に対して何らかの対策を取る必要に迫られるでしょう。対抗して運賃を値下げするとか――しかるに値下げでシェアを奪い返しても、値下げした分だけ売り上げは落ちますから、それを補う分だけ顧客を獲得しなければならなくなってしまいます。ただしタクシー利用者が急に増えるはずもありませんから、そこはもう他の事業者と生存を欠けた奪い合いを演じるしかない……
状況によって好ましいものと好ましくないものは入れ替わります。夏場なら冷房は欠かせませんが暖房など邪魔なだけ、逆に冬場なら暖房はありがたいですが冷房など悪い冗談ですよね。競争原理や談合、護送船団方式なんかも同様だと思います。閉鎖的にお互いの利益を守り合っているような業界なら談合が悪で競争原理の導入が求められますし、過当競争でお互いが骨身を削り合っているような業界なら、競争を抑えて業界全体の利益を確保することの方が大切です。そして日本だったら前者に該当するのはせいぜいプロ野球界ぐらいで、後は深刻な過当競争にあえいでいるのが実態、中でも最も過剰な競争によって追い詰められているのがタクシー業界ではないでしょうか。
こと値下げ/値引きともなると「利用者のため」が大義名分に掲げられることも多いですけれど、それは一面的に過ぎます。労働者の取り分を際限なく削ることで低価格が実現されている、それが利用者のためを考えてのことと正当化されるなら、貧困国の児童労働だって「利用者のため」です。そもそも値下げは利用者のサービス向上である以前に、自社だけは売り上げを伸ばそう、他社を出し抜こうという我欲の表れでもあるはずです。値下げすれば自分のところだけは売り上げを伸ばせるけれど、隣の同業者が売り上げを落とす――こういう状況で値下げに踏み切ることは一概に褒められたことではありません。値下げ/値引きの肯定的な面だけではなく、否定的な面にも目を向けるべきです。
とりわけ深刻なデフレ、他国では例を見ない異常な状態に陥っている日本においては、値下げは症状の悪化を意味します。景気の良い国、インフレ状態にある社会なら値下げは太り気味の人の体重が落ちたようなものかも知れませんが、デフレの日本において値下げとは栄養失調の患者がさらに体重を落としたようなものです。今、必要なのは値下げする努力ではなく価格=価値を保つ努力なのではないでしょうか。売れないから値引きする、そうした繰り返しが「民」の側からもデフレを加速させます。
昨年末、日本のピザの値段が高い云々という話が一部ネット上で盛り上がりました。日本だとピザは宅配ばかりなので配達コストが嵩むというのが有力な説でしたが、もう一つ挙げるとすれば「高くても売れるから」でもあるはずです。そこでネット世論に敏感で経済に少し詳しい池田信夫氏は「日本の宅配ピザって高いなぁ。どこの国でも10ドルしないのに。「ピザの王将」が出てきたら、当たると思う。」とつぶやいていました。http://twitter.com/ikedanob/status/7183964124
う~ん、もし「ピザの王将」が当たったら、ピザは現在のような価格では売れなくなってしまうでしょう。そうなると既存のピザ店は生き残りを賭けて値下げ競争に挑まなければならなくなります。何もしなければ低価格店に顧客を奪われる一方ですから。そうしてピザ業界の価格破壊が始まれば、どこかでコストを削減しなくてはならなくなる、ピザの原材料費なんて微々たるものでしょうから、どうしても人件費を圧縮対象にするしかなくなる――結果として、モノの値段も働く人の値段(給料)も下がるわけですね。「ピザの王将」だけは儲かっても、業界全体の利益は小さくなる、ひいては日本全体の経済規模も小さくなる、と。
牛丼もハンバーガーも弁当も、価格の下落が著しいわけです。そうしないと売れないのでしょう。一方でさっぱり値段の下がらないピザ業界は、ある意味デフレに負けない物価の優等生だと思います。このご時世、価格を維持できているというのは大したものですから。低価格攻勢で競争相手を出し抜いた企業ばっかりが注目されがちですが、もうちょっと広い視点で考えるなら、より参考になるのはピザ屋です。デフレに負けず、販売価格をキープし続けるピザ業界は実は模範です。
安物買いに銭と健康を損なう。
まともな食品を買えるだけの賃金と労働と余裕を
570円のタクシーを
緊急の時にまたわ利用出来る程の安定した世の中に
と、本来タクシー業界は叫べ‥
昭和40年代に悲惨な航空機事故が続いて世界でも最も安全な飛行を目指したお陰で事故はとても少なくなりました。安全に対して余計にコストを掛けて欲しいとの国民の声からです。それと、私は日常会話程度ですが英語を話します。しかし、日本人旅行者の大半は英語を話せません。スッチーには日本語を要求する人が殆どです。これも余計なコストですが、日本人の大半の要求です。
夕方のニュースではしきりにJALの経営責任を社員の怠慢と印象づけるレポートのオンパレードです。
いままで、国営企業だった印象が残っていた為に”公務員”に対するみたいな日本独自の要求をして来たあげくに、アメリカ発の危険な価格競争に放り込む訳です。たまったもんじゃありませんよ。
アメリカで作った飛行機は世界中でこき使われて、ボロボロになった所でまたアメリカに里帰りして航空運賃とは思えない価格の為に最後のご奉公します。
アメリカの国内便だけは乗りたくありません。
こんなのはゴメンだから、機材にしても整備のコストにしても他所より安全優先してきたんですから、赤字なんて当たり前です。
ちなみにコストとは関係ないですが、JALのスッチーは奇麗じゃなくてはならないって暗黙の了解だった様な気がします。91年にアエロフロートに乗った時感じたんですが、あそこのスッチーに腕相撲を挑んでも、腕を折られたと思います、、、。日本の場合、スッチーに対しても、独自の要求があった様な気がしてます。
世の中の無駄に人件費が入ってしまてる事に気がついてないおバカさんが多過ぎますね。
デフレが如何に危険な状態かは小中学生の社会の時間で習ったはずですが。
物が売れなくなりました→値段下げました→人件費下がりました→物が買えなくなりました→さらに物が売れなくなりました→削るものがないので人間削りました→削られた人間は死ぬか奴隷になるか選んでください(←今ココ)
あ、経済界の狙いが見えた気が・・・
にもかかわらず、やはり安い方にいってしまうのもまた多くの人で、これがこの問題の恐ろしさでもあります・・・
とのかく、まず第一に購買力を上げるのが必要かと思いますね。
もう、欺瞞が明らかになった「トリクルダウン」や「企業の海外移転」などにまどわされず、経済界のしがらみのない政治に変えないといつまでも変らないでしょう!
>最下層公務員さん
確かにJALのスッチーは奇麗な「美人タイプ」が多かった(多い)気がします(笑)
逆に昔のTDAは「可愛い子ちゃん」タイプが多かったと個人的に思いました!
管理人様 関連なきスレ、お許し下さいませ。
MKは、タクシー事業に関しては上手くやれていない感があります。使用車両が他社と同じようなタイプなら「値上げをしなさい」と行政指導が入ることは仕方がないかと思います。障碍を抱えている方に対する割引をしたいとかなら、何とかしたい気持ちはありますが。
MKのハイヤーは、車両がリクエストできるので利用したいのですが高嶺の花に思えることと、と家族が猛反対するので結婚をして独立してからになるかもしれません。
宅配ピザの話に触れて、ラーメンに千円以上かけることがあるのに、昼食の選択肢にピザが全く入らない自分に愕然としています。
本当はモノの価格も給料も上がっていくのが「普通」なんですけれど、今の日本では両方とも下がっていくのが当たり前になっていますから。この辺は特定事業者だけではどうにもできないので行政の出番なのですが、やる気があるかどうかは?
>最下層公務員さん
アメリカン航空のコミューター機の機長の年俸は1万6800ドルしかないとマイケル・ムーアが紹介してしました。日本でも運転手の給料は低いですがアメリカは飛行機の運転手も同様なのでしょう。そうでなくとも日航の場合は公共交通手段として不採算路線も維持するためにこそコストがかかっているはず、その辺は毅然と無視されるばかりですが……
>紅葉修さん
雇用者と被雇用者の関係で言えば、雇用者側にとっては最高に居心地の良い状況になっていますからね。被雇用者は奴隷になるしかない――雇用者は元より、とかく経営者目線で考えがちな国民にとってはデフレこそ好ましいものなのかも知れません。
>えちごっぺさん
購買力を上げるためには、人件費を圧縮して値下げに踏み切るような事業者を制限することも必要になってくるわけで、そうした観点から今回の運輸局の判断を支持したいと思うのですが、世間一般の目はどうなんでしょうね。利用者/消費者目線しかないと値下げ歓迎で、値下げを制限した運輸局の方が悪者にされそうですが……
>GXさん
もちろんデフレにはモノの値段だけではなく労働力の値段すなわち人件費も含まれますから、このままですと労働環境は悪化する一方ですね。早急な対策が必要なはずですが、どうも現状は正反対の方向に向かっているようでもありますし。
>ヒイロさん
MKと同様に劣悪な労働環境では名高いワタミの介護部門も利用者からの評価は悪くないようですね。ただそれが、労働者の犠牲の下に成り立っているという辺りは、やはり是正されなければならないでしょう。高齢者や障害者など日常生活にタクシーが必要な人には、自治体が補助を出すことで対応できますから。
オレは、独占企業にいたから、独占のいい加減さを知ってる。官とか公とか、無駄の塊みたいなもんだ。
それは現状分析を欠いた観念的な発想です。状況に関わらず自由競争、市場原理主義を良しとするのは、要するにデフレだろうがインフレだろうがインフレだけを恐れ続けるようなもの、現状に対応できない原理主義的な考え方です。