低レベルな争い

公明「ばい菌みたいなもの」＝民主・石井氏(時事通信)

　民主党の石井一副代表は５日午後、テレビ朝日の番組に出演し、衆院選で政権を獲得した場合の公明党との連立について「一切ない。（同党は）ばい菌みたいなものだ」と明確に否定した。

　石井氏は「小沢（一郎代表）とわたしは強いそういう（思いだ）。選挙前だから（民主党の）中には（公明党が）票をやると言ってきたら、もらえるのかな、と思う人間もいるだろうが、そんな雑音は聞かない。公明党の票を４もらったら浮動票は６逃げていく」と語った。　

　これもなんですか、随分と品位を欠く発言です。公明党に関しては私も批判したい点はありますが、ならば具体的に根拠を挙げながら批判すべきなのであって、いきなり「黴菌みたいなもの」では単なる悪口です。床屋や居酒屋で口にするならいざ知らず、責任ある立場の人間が全国に向けて発信するような言葉ではありませんね。これでは中山元国交相の日教組を巡る発言と同レベルです。

　まぁ中山某は一部ネチョウヨの熱い支持を集めたものの、それだけで選挙に勝てる見込は薄いと党からも地元の講演会からも見限られ引退を余儀なくされたわけですが、この場合はどうなのでしょうか？　創価学会嫌いの有権者からの支持獲得と、暴言によって離れていく支持者の数、前者を多く見積もっての発言なのでしょうか、それとも何も考えていない、ただ嫌いな相手を罵りたいだけの発言なのでしょうか？　前者であれば卑劣、後者であれば愚劣と言えます。

　有権者が今のままである限り、特定の人々をバッシングすることは票を稼ぐ上で有効です（まぁ人ばかりではなくモノでも――輸入農産物などでも――同様ですが）。定番中の定番は公務員ですね、公務員さえ叩いておけば支持を集められるとあって、自民も民主もどちらがより悪し様に公務員を罵れるかを競うようなところもあります。そこにはほとんどリスクすらないと言えるでしょう。

　一方、メリットとデメリットのあるものもあります。評価の分かれるものをバッシングの対象に選ぶと、強まる支持もあれば失われる支持もあるわけです。例えば外国人を標的にした場合ですが、これでレイシストの支持は得られるものの、良識のある人は支持を取りやめるでしょう。有権者の歓心を買うために何が有効か、国民の中のどの部分に訴えていきたいかで、何を攻撃すれば有効なのかも変わってきます。そこで今回の石井副代表、公明党に矛先を向けたようですが……

　むしろ野党支持層より自民党支持層の方が、それも小泉以降の若い自民党支持層にこそ、公明党及びそうか学会への嫌悪感は強いのではないでしょうか。政策上の対立から公明党を批判する野党支持者もいますが、「黴菌」と同レベルの単なる悪口を並べるのは自民党支持層の方が多いような気がします。事実よりも信念に基づいて行動するカルト的な性質の強い自民党支持層だからこそ「異教徒」に不寛容なのかもしれません。

　何はともあれ、公明党を悪罵することで、「公明党嫌い」「学会嫌い」の票は稼げたのでしょうか。ですが私としては、小泉や石原、橋下に麻生といった連中が使ってきた手法、国民が嫌っている相手を一緒にバッシングすることで、言わば不当なリンチの先頭に立つことで人気を得てきた連中と同様の手法をとることそのものに悪質さを感じるのです。

　ちなみに「公明党の票を４もらったら浮動票は６逃げていく」そうですが、この辺はどうでしょう？　数値の多寡には疑問がないでもありませんが、これは考慮する必要のある要素ですね。それは民主党と共産党の共闘論でも同じ、公明党と組むことで票が増えるよりも公明党嫌いの支持者が離反することで全体的にはマイナスになる可能性があるように、共産党と組むことで票が集まる可能性もあれば、反共産党主義者が自民党を選ぶ、結果的に民主党の票が減る可能性もあります。選挙戦略云々を語る人であれば、ここは無視しないでいただきたいものです。

　で、公明党と組んだ場合ですが……ふ～む、収支はどの程度でしょうか。民主党に票を入れそうな人々の中で、「公明党と組むような政党には投票しない」と考えている人はどれくらいでしょう。自民党支持層は色々なものに目をつぶるのが得意なようで、公明党は嫌いだが民主党も嫌い、政権交代を阻むためには我慢して（公明党と連立する）自民党に投票する、そういう人も多いようですが、民主党支持層の反応は果たして？

 

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